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幸せを手に入れる最後の方法 ~2年間のカウンセリング実録~ 12.踏み出せない一歩②

 約束の日、咲笑ちゃんは笑顔で僕の前に現れた。


「まーくん、久しぶり。いつもありがとう。
今日は疲れてるのに、私のために時間を取ってくれてありがとう。」


 この後、僕と話しながら咲笑ちゃんはたくさんの涙を流す。
でも普段の彼女は笑顔を絶やさないようにいつも頑張っている。
そうだ、こういう子だったと思い出しながら、僕は彼女の話を聴き始めた。



 僕は咲笑ちゃんが、彼との話を始めると思っていたが、予想に反して始まったのはお母さんの話、そして自分のルーツに関することだった。



「お母さんはね、おばあちゃんから、つまりお母さんのお母さんから、いつも厳しく躾けられてきたの。

そして女は結婚して子供を産むことが全ての様に言われ続けてたんだって。
だから結婚相手は、実はおばあちゃんが気に入らない人だったんだけど、それも関係なかったみたい。

むしろ当てつけのように結婚して、それ以上何も言われたくなくて子供を作ったの。

だから私は、別に生まれるのを望まれてたわけじゃないの。」



「その話、お母さんから聴いたの?つらかったね。

でも、人間の赤ちゃんは世界でいちばん弱い状態で生まれてくるから、愛情なしには大きくなれないって講座で聴いたよね。

お母さんは確かに愛情は注いだけど、過去の傷ついた思いを咲笑ちゃんに聴いて貰いたかっただけなんじゃないのかな?

自分がお母さんから優しくされなかったと思う分、また咲笑ちゃんに優しいお母さんの役割をして貰いたかっただけかもしれないね。」


「うん。そうかもしれない。
でも私は確かに育ててもらったけど、望まれて生まれた子じゃないのは事実なの。

本当のお父さんのこと、家族のみんなが嫌ってて、私はお父さんに似てるんだと思うの。

子供の頃から容姿や性格を悪く言われることが多かったんだけど、どうやらお父さんに似てるところが気に入らなかったみたいなの。

自分では普通にフレンドリーだと思うような話し方も、『やかましい』とか『おしゃべり』だとか、そんな風に言われる。

今でも一緒。
嫌いな人に似てる私は、どうしたって嫌われるの。」


「実のお父さんの話が子供の頃からの出来事と結びついて、家族からずっと嫌われてきたと思っちゃうんだね。
お母さんの話もそれに輪をかける様で苦しいんだ…。」



「うん。お母さん、メンタル行ったのにちっとも変わらない。」



「え?お母さん、メンタル通ってたの?咲笑ちゃんの紹介で?もう12講座終わったの?」



「ううん。まだ途中。っていうか、途中でやめちゃったの。
最初は『先生かっこいい。』とか言って通いだしたから大丈夫かと思ってたんだけど、駄目だった。

あの人は知識じゃなくて信仰できる人を求めてるから。
話の聴き方とか伝え方とか覚えてくれるかと思ってたのに、全然だった。」



「メンタルの講座は1回だけだと面白かったことしか覚えてない場合もあるからね。
リピートどころか、最後まで受講してないと、難しいだろうね…。」


「うん。それにね、私がいま住んでる家は元々おばあちゃんが住んでたんだけど、おばあちゃんの介護とかを私がしてたから、その家は私にくれるって言われてたの。

でも急にそれは出来ないってお母さんが言い出したの。私に何かを渡すのが嫌みたい。

メンタルのことも、私が紹介したのが良くなかったのかもしれないって思う。」



「そうか。ただでさえ嫌われてる様に思ってしまうのに、くれるって言われてたものを急に駄目だって言われて、余計に傷ついちゃったんだね。

くれる、くれない、じゃなくて、貰えるものが愛情と同じように思うことってあるもんね。」


 僕は、咲笑ちゃんの話は自分のルーツに関わることがメインなのかと思って話を聴いていた。
ところが、ここで話は大きく方向転換する。





幸せを手に入れる最後の方法
~2年間のカウンセリング実録~




最後までお読みくださり、ありがとうございました。



自分の親との関係を振り返るとき、親にとっての親(つまり祖父母)との関係を見ることで分かることがあります。


親も人の子。

そして親子関係の基本は主に自分の親から学んでいるんです。


でも、そこで止まってしまうと進歩も改善もできません。

学んだこと、知ったことは自分で活かすことができます。


他人と過去は変えられない。

変えられるのは自分と未来だけ。


自分と未来はいかようにも変えられるんです。




続きは明日更新します。

ぜひおつきあいください。

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