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久留米絣未来ビジョン

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福岡県の伝統工芸織物「久留米絣(くるめかすり)」織元 下川織物3代目の下川強臓と申します。これまでウェブサイトのブログやInstagram、Twitter、FacebookなどSNSツールで職人自らの言葉で久留米絣のことを情報発信してきました。モノづくりに対する思いやこだわりなど「作り手目線」で画像中心に発信してきましたが、「note」では、久留米絣を通したさまざまな活動、未来を見据えた下川織物あるいは職人として経営者としての指針についてご紹介していきたいと思います。

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「いい物を作れば必ず売れる」という時代においては、技術を磨き顧客からの依頼を待ち、確立された流通ルートに従えば安定した仕事が得られました。しかし日々変わりゆく時代の変化の中で新たな価値創造が生まれ、世の中との親和性を図り自らの言葉でビジョンを語りながら独自のネットワークを構築し仕事の幅を広げていくことが重要となってきました。特定の商流の中の往復運動ではなく今後は縦横無尽に動き回るフットワークと身に着けた技術の応用力が必要不可欠だと感じます。

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歴史に敬意をはらい職人としての天命を全うする。

久留米絣は220年の歴史の積み重ねがあります。先人の職人の創意工夫によって生み出された技術によって積み重ねられた歴史の上に立っていることを心に刻み、そこから自分が何を次世代に繋ぐことができるのか。何の脈絡もなく生み出したものには説得力は生まれません。

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下川織物が掲げる未来ビジョン

以上のことを踏まえたうえで、私が職人としてなすべきことを考え下川織物の経営指針と照らし合わせたうえで未来ビジョンとして以下の5項目を掲げました。

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1)海外展開 (J-TEX SHOW ROOM)

2019年より欧州ラグジュアリーブランド向けの商談会に本格的に参加。久留米絣は、海外からの関心を引き寄せています。2020年以降、現地に赴いての商談会開催が困難な状況が続きますが生地の展示のみを現地にて行いオンラインでつないで商談会を行うなど、意欲的に活動を続けています。

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国際下川絣未来賞

久留米絣を未来に繋いでいくために必要なものは何かを考えたときに「多様性」という言葉が浮かびました。久留米絣にとっての多様性を職人として表現するための一つの方法として、パリで久留米絣セミナーを開催し、その中で図案の募集を提案しました。受賞作品を実際に制作し、商談の場で発表することで新たなマーケットの可能性を模索します。

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ウェビナー開催

2018年よりオランダCCD-NLの絣プロジェクトに参加。2020年から始まった「絣プロジェクト」では三部作でウェビナーを開催中。久留米絣を「過去・現在・未来」の観点から議論し、オランダのデザイナーとのコラボレーションへと発展させることでビジネスの導線も図りたいと思っています。

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夢を叶えるプロジェクト

一生に一度の大切な記念に寄り添う久留米絣の制作企画。一個人の方々も含めた様々な人々の人生の写し鏡としてストーリーのある久留米絣を作ることを考えました。同時に依頼主の想いと制作者(職人)のプロセスをクロスオーバーさせ共有することで新たなビジネスモデルを確立し事業継続化の道を探ります。

久留米絣の最初の工程である図案作成の共有

音楽の楽譜のようなイメージで世界中のみんなが自由に絣図案を描ける世界を想像します。商業目的だけでなく、一個人の大事な人生にも関与できることで久留米絣の価値は次の世代に受け継がれていくと思っています。

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世界中に弟子を1,000人作る

久留米絣の創始者である井上伝は、自らの考案した技術を請いたいと願う人々に惜しみなく伝え広めることで福岡県の筑後地域は久留米絣の産地となり江戸から明治に移行する中で地元の経済発展の礎となりました。その歴史の上に立っている現代の私たち職人もまた同様のことを行うことが久留米絣を次世代に繋ぐことではないかと考えます。

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伝統工芸の技術は職人の手から手へと受け継がれて伝統工芸を愛する人々の生活の中に寄り添い続けてきましたが。時代が更新されるたびにその数が減少していることも事実。現代に生きる私たち職人は、世界中見渡しても括りなど唯一の技術を持つ久留米絣が歴史の中に埋もれてしまわぬように努力する必要があります。聖火のように勇気と希望の光を地域に灯し続けることで世界中の人々に感動を与え続けていきたいと考えています。

いただいたサポートは、職人の育成など有意義に使わせていただきます。