日記:映画『ケイコ 目を澄ませて』を観た!


先週映画館で映画を観た日記です。
タイトルは「ケイコ 目を澄ませて」、監督は三宅唱さん。
2022年製作の映画です。

<ざっくりとしたあらすじ>
生まれつき耳が聞こえないケイコはボクシングの試合に出るために日々鍛錬を積みながらも、周りからは心配され認められず、言いたいことが言えなくてモヤモヤや悩みを溜め込んでいく。そんな中ジムの会長が病気になりジムは閉鎖することに…

印象に残ったシーンなどについてもぼんやり書いているので、まだ観てない方はお気をつけください〜




とても好きな映画でした!
自分でもびっくりしたけど、次の日目が腫れるほど泣いてしまいました。笑

ストーリーは振り返るとシンプルなのですが、感情の揺れ動きや美しい映像の密度が高くて、あっという間の鑑賞時間でした。

音・映像・字幕

UD上映で日本語字幕のあるスクリーンで観ました。
「周りの人たちの会話」「電車が走る音」「コンビニ店員の声かけ」「電話の向こうの声」、字幕に表示される日常に溢れる音が、全てケイコには聞こえていない。
周りの世界との断絶、目には見えない疎外が、字幕の音によって可視化されているような感じでした。

映画はほとんど主人公であるケイコの台詞がありません。
手話のシーンもちょっとあるけど、ケイコが何を感じて何を考えたのかはほぼ語られません。
台詞の代わりに膨大な量のカットがあって、物語が進行していく、無声映画みたいな感じです(感じというか多分そうなのです)。
東京の街並みや河川敷などといった、ありふれた光景がとても美しく映されていて、いつまでも観ていたいくらいでした。
音楽はほぼありませんが(ある)、音もとても良かったです。
特にジムが味わい深い雰囲気で、築年数が古そうな見た目も、ミットを打つ音、縄跳びを飛ぶ音、サンドバッグを叩く音もリズミカルでとても心地よかったです。
音と映像に浸れる映画館ってやっぱりいいな〜。


ケイコの周りの声

ケイコは試合を2回も勝っている優秀なボクシング選手ですが、周りは心配する声が多く「耳が聞こえないのに危なくないのか」「殴ったり殴られたりするのは頭がおかしい」、微妙な関係の母親にも「プロになったしもう十分でしょう」などと言われてしまいます。
バイト仲間からは「バイトとボクシングを両立できるなんてすごいね」と賞賛され、「ボクシングでバイトのストレスを発散させてるんですよ」なんて言ってケイコは茶化します。
朝から河川敷を走り、とても練習熱心なケイコがボクシングが好きなのは間違いないのですが、誰もケイコを一人前のボクサーとして認めている人がいないのです。(ボクシングジムの人たちと会長を除いて)
耳が聞こえないのに、ボクシングは危ないのに、女なのに、本当に大丈夫なのかと、心配の気持ちや疑う気持ちを持たれている。
そしてケイコ自身も、そんな周りの意見に寂しさや苛立ちを覚え、賞賛も素直に受け取れず、自分自身に対する不安を抱いていたと思います。


会長とジム

唯一ケイコが心許せるのがジムとジムの会長です。
インタビューでケイコには才能があるのかという質問をされた会長は、「才能はないけど、素直で人間としての器量のある良い子だよ」と答えます。
ケイコと会長はどちらもとても不器用な人物で、お互い言葉を交わさなくても自然と心が通じ合っているような河川敷やジムでの二人のシーンはとても穏やかで微笑ましいです。
ジムの指導員二人もケイコに熱心に付き添い、練習をサポートし見守ります。

そんなこれまで安心の拠り所であるジムが突然たたまれることになります。
病院で過去の脳梗塞の再発や視力の悪化について指摘された会長は、後継のいないジムの閉鎖を決め、それをどのように練習員たちに伝えるか、苦心します。
そしてこれまでジムに通うことを欠かさなかったケイコも、試合勝利後、次第に練習から足が遠のいていきます。
ケイコはジムを休みたいことを手紙に書きますが、結局渡せずに心に閉じ込めてしまいます。
会長とケイコはお互いを信頼し合っているすごくいい関係なのですが、言いたいことがなかなか言い出せないところまでシンクロしていて、とてももどかしい気持ちになりました。

言いたいことが言えない

ケイコは本当はもっと正しく伝えることもできるのに、うまく伝えきれない。
ニコニコ愛想よく笑うこともできず、逆に正直に伝えたことで相手の反感を買ってしまうことも。
弟に「話せばスッキリすることもあるかも」と悩みを明かすことを促されますが、「話して解決するわけじゃないし」と一蹴してしまいます。
ケイコの話を聞いてあげたいなあとも思うし、不安を口に出したくないケイコの気持ちにも共感しました。
手紙は、結局会長の手に渡ることはありませんでしたが、チラリと映った文面に初めて語られるケイコの心情は、痛々しく心揺さぶられるものがありました。

ケイコは不安定なまま、次の試合を迎えます。

底に落ちることがあっても、そこでまた受け止められて、前を向くのだ。
 

練習ノート📓✨


映画の冒頭にも登場した、ケイコが書いていたノートが印象に残っています。
手紙には不安の気持ちがあったけど、毎日練習メニューを記録したノートが、ケイコの気持ちの全てで結晶でした。
積み重ねた日々は本物だったのだなあ。
そのノートが読み上げられるシーンもすごく良かったです。

ジムは終わるけど、ケイコの日々はこれからも続く。


誰からも認められない。
言いたいことが言えない。
不安定で孤独な状況、悔しい気持ちは、自分の道を進むときに誰しもが経験し持つ感情ではないかなと思います。
とても苦しいのに、ずっと目が話せなかったです。

最後の長めのカットも、とても好きです。
顔の腫れたケイコが、とてもキラキラしていました。
どんな気持ちでも、応援するよ!!と言いたかったです。

ケイコの青いネイルと、いたずらっ子な感じの笑顔にもグッときました。
本当に素敵な映画でした。


もう少し余韻に浸ったら、他に観た方の感想も読みたいです。

読んでいただきありがとうございました🌷


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