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山繭(詩)

孔の奥深く 蠢いている
蠢き 這い上る
一手 一手 一足 一足
一手 一手 一足 一足

ぎりぎりと
爪の間に 土岩を食い込ませ 痛ませながら
ぎりぎりと
食いしばった 歯の間に 泥の臭いを漂わせながら
這い上っては 堕ちていく 
這い登っては 下がりゆく

向こう側の光 束になった光 渦になった光
そのすべてが 染み入る こころ
隙だらけの こころ
ヒビだらけの こころ

光を浴びれば 死んでしまうと わかっているのに
光を求めて 飛翔する 毛塗れの蹄ある獣脚
焼け爛れた香り 霧散して輝く鱗粉の霧
青々と発光する 鱗粉でいっぱいになった硝子瓶

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