マガジンのカバー画像

創作箱

42
あくまでもフィクション。現代だったりファンタジーだったり。創作したものを詰めていく箱。
運営しているクリエイター

2020年4月の記事一覧

Travelers②

Travelers②

朝は7時に起きる。
夜遅くまで起きているあなたはまだしばらく起きてこない。あなたが目覚めるまでにリビングの掃除をする。音を立てて起こすことのないよう細心の注意を払いながら。
朝食はヨーグルトとトーストとコーヒー、それに時々フルーツを添えて。苺と柑橘とメロンは好き、でもそれ以外のフルーツをあなたは食べないので。夏になると出せるものがほとんどなくなってしまうのがこまりもの。コーヒーは基本少し薄めに入れ

もっとみる
Travelers③

Travelers③

あなたは必ず二週間に一度決まった曜日に外出をする。金曜日の午前中に出て、私が午睡から覚める頃に帰ってくる。手には必ず何かしらの甘いものを携えて帰ってくる。それは時にはバターの香りが溢れんばかりのマドレーヌだったり。ざらめがびっしりとついた噛みつくときに躊躇してしまうようなお煎餅だったり。クリームがいっぱいつまったシュークリームだったり。
あなたはいつも今回もちゃんと帰れるといいなとわらいながら出か

もっとみる
Travelers④

Travelers④

その日もあなたはいつものように外出をされたのです。いつもの時間に。いつもと同じ鞄を持って。
でも少しだけ顔色が青ざめているように見えて。でもあなたは最近夜更かしが過ぎたからとだけ言って。ちゃんと帰ってくるからと言って出かけられたのです。
私はいつものように掃除をして洗濯をして。あなたが帰ってきたときにコーヒーを入れられるようにお待ちしていたのです。なぜか胸騒ぎがして横になっても眠ることができずに、

もっとみる
Travelers⑤

Travelers⑤

テーブルの上にはしめじと玉子の入ったコンソメスープ、鯖の味噌煮の缶詰を開けたもの、副菜としていつもおいてあるきんぴらごぼう、そしてそれにあわせられるとは思ってなかった素振りの朝食に並べるいつものトーストが並べられていました。私ときたら夕飯のための買い出しもしてなかったし、お米を炊くことすら忘れてしまっていたのです。
彼は冷蔵庫とフードストッカーの中身を確認して、ありあわせのもので素早く夕飯の準備を

もっとみる