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靴底をしっかり貼る事は難しい。

お店の場所柄、出先で突然の靴のトラブルで困ったサラリーマンが検索して、ご来店頂く事が度々あります。

その日、帰社できる程度の応急処置は可能であっても、しっかりとした修理を直ぐに仕上げる事はできません。

しかし、10分程で簡単に修理できると思われている事もある様で、「その辺でコーヒーでも呑んでくるから、ペぺっとノリ塗って、パッと貼ってもらえる?」と言われる事もあります。

そして、時間も費用もそれなりにかかる旨を伝えると、結構困惑されます。

では、実際に剥がれた靴底を貼り戻すのにどの様な手間暇がかかっているのかご紹介します。

こちらは、パラブーツの靴です。ミッドソールに出し縫いがかかっており、アウトソールは圧着で、よく剥がれる事で有名ですね。

先ず最初に、必ずやらないといけないのが、古いノリを完璧に落とす事。

アウトソールのノリはグラインダーで削り落として、その後僅かな残りもシンナーで拭き取ります。

ミッドソール側は出し縫いを切ってしまうので、グラインダーで勢いよく削り落とす事ができません。

ですので、シンナーでノリを柔らかくした所をガラス片をカンナの様に使って削り落とします。コレで糸の際々までしっかりとノリを取る事ができます。

綺麗にノリを落とす事ができたら、ノリを塗る前に、素材に適したプライマー(下地剤)を塗り乾かします。

プライマーを用いる事で、密着性が高まり、接着強度が増します。

ここで初めてノリを塗ります。

そして、ノリが乾いたら温めて熱活性させます。

一度乾いたノリを温める事によりタック(ネバネバ)がでてきます。

そしてやっと圧着する事ができます。

コレで完済!ではありません。
最初、ずれもなく、綺麗に貼り合わさっていたソールでも、貼り戻す時にどれだけ慎重に貼り合わせてもずれが生じるので、コレを綺麗に整える必要があります。

削り整えました。はみ出てしゃくれていたつま先も面が揃って綺麗になりました。

最後は、色を入れて磨けば元通りです。

と、いう事でそれなりに時間は必要で、費用も¥3000となります。

ペペッとノリ塗って、パッと貼って終わる修理ではない事ご理解いただけましたでしょうか?

ペペッと塗ってパッと仕上がるノリの開発を願ってます。

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