#07 耕作放棄地で農業。あり?なし?
以前、大阪府の耕地面積について記事を書きました。
その際、「使われなくなった農地が増えていると聞くけれど、一方で新たに農業を始める時に農地が見つからないことがハードルとも聞くな」と思いました。
矛盾しているように見えるこの現象はなぜ生じるのでしょうか??
そして耕作放棄地をどんどん新規就農希望者に当てることで、農業の未来は明るくなるのでしょうか??
荒廃農地?耕作放棄地??遊休農地???その広さは?
そもそも、「荒廃農地」「遊休農地」「耕作放棄地」など様々な言葉があります。それぞれどのような定義なのでしょうか?
荒廃農地:現に耕作されておらず、耕作の放棄により荒廃し、通常の農作業では作物の栽培が客観的に不可能となっている農地。
(荒廃農地調査における調査上の用語)
荒廃農地はさらに、「再生利用が可能な荒廃農地」と「再生利用が困難な荒廃農地」に別れる。
2019年で28万ha(=2,800km2):これは大阪府の1.5倍くらいの広さになります。
耕作放棄地:以前耕作していた土地で、過去1年以上作物を作付け(栽培)せず、この数年の間に再び作付け(栽培)する意思のない土地。
(農林業センサスの統計上の用語)
2015年で42万ha(=4,200km2):これは富山県くらいの広さになります。
遊休農地:現に耕作されておらず、今後も耕作される見込みがない農地(1号遊休農地)、周辺地域の農地に比べて利用の程度が著しく劣っている農地(2号遊休農地)。
(農地法の法律上の用語)
2019年で合計9.7万ha(=970km2):これは大阪府の半分くらいの広さ
よくわからないので、図示してみました!※私のイメージです。
農林水産省の資料やマイナビ農業の記事にわかりやすく記載されています。
写真つきのページはこちら
日本の耕地面積に対して、10%弱が耕作放棄地となっています。
耕作放棄地面積の推移
では、耕作放棄地の面積はここ数年間で本当に増えているのでしょうか?
(農林水産省の資料より)
ここ15年間でほぼ倍に増えており、特に土地持ち非農家の所有する農地で耕作放棄地が増えてきています。
土地持ち非農家とは、農地を所有しているが農家ではない人のことです。
昔は農家であったが、農業ではなく別の仕事に変わられた方が多く、耕作放棄地が増えていると思われます。
大阪府の耕作放棄地
大阪府の耕地面積は約125km2です。
そして大阪府の耕作放棄地は17km2です。(2015年農林業センサスより)
実に耕地面積の10%強の面積にあたります。
その内、土地持ち非農家の所有する耕作放棄地面積が9km2と半分以上を占めます。
市町村では和泉市、岸和田市など農業が比較的盛んな南のエリアで多くなります。
耕作放棄地で農業をするハードル
では、これら耕作放棄地で農業はできないのでしょうか??
ハードル1 土地の条件
当たり前ですが、耕作を放棄された土地です。中には高齢化で手が回らなくなっただけかもしれませんが、基本的には耕作をしにくい土地ということになります。
具体的には
◯水、電気が来ていない
◯道路に面していない(軽トラを横付けできない)
◯土の性質が悪い(石ばっかor水捌けが悪すぎる)
◯日当たりが悪い
◯病害がひどい(害虫、土壌細菌など)
◯獣害のひどい
◯土地が傾いていて水が溜まりやすい
◯不法投棄されているなど荒れている
、、、、などなど、キリがありません。
こういった「条件の悪い」土地の場合、農業を始める前に整備に多額の投資が必要になってきます。
ハードル2 地権者の考え方
そもそも土地の地権者が、土地を貸したくないと思っていれば進みません。背景の全くわからない人に自分の土地を貸すことを躊躇うことも一理あると思います。
ハードル3 そもそも農地を借りるためのハードルが高い
元も子もないですが、そもそも農業をやりたいと思ってから農地を借りるまでのハードルが高いです💦これについては今後まとめようと思います!
対策
これら耕作放棄地を減らすための取り組みとして、農林水産省は基盤整備などに補助金を付与しています。
が、補助金を使って整備するには、自治体、地域が問題意識を持って取り組まないといけないのと、税金なので用途に色々と制約がつきます。
耕作放棄地を元に始めたビジネスも先例がネットで多数ありますね。SDGsにも繋がります。(個人的にはこの取り組みが面白いと思います。)
感想
耕作放棄地が増えている!と言葉だけを捉えると、土地が余ってるので、そこをスタートに農業しよう!と思ってしまいますが、耕作放棄地には放棄地になるそれなりの理由がやはりあります。
ではどうするか、、、
個人的には、耕作放棄地を農業用に整備するのもありですが、そもそも耕作に向かないとなった土地なのであれば、むしろ農業以外の用途で、特にその地域の困りごとを解決する用途で使えないものなのかなと思います。
(それはそれで農地転用に向けてのハードルあると思いますが。)