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無給医について簡単にまとめてみた

前にNHKにて、無給医というものが報道されましたね

医師の中では暗黙の了解になりかけている存在ですが、コメディカル含めほかの方にはあまり知られておりません

今回の記事では、無給医について噛み砕いてまとめ、個人的に意見を書いてみようかと思います

無給医とは何なの?どういうこと?

無給医は外来や当直など診療行為を行っていながら、所属先から給料が支払われていない医師のことをいいます

 要するに働いているけど金は全くもらってませんという医師です

 え、月収0なの?死ぬの?ボランティアじゃん!と思うかもしれませんが、ちょっと違います

 医師は週に一日くらい研究日という、研究するためのお休みがもらえます

 無給医はその研究日を潰して、バイトに行って稼いだお金で生活するのです

 結構やばい制度だと思いませんか?その通りです

 医者は高給取り!人生勝ち組!などよく言われますが、闇がいっぱいあります

 今から少しだけ触れてみようと思います

  

無給医は日本にどれくらいの数いるの?

無給医は大学病院などで、若手の研修の名のもとに長く続けられていました

しかし医師が過労死したことなどから見直され、国は平成24年の時点で無給医はすでに存在しないとしていました

そう、「存在しているのにしていない」ことにされているのです

 存在しないことには誰も対処しません

 しかしもちろん現実にはまだまだいますし、僕の友人や後輩にも数多く存在します 

医療情報サイトの運営会社「エムスリー」が431人の医師にネットでアンケートをした結果、198人が「無給医を経験したことがある」と回答しました。

 今も無給医であると答えたのが31人、この5年以内と答えた人が59人となっています

要するに半分近くの医者は無給医を経験したことがあるのです

これらの無給医が働いていた大学病院は、国立16、公立4、私立14の計34か所となってます

大学病院は全国で80ヵ所存在するため、大学病院のほぼ半数で無給医が働いているということになります

 

なぜ医師は無給医になってしまうのか?理由は4つ

誰だって無給医にはなりたくないですし、なるのにはもちろん理由があります

理由としては
勉強のため
大学院生になるため
医局のため
個人的な理由で立場が弱くなるため

が考えられます

勉強のため
この病院で働きつつ高度な医療やスキルを学ばせてもらうため、無給で働くというものです

国内留学などもここに含まれる場合があり、全体としてかなりの数いると思われます

院生になるため
医局に入局した後期研修医の一部は、大学院に入ります

そこで院生として講義に出たり、研究をしたりして生活します

その生活を卒業までの4年以上続けることとなります

その4年の間も大学病院で給与は出ないまま、外来など医師の仕事をするパターンがほとんどです

医師としての仕事が増えるあまり、研究が進まず論文が完成しないため、大学院には行ったものの卒業はできなかった、又は博士号がとれなかったということもあります

注意していただきたいのは、院生は学費を払っているということです

学費支払った上に労働させられ、目的である博士号が取れなかったら...

なんのために院に入ったかわからないですよね?

医局のため
医局で「大学病院に有給職として雇えるのは◯◯人」と決まっているところがあります

しかしそれでは人手が足りないため、はみ出た人数は無給医として大学病院に勤務させるというものです

この場合は医局は年功序列である場合が多いため、必然的に学年が低いものが無給医になることが多いでしょう

個人的な理由で途中で立場が弱くなるため
女性医師はもともと有給だったのに、妊娠・出産・子育てに関連して無給医となってしまうという事例があります

今の社会の流れからすると考えられないですよね


なぜ無給医が存在してしまうのか?

医者を無給で働かせて、大学病院が金を吸い上げている!大学病院は悪の権化!と思われがちですが、厳密にいうと違います

大学病院は規模は大きいものの、そこまで儲かっていない場合が多いのです

なぜなら大学病院で行う専門性の高い検査や研究のための検査は、高額であるくせに保険を使用してやることができないため、ほぼ大学の手出しとなります

また研究費や教育、設備維持にもお金がめちゃくちゃかかります

ノーベル医学生理学賞を受賞された京都大の本庶佑特別教授も仰ってましたが、国は研究に対しお金あまり出してくれません

要するに大学は全員をスタッフとして雇ってしまうと採算が合わないのです


無給医のデメリットは?不利な点は他にもたくさんある!

無給なだけでもかなりのデメリットと思われますが、それだけではありません

まず無給の場合は、実際に働いていても「働いていない」扱いされます

そのため勤務証明というものを出してもらえないので、認可保育園などに入れないとのことです

また勤務証明がないため、社会保障もない場合があります

アンケートでは無給医の7割が、社会保険や雇用保険に加入していないと回答しました


なぜ無給のようなひどい待遇でも医師は辞めないのか?

これに関しては理由は2つ考えられます

労働環境に対して強く反発することができない業界であること
大学病院に勤務する医師は、医局という組織に所属しなければなりません

医局に所属することはメリットもデメリットもあります

教育に関しても熱心であり、何かあった際は医局がしっかり守ってくれますが、その代わり年功序列の上下関係は強く存在し、人事などに逆らうことはほぼできません

大学病院を辞めて市中病院などで働くという選択肢ももちろんありますが、できない理由もあります

医局というものは非常に大きな力を持っており、県内に大学病院が1つしかない場合などもあります

つまり医局との関係が悪くなれば、県内では働きづらいという状況になってしまう可能性があるのです

また、大学院へ進んだ医師などは、大学病院を去ると必然的に院を卒業することができません

生活ができないほどお金がないわけではない
前述した通り、週に一度程度のお休みをバイトに費やして生活しております

医師のバイトは特殊であり、金額も普通のバイトより高額に設定されております

そのためバイトのみでも、贅沢などをしなければ生活が成り立ってしまうのです

ただし、通常勤務+バイト日勤・当直となるため、労働時間は大変ことになります

...

......

こんな感じで医師は、いつの間にか無給医になってしまうのです

しかし無給医は、入局して初めて無給ということを知る場合もありますが、知った上で入局する医師も少なくないのです

もはやそれが当たり前だという風潮があり、感覚が完全に麻痺しているように思われます。


無給医が存在することによる社会的なデメリット

無給医は本人たちがお金もらえないだけでしょ?患者には関係ないじゃん!

なんて思ってはいませんか?全くもって違います

さっき書いた通り、無給医はバイトをすることによって稼いでいます

独り身の無給医ならば生活は問題なくできるでしょうが、都心部勤務で賃料などの出費がかさむ医師や、家庭を持っている医師などはそうはいきません

週1のバイトで足りない場合は、さらに当直などを追加してお金を稼がなければなりません

そうすると必然的に勤務時間が増えていきます

そのような肉体的・精神的な負担が大きい状態では、人間は本来のパフォーマンスを発揮することが難しくなります

これにより普段なら絶対やらないようなミスなどが発生した場合、患者側なども被害を被る可能性が出てくるわけです

前日ぐっすり寝た医師と、丸2日間寝てない医師、同じ医師ならあなたはどちらに手術されたいでしょうか?

 

無給医に対する現在の厚生労働省・大学病院の対応は?

今回の結果に対して、大学病院を所管する文部科学省にNHKが取材したところ「報道内容が事実であれば確認が必要だと考えている」とコメントしております

複数の無給医がいると証言が寄せられた順天堂大学は
「調査した結果、無給医は存在していませんでした。ただし、一部の診療科で手当て申請を怠っていたケースが見られたため是正しました」
と回答しております

一方、この大学病院で働く医師の中にはずっと無給医だったが、つい最近「今後時給1000円を支給する」という連絡があったとのことです

払えるなら最初から払っとけよ!

しかし「時給が支払われても、健康保険などの社会保障については言及がない。改善されたとは言えない」との話もあるそうです

 
若い医師がタダ働きをさせられた上に、社会保障などもない

これが今の大学病院の現状と言えます


無給医問題に対しての解決策はあるのか?

即効性のあるものはないでしょう

まずは厚生労働省などから、無給医問題に取り組んでもらうことが必要です

そのためには世間に認知されることが必要ですので、SNSやマスコミなどで広まらないといけません

ただ根本には、大学病院にはそもそも多くの医師を有給で雇う経済的余裕がないという点があります

これが解決しないうちは、無給医はいなくならないでしょう

現在、厚生労働省が「医師の働き方改革」を進めていますが、あくまでその中身は勤務時間超過などに対するものであり、金銭的なものではありません

前述した通り研究費などが支給されれば多少の改善があるのかもしれませんが、日本はそこらへんに対しての待遇はよくないのです

また今回無給医に関しての話になっていますが、「有給ではあるが時間外勤務がちゃんと支給されていない医師」まで入れると、ほぼ100%となる予感がします

医師業界はブラックというのはよく知られている話で、ひどい場合などは「月に15回近く当直業務をやっている」場合や「5日連続当直」などという場合もあります

どこで線引きをするかというのは非常に難しい問題であり、ここまで対応すると非常に複雑な問題となります

まずは無給医に関してだけでもいいので改善されるべきと考えます

この問題が少しでも改善され、未来の医師たちが働きやすくなり、より良い医療が行えるようになる未来を期待してます

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