肉じゃが考

肉じゃがを作ったら彼氏に喜ばれる。
不思議と定着しているこの考え方だが、男子的には「そうでもない」というのが本音なのではないだろうか。

今回は一体なぜこの言説が定着しているのか、そもそも肉じゃがが抜擢されたのはなぜなのかを、だらだらと書き連ねてみる。

さて、彼氏に料理を作る目的は何だろうか。
彼氏に喜んでほしいから?
家庭的な女アピールをして今後につなげたいから?
「肉じゃが」というワードが出てくるときには、同時に「家庭的」という言葉が出てくるように感じる。
要するに、肉じゃがというのは家庭的アピールに調度いいのだ。


まず、肉じゃがは好き嫌いがあまりない、無難な料理である。
確かに「肉じゃがを愛し、365日肉じゃがを食べてます!」といった男性は見たことがない。
しかし、「俺、肉じゃが食べられないんだよね」という男性をあまり見ないのも事実である。
つまり、嫌いな食べ物である可能性は低いのだ。

また、通常、家庭料理というのは「おふくろの味」に見られるように、各家庭特有の味がある。
肉じゃがも、もちろんそのような違いはあるのだが、大きくハズレる可能性は低い。
例えばロールキャベツはコンソメで味付けをする家とケチャップ味の家がある。コンソメ派の人がケチャップロールキャベツを出されれば、「まずい」とは思わなくても、この人と俺は味覚が違うんだなと思ってしまう。
困った。家庭的アピールが逆効果になってしまう。
しかし、肉じゃがであれば、ほとんど味の系統は同じである。(愛しの彼が変わり種の肉じゃがを食べていたら運に見放されたと思うしかない)
強いていうなら、牛肉、豚肉のどちらを使用するか問題が勃発するかもしれないが......
肉じゃがはハズレる可能性の低い料理といえるだろう。

次に調理段階の話をしよう。
肉じゃがは初心者向けの料理だといえる。
下処理の難しい食材を使うことは少ないし、みじん切りなど、包丁を使い慣れてない人にとっては高等技術ともいえる技を披露しなくていい。多少大きさに違いがあっても、煮てしまえば気にならない。

調理の工程も少ない。レシピによって多少変わるが、最初に具材を炒めて、水・酒・だし汁など煮るための水分を入れる。最後に醤油などを入れて好みの味にしたら完成である。
煮物やハンバーグ、唐揚げなど、調理慣れしてないと一瞬作るのをためらってしまうような料理である「肉じゃが」。これをこんなに少ない工程で作れるなんてお手軽ではないだろうか。鍋だって一つで事足りる。
そう、普段料理をしていない人でも「普段から手作りしてますよ」と澄ました顔で作れるのが肉じゃがである。

そして鍋一つで事足りるのだから、片付けだって楽チンである。火力を強くして焦げついたなんていう事件さえなければ、汚れはスルリと取れていく。
料理初心者であっても失敗する可能性が低いうえに、片付けも簡単となれば肉じゃがが注目されるのも納得である。

最後に、これが一番大事なことだと思うのだが、肉じゃがは作った後、体に匂いが残りづらいのだ。
ハンバーグを作るためにミンチ肉をこねてみてほしい。石鹸を使って洗っているにも関わらず、手からは肉と玉ねぎの匂いがいつまでも香ってくる。
家庭的、といえば家庭的だが、女性としては花の香りのような「良い匂い」を漂わせたいものである。
その点、肉じゃがは匂いが後に響かない。
野菜は大きめに切るため匂いが染み込みづらいし、肉を直接手で触らなくていい。
料理でアピールした後、彼氏と良い雰囲気になったのに手から料理の匂いがしてムードを壊しては、せっかくの作戦が台無しである。
肉じゃがは「家庭的」と「女性らしさ」を両立できる料理なのだ。

以上の理由から「肉じゃが=家庭的」という図式が受け入れられたのではないだろうか。
ポイントは、家庭的「風」でいいということである。
そもそもある程度料理を作れる人であれば、彼の好物を作るだろう。
できれば相手の好きな料理を作りたいと思うのが、当然の反応といえる。

つまり肉じゃがは料理できない女子を料理できる女子にみせるスペシャルアイテムなのである。

とはいえ、昔と違い男性だって料理をする時代。
肉じゃがのお手軽さに気づいてしまう男性もいるだろう。
そもそも、女性が執拗に「家庭的」であることをアピールするような時代の流れではない。
そう考えるとこの標語は時代錯誤かもしれない。

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