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#10: こんなときだから♪カウンターテナー

グルック:歌劇『オルフェオとエウリディーチェ』より「エウリディーチェを失って」(1762)

#08 - 14のテーマは「別れと出発」でお送りしています。

「エウリディーチェを黄泉の国から連れ戻したいのならば,その道中,絶対に振り返ってはいけません。もし,彼女の姿を見るようなことがあれば,二度と生き返ることはないでしょう」

愛の神は,事故で新妻を失った吟遊詩人のオルフェオにこう告げます。黄泉の国についたオルフェオはエウリディーチェにここから脱出するために自分の後についてくるように伝えます。しかし,エウリディーチェは,「どうして私の顔を見ないの? 私のこと愛していないの?」と,自分の姿を一瞥もしない夫の行動をなじり続けます。そして,ついに耐えかねたオルフェオは振り返ってしまいます。その場に倒れ込むエウリディーチェ。「なんてことをしてしまったんだ!」と嘆きに嘆くオルフェオ。
本日の作品,クリストフ・ヴィリバルト・グルック(1714-1787)作曲の「エウリディーチェを失って」は,このオルフェオの嘆きの歌です。

「決して振り返ってはいけない」

何かを固く決心する時。まさに旅立ちの時,この言葉がぴったりのような気がします。

嘆き悲しむオルフェオは,今度は自分がエウリディーチェの後を追うかのように,短剣で自らの胸を突き刺そうとします。それを見た愛の神は,二人の真の愛を認め,エウリディーチェを蘇らせ,めでたしめでたしとなるのでした。
オルフェオは昔はカストラート(少年時に去勢された歌手),現在はカウンターテナー(裏声の男性)もしくはメゾ・ソプラノ(女性が男性役を演じる)によって歌われます。

本日は,カウンターテナーのフィリップ・ジャルスキーの歌声をお楽しみください。

今日もみなさんにとって,素敵な一日でありますように!


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