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【長崎市】自閉症を抱える方々の避難体制について聞いてみた【一般質問】

あるお母さんからの言葉

私が選挙に出る前のことです。
「もし災害が起きても、私たちは避難を諦めています」。
自閉症のお子様をお持ちのお母さんからこのような言葉を聞きました。
諦めていたら、私にこんなことは言わないはずなのです。
避難ができるようにしてほしい。
今のままでは諦めざるを得ない。
助けてほしいという思いを受け取りました。

長崎県自閉症協会さんへヒアリング

今回の質問は、あの時のお母さんの一言がきっかけとなり、質問前には以前からお伺いをさせていただいている「長崎県自閉症協会」さんへ伺いましてお話を聞きました。

ここでも、皆様が口を揃えておっしゃることは「一般の避難所に避難することはできません」とのことでした。
なぜそうなるのか考えてみます。

自閉症の特性とは

自閉症の方にとって、突発的な事態に対応することはとても難しいことです。
特性として、行動、日常生活において強いこだわりがあり、ルーティンがあることを得意としています。
そのため、変化に対して強い抵抗感を持ちます。
急な変化はパニックを引き起こすものでもあります。
そのような特性を持つ方々にとって、災害という急にやってくる事態とそれに伴って日常がガラリと変えられてしまうことは極度のストレスとなり、パニック状態になってしまうことが考えられます。
一緒に暮らしているご家族ですら、そうした場合にどのような事態が起きるのか予測ができないほどです。

そもそも行き慣れていない一般の避難所に行くことが難しい。
例え行けたとしてもその場でパニックになってしまうのではないか。
周りの皆様にご迷惑をかけてしまうのではないか。
こうしたことから、避難所に行くことは難しいと、行く前から諦めざるを得ない想定となっているのです。

熊本地震を経験した方の講演

長崎県自閉症協会広報誌「ふれあい」

こちらは長崎県自閉症協会さんの広報誌「ふれあい」です。
令和6年度の総会の際に、熊本地震を経験した熊本自閉スペクトラム症協会の松村和彦様を講師にお迎えし、災害時の対応について学ばれたことが書かれています。
日頃からの備えが重要であること。
車中泊に対応できるようにしておくこと。
そして、熊本地震当時の回想として「一時避難所へ行かなかったことで、結果的に落ち着いた行動を取れたのではないか」とのコメントが記載されていました。

能登半島地震の際のあるご家族の記事があります。
タイトルからも自閉症の息子さんを避難所に連れて行くことができなかったことがわかります。
それによってご家族は全員避難を諦めなければなりません。

▼毎日新聞
自閉症の息子、避難所連れて行けず「限界」 追い詰められた家族

皆さんからのアンケート

会員様を対象に「災害が起きた場合どのような避難行動を取るか」についてのアンケートを取っていただきました。

自宅・車中泊とした方は24人中24人
知人・親戚の家とした方も重複回答で3人おられました。
一次避難所とした方は24人中0人でした。
今のままでは24世帯の方が避難ができないという事実が明らかになりました。

また、個別避難計画については、
計画を立てた方 1人
計画を立てていない方 19人
計画自体を知らない方 4人
となり、こちらも災害時の備えがまだできていない状況がわかりました。

茂里町ハートセンターという安心の場所

一方で、お話の中から、「茂里町ハートセンターなら避難ができる」ことがわかってきました。
ここは小さい頃からご家族で通ってこられている場所です。
慣れ親しまれている場所です。
「昼間に災害が起きた場合には、家族みんなでここに集まろうと約束しています」というお話を聞かせていただきました。
慣れ親しんだ場所であれば、急激な変化に対しても極力不安感を抑えることができ、家族での避難も可能であるということです。
皆様から「ハートセンターなら大丈夫」というご意見をいただきました。
そこで、今後、台風などの避難の際にも茂里町ハートセンターを避難所として開設していただけないか要望しました。

福祉避難所との違い

福祉避難所というものがあります。
これは大規模災害時に民間の福祉施設を避難所として開設していただくものです。
大規模災害時であれば、こうした慣れた場所に避難することも可能になりますが、私たちが普段の生活の中で避難を求められる台風の接近時などには福祉避難所は開きません。

自閉スペクトラムには「慣れ」が非常に大切になります。
普段の警報レベルの時から避難に慣れておく必要があります。
避難しなければならない時には、ハートセンターに行くということに慣れておくことができれば、大きな災害時にも避難を諦めるようなことは起きないのではないかと思います。

個別避難計画を早めに準備するための提案

また、先ほど少し触れた「個別避難計画」についても、まだまだ作成が進んでいない状況です。

高齢者や重度の障害を抱えた方など、優先的に作成すべき1350名の方々がおられ、昨年作成できた方は30〜40名ほどだったとのことでした。
福祉保健部長の答弁で分かったように、今は相談員さんが個別に訪問をして作成しているとのことで、非常に丁寧なやり方で行われています。

しかし、災害リスクが高まっている中では、ゆとりのある進捗を待っているわけにはいきません。

そこで今回、長崎県自閉症協会の皆様に集まっていただき、相談員さんからのレクチャーを受けながらお集まりの皆さんで計画を立てるということを提案しました。

これについては、こちらの協会に限らず、様々な協会・団体の方々とそうしたやり方で効率的に進めていきたいとのご答弁をいただきました。

各ご家庭でも、避難の際のシミュレーションをご家族で共有するなどして、急にやってくる災害時にも慌てずに対応できるように準備をしていただきたいと思います。

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