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【本紹介】52ヘルツのクジラたち

私がゲームが趣味であるという事は恐らく皆さん知っている事だと思います。実はそれと同じぐらい読書も好きでして。
今回は以前にもやったことがある本の紹介でもしようかなと思います。

しかしただ読書感想文のようなものを書くのではなく「この本を読んでみたい」と出来る限り思ってもらえるように記事を作ろうと思います。
そのため、内容に関するネタバレは極力行いません。

ぜひ記事をきっかけに自分で読んで頂ければ幸いです。

52ヘルツのクジラ

「わたしは、あんたの誰にも届かない52ヘルツの声を聴くよ」
自分の人生を家族に搾取されてきた女性・貴瑚と、母に虐待され「ムシ」と呼ばれた少年。
孤独ゆえ愛を欲し、裏切られてきた彼らが出会う時、新たな魂の物語が生まれる。
著者:町田そのこ
引用:amazon

本作の主人公はふたり。
ひとりは家族からはみ出しもの扱いをされ、長年その人生を搾取され続けてきた女性「貴瑚」。
もうひとりは母親から虐待を受け、声を失った名を名乗らない少年。

全てを捨て、大分県のとある小さな田舎に貴瑚がひとりで移り住んできた所から物語が始まります。
人生に疲れ死んだような気持ちで過ごしていたある日、言葉を発しない一人の子供と出会います。

「このクジラの声はね、誰にも届かないんだよ。」
「普通のクジラと高さがーーー周波数って言うんだけどね、その周波数が全く違うんだって。」
「あまりに高音だから、他のクジラたちには、この声は聞こえないんだ」
”本文引用”

本書で重要になってくるのがこの「52ヘルツのクジラ」というもの。
クジラは会話をすると言われていますが、稀に周波数が他のクジラと違い声が届かないクジラがいる。そのクジラこそ52ヘルツのクジラ。

長年家族から虐待に近い扱いを受けて育ってきた貴瑚や母親から虐待を受けているこの少年はまさに52ヘルツのクジラ。

たくさんの仲間がいるはずなのに何も届かない、何も届けられない。
そのため、世界で一番孤独だと言われている。
”本書帯引用”

虐待まではいかずとも、誰しもが孤独を感じた経験はあるのではないでしょうか。
学校や家族や社会から孤立したような気持になる。
周りにたくさん同じ「人」はいるのに誰も自分の声なんか聞いていくれない。
自分はいてもいなくても変わらない。いや、寧ろいない方が良いんじゃないだろうか。

鬱屈した日々を過ごし、いつ終わるかわからない苦しみに今も耐え続けている52ヘルツのクジラたちが世の中にたくさんいる事と思います。

でも私たち人間は本当の意味で52ヘルツのクジラとは違います。
例え52ヘルツの声しか自分が出せなかったとしても、同じ周波数で声を出している人がこの世界には必ずいます。
傷つけられ、裏切られ、人の悪意を一身に浴びようとも、生きていればいつかきっと自分の事をわかってくれる人と出会うことが出来ます。
まさに本書で彼らふたりが出会ったように。

この本は今を生きる52ヘルツのクジラたちに捧げる、希望の本だと読み終わった後に感じました。

日々に疲れ、孤独を感じている方にぜひ読んでいただきたい本です。

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