Kindle unlimtedのおすすめ:『イギリスのタブロイド新聞: イギリスは面白い何でもアリの面白記事が満載』

 先に断っておきたいのだが、読む環境によってはひどく読みにくいだろう。というのも、フォントが崩れていたり、英文の行間がつぶれていて、分かち書きになっていない、さらにアルファベットそれ自体が融合され、どうみても「φ」や「Ф」にしか見えない記号が現われたりと、もはやギリシャ語である場面に出くわす。私の環境では、PCで見る場合にこの傾向が強く、kindle端末ではあまり気にならない程度に留まっていた。少なくとも、分かち書きになっていない程度であれば解読する事それ自体は可能であるので、とりあえず一度は手に取ってみて欲しい。

 こうした問題があるとしても、内容は非常に面白い。『イギリスのタブロイド新聞: イギリスは面白い何でもアリの面白記事が満載』という名の通り、イギリスのタブロイド紙を紹介するものだ。
 本の内容とは全く関係ないが、こうして本のタイトルとURLのリンクを繋ぎ、本のタイトルと同じ事をつぶやくスタンスというのは(必要に迫られているため仕方がないのだが)、なんだが日ペンと小泉進次郎が混ざったような感じがして、自分が何者であるのかがよくわからなくなる。恐らく、これからもこのスタイルは続いていかざるを得ない。

 本題に戻ろう。タブロイド新聞というのは要するに、日付以外の内容が嘘である事が予想される新聞の事だ。

イギリスの新聞は一流紙と言われる Quality Paper と嘘八百も平気で載せる Tabloid Paper に分かれます。

イギリスのタブロイド新聞: イギリスは面白い何でもアリの面白記事が満載,日野克美,株式会社新翠舎,2016年 位置No.4

 日本国内に当てはめるならば、もちろん異論はあるだろうが大雑把に言えば、Quality Paperに分類されるのは朝日だとか読売とかそういった物、Tabloid Paperに分類されるのは東スポとか、そういった関係になるだろう。Tabloid Paper は事実を知る手段としては不適切であるかも知れないが、読み物として劣っている訳では決してない。

 また、イギリスの学識経験者たちが、興味深いことを述べています。「Tabloidの記事は一流の書き手が高給を支払ってもらって書いている。読者が一気に引き込まれるようにプロが苦心して言葉を練っているから決してバカには出来ない」

イギリスのタブロイド新聞: イギリスは面白い何でもアリの面白記事が満載,日野克美,株式会社新翠舎,2016年 位置No.4

 Tabloid Paperとは要するに、事実かどうかはあんまり気にするもんでもないけど、面白ければいいよね、というスタンスである訳だ。この辺りは日本でも英国でも対して違わないのだろう。
 そんなTabloid Paperの原文の比較的短い量を引用し、それの日本語訳がさらに載っている、というのが本書の基本的な構成だ。適切な例えであるかはさておき、高校の英語の授業で使うような感じであると言えば伝わりやすいだろうか。あまり一般的ではないだろうと推定される単語については解説がなされている。英語に親しむために読んでみても良いだろう。英語の部分を全てすっとばして、日本語訳の部分を読むだけであっても十分に楽しめるはずだ。

 この本は英語に親しむ以外の何に役に立つか。もちろん、単純に好奇心を満たすだろうが、出羽守を撃退するのにも役立つだろう。「海外では~」のに対して、「日本は~」という問題に反撃できる。
 あるいは、日本でよく目にする言説と同等の物が扱われているなどの共通点を発見できるだろう。「最近の若いやつらは~」という紋切型、「癌で死なない方法!」という電車の広告でよく見かけるアレ、医療にただ乗りする異邦人、こうした物は英国でもあるようだ。そして共通点があれば、共通しない点もある。そうした文化を垣間見る事もあるだろう。
 個人的にはもう少し量があっても良いかな、と思うが、逆に言えばサクッと読めるという事だ。内容については申し分なく、読むに値する物である事は間違いない。

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