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M-1グランプリ2020 レビュー(前編)

書こうと思うこともあったけど他のことを優先してしばらく触れていなかったnote。

久しぶりの記事はまさかの(?)M-1レビューです。

昨年は、プレビューはちゃんと書いたのに、レビューを上げたのがなぜか半年近く遅れました(というか、半年近く経っていたのにそれでもなぜか書いた)が、今回はその反省を活かして早々に上げてみます。

どちらかというと、ここのネタどうこうというよりも、ネタの中で起こっていることや大会そのものを俯瞰で見たらこんな見方ができるかも、という感じのレビューになりそう。

偉そうに書いていますが、お笑い好きのいち視点と思って温かく読んでいただけたら嬉しいです。

ということで、前編スタート。
まずは、決勝ラウンドから。

1.インディアンス

まさかまさかの敗者復活組スタート。

敗者復活組にトップバッターを任せることで、順の不公平感を軽減できるのでは? という思いはあったものの、いきなりというのもやはり寂しいものはある。

勢いと知名度で勝ちきったインディアンス。
本人たちもあれよあれよの間だったとは思うが、しっかり大会の空気をつくり上げた。

ガチガチ&ネタ飛ばしで悔しい思いをした昨年のうっぷんを晴らすかのように、すばらしいパフォーマンスだった。
同じく昨年、礼二さんに指摘されていた「素の部分」というのも出ていたように感じられて、(もともと、そこまで好きなスタイルのコンビではないにしろ)少し好きになれたし、応援したくもなった。

今大会、全体的に審査員の採点が抑えめだったのは、それだけ基準となるインディアンスのレベルが高かったという見方ができるだろう。

2.東京ホテイソン

最下位になってしまったものの、個人的にはとても良かったと思う。

変化球のスタイルでかつフリの長いタイプなので、2番というのはやはりちょっと難しかった印象。
カミナリの1年目(彼らも2番めだった)と同じところにつまづいたかな。

トップバッターはもちろんだけど、2番手は思いっきり1番手と比較されてしまうので、同じくらい難しい。
昨年のかまいたちみたいに明らかな爆発がないと、なかなか得点が伸びづらい。

ネタの話に移る。
審査員からも言われていた通り、彼らは長めのネタ時間のほうが輝くな、と感じさせられた。

東京ホテイソンが今回(というか1年くらい前から)やった「ツッコミの言葉自体で笑わせる」というスタイルは、元々やっていた「ツッコミでショーゴのボケを説明する」というスタイルそのものをフリにしている節がある。

つまり、昨年やっていた英語のネタなどは、「東京ホテイソンが新しいやり方を取り入れてきた」→「いつもの説明ツッコミじゃなくて、言葉単独でおかしなワードでツッコむんかい」という面白さが乗っかってウケていた。

ところが、この「ツッコミの言葉自体が面白い」をやり続けてきて、だんだんそれが基本になってきていた中で、お笑いを見続けてきた人からすると「以前の東京ホテイソン」をフリとして笑っていいのかがわからないし、かといって「以前の東京ホテイソン」を知らない、もしくは意識していない人からすると、たけるの備中神楽風ツッコミが活き切らない、という現象が起きていたように感じたのだ。

(↑のくだり、うまく説明するのが死ぬほど難しい。詳しく書くと長くなり過ぎそうなので、これでわかってくれる人がいたらいいな、くらいのつもりでいます)

ということで、一つひとつのボケのフリを短くして、最初にスタンダードな東京ホテイソンのツッコミを入れておく(スタンダードなツッコミ自体をフリにする)ことで、もうひと波あったのかな、というのが僕なりの東京ホテイソンの感想である。

何にしてもまだまだ若いし、次はどんな変化を加えて見せてくれるのか、とても楽しみなコンビ。

3.ニューヨーク

明らかに勢いに乗ってきていて、今回の優勝候補に推す声も多かったニューヨーク。
今回は、わかりやすく彼ららしさが出たいいネタだった。

おそらく多くの視聴者が気になったであろう、昨年指摘されて(結果会場を盛り上げた)屋敷さんのツッコミ。
「どんな表情でツッコむのかな?」という見方をした人はかなりいたのではないだろうか。

そこはネタ後も触れていたとおり修正してきていたし、十分自然だったと思う。さすがに上手い。

気になったのは、このこと自体をネタに入れなかったこと。

気になったというのは、「よくなかった」という意味ではなくて(ネタにはそういう話を入れない、というポリシーだった気もするし)、そこがマヂカルラブリーと好対照だったな、ということだ。
マヂラブの野田さん同様、この1年間バラエティなどでは笑いにしてきたネタだったので、もしかすると最初に触れておくと、ちょっとだけ会場の空気が変わったかもしれない。

会場にはそこまでハマらなかったが、屋敷さんの「このご時世ナメんなよ」というツッコミはけっこうヒットワードだった。

いずれにしても、しっかりと順位を上げてきたのはさすがだ。
来年はさらに露出が増えてキャラも浸透しそうだし、次回への期待は高まっていく。

4.見取り図

3度目の出場ということで、優勝候補の筆頭だった(と思う)。

今回は、しゃべくりだった過去2回とは異なる漫才コント。
二人のキャラクターを活かしつつ、伏線もしっかり張る巧妙な作りのネタで、今年もしっかり楽しませてもらった。

後半にかけて盛り上げていく展開も見事で、さすが3回目というところを見せつけるパフォーマンスだったんじゃないだろうか。

本当に安心してみていられるコンビ。(という部分については、「後編」の最終決戦のところでもう少し掘り下げてみる)
個人的にはとても好きなので、まだまだ出続けてほしいと思う。

5.おいでやすこが

M-1の決勝史上初のピン芸人同士のユニットコンビ。

決勝に来たことにまず驚いたし、まさか最終決戦に残ってしまうとは(しかも1位で)。
何よりも本人たちが驚いていたが、ネタとウケ具合を見れば異論はない。

本人たちが認めていた通り、「そもそも漫才師ではないので、上手さでは勝てない」。
そこで、お互いのピンでの活動に裏打ちされた強みをそのまま最大限に活かすというやり方をとり、見事に当てた。

毎度評価の難しそうな歌ネタだけれど、そんなバックグラウンドがあるからこそ、審査員も素直に評価できた側面があるのかもしれない、と感じた。
「歌ネタかぁ…でも確かにしゃべくりで勝てるわけないし、自分たちの強みを活かしているわけだからいいか」みたいなことだ。

個人的には、「笑わせたら勝ち」という原点に立ち返るという意味で、なんだか意義深い1位だったなと、勝手に感慨深い思いを抱いた。

6.マヂカルラブリー

M-1史上初「ネタが始まった時点で勝った」と言えるのではないだろうか。

上沼さんの件をクローズアップされ、すでに煽りVTRの時点で笑いが起きていた。
そこに、正座での登場。
続いて「笑わせたい人がいる」の自己紹介。

本来であれば最初のツカミの時点で、3回の笑いになっている。
これはとんでもないことだ。

ツカミでウケをとれるかどうかは、ネタのウケ具合を大きく左右する。
お客さんが「この人たちはおもしろそうだ」と笑う体勢ができあがり、一気に見方に引き入れることができるからだ。

そうすることで、2個めのボケ(もしくは、本題最初のボケ)から、探られることなくしっかり笑いを取りに行くことができる。

特に、今回のネタは最初のフリ(テーブルマナーの説明)が少し長いので、ツカミで会場が温まっていた効果は大きかっただろう。

そして、このツカミで叩き出した100点は、このネタとのさらなる相乗効果を生むことになる。

優勝後のインタビューで「尻すぼみなのはわかっていた」と本人たちも語っていた通り、このネタのピークは最初、野田さんがガラスをぶち破って店内に入ってくるところにあった。

M-1では珍しいスタイルではあるものの、ここで取った「うねり」で最後までしっかり逃げ切った。

「実力じゃなくて、上沼さんのおかげじゃん」という意見もあるかもしれないけれど、3年前のあの1件を徹底的にネタにし続け、世間に丁寧にタネを撒いてきた野田さんの作戦勝ちという見方をしてもいいと思う。

おいでやすこがに続き、M-1の新しい側面が表れたネタであった。


ということで、前編はここまで。(なっがくなっちまった)
明日(たぶん)、7〜10組目と最終決戦、総評を書いていきます。

では。



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