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となりのへや


死はなんでもないものです

私はただ

となりの部屋にそっと移っただけ。

本を開いて直ぐ出会う言葉

私は動物の命を預かることがとても不安だった
自分が幸せにできる自信が経験上なかったから、迎える準備は何一つしてなかった

夫がハムスターなんてどうかな、と言い出した
そのくらいなら飼えるかもね。この一言でペットショップへ向かう

3段並ぶショーケースに子猫と子犬、値段の下がった少し大きくなったものもいた。
その通りを抜け、鳥の声が聞こえてくる。
うさぎとカメ、フェレットなんかもいる中で一際名前のカッコいい奴がいた

リチャードソンジリス


この子はえらいべっぴんさんや〜、、
私たちはしゃがみ込んで見つめた

夫「この子がいいな」
私「だと思った、一目惚れでしょ。わかりやす」
夫「ろこだって思ったでしょ?」
私「まぁね、でも一旦考えよ」

そうして帰宅後、緊急会議を取り行い
二回目の訪問にてお迎えする事になった

私はよく覚えている
もう1匹の子が他の客にひょいっと登っていくのを。この子は人に登ったり自分から愛嬌を振るなんてしないから、
店員「懐くのには…個人差ありますからね、特にこの子は…」(苦笑い)

人っぽ、、笑

今も変わらないけれどずっとあの子は人っぽいと思う

寿命は平均4年らしい
オスかメスかは幼少期はわからず成長するとアソコの位置でわかるとか、、

手から餌を渡すようにして、徐々に触れていく
最後まで抱っこさせてくれなかったけど
お部屋の中でさんぽさせたり、『ぽぽ』という自覚が芽生えてきたらしい

発情期の頃メスと判明した
この時期はどうしたって甘えてくる
私は嬉しい
溺愛バカ飼い主の声でたくさん愛でた

2年と7日生きて
約1、2ヶ月癌と戦った
私たち人と生き物の距離を感じる月だった

病気発見と同時に、成す術がないと宣告
待合室で声を堪えて泣いて、"ありがとうございました"と大きく振る舞い扉を閉めた。あれはきっと自分の為

大小関係なくいずれ死ぬと分かっているが
自分の無力さは言語化できないからひたすら泣くしかなかった。


早くて熱い鼓動
嫌ならすぐ噛みつく
ご飯の時だけ見せる顔
床でひんやりしたり
私のTシャツちぎって喧嘩
脱走して追いかけっこ
気分で手に乗ってきて
名前呼ぶと気まぐれに振り返る

愚痴聞いてくれて
私の悲しみに敏感で側に居てくれたり
もふもふを涙で濡らした日もあったね

毎日ぽぽへ挨拶は欠かさなかった
睡眠の邪魔をしてもちゃんとこっち見てくれた


1,284枚 iPhoneアルバムの合計枚数


続くと思ってた
そんな数字に見える

こんな事言いたくないけど、
生きてなきゃ写真があっても意味がないと実感した。会いたい、もう一度抱きしめたい。
あの鼓動は二度と肌では感じられない

私は自分たちと彼女が生きた証をただ残しただけ
たったそれだけ

それだけしか出来なかった


顔の腫瘍が日々大きくなり、膿となる
掻いて膿まみれになり
花が咲き始める

この頃から私は大きいカメラではなく、チェキで記録するようになった。

次第に固形のご飯が食べられなくなった
人参をすりつぶし注射器で与える生活
そして、それさえ口にできず水だけ飲ませる日々になっていった

弱肉強食の世界において自分が食われる側と察した怯えた表情と、、ごく稀に見せる可愛い顔
細い身体から一生懸命に警戒の声を出すぽぽを私は少し嫌っていた。

次第にぽぽに触れられなくなった。




人と生き物だから

生きていてほしいという呪いで殺さずよかったとは思う



7月7日 朝 7:30頃
返事が返ってこない



献花にふさわしい花を探しにきた
私の好きな霞草とたまたま売っていた空色の花

お礼とさよならを言葉にして花と包み込んだ


教えてくれたことはいずれ私になって一つになる
守るものの大切さと
守られる必要のない小さな強さ

おかえりってずっといってね
次は一緒の鼓動を奏でたいな

形を変えて私の前にたくさん現れてほしい


最後までお読みいただきありがとうございます。
どこかのタイミングで展示を考えましたが、もっと深く考えたいと思い、とりあえず今の思いをのせました…

冒頭の引用はヘンリー・スコット・ホランドさんの『さよならのあとで』です。
GW旅の際にベーグル屋さんで読みました。帰宅後探して購入し、ページをめくる度とても柔らかで鋭く欲しかった感覚をくれました。
お店の本は手に取るタイプなのですが、これは運命だなと気軽に思えるのが本の良さな気がします。店主の好みだとか知れたりね!

別の本の話になりますが、自分の身の回りで起こる出来事は私に見せるために起きていると感じる。という方がいて、私も同じように感じます。その時目に映るものは自分に見て貰いたいからあるものだと思い何かしらのメッセージを常に受け続けています。笑
時には拾いきれないことがあるけれど、人はそれを何度も拾おうとすれば良い方に行けるような気がします。
誰しも自ら背負った業のもとで、生きている事を今回はより実感致しました。
自分の想いで何かを生かす事は素敵です

声色を変えず
色褪せないその声で名前を呼んであげてください

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