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佐々木朗希の完全試合を目撃した話

2022年4月10日 佐々木朗希 vs 宮城大弥

4月9日土曜日は、次女の小学校入学式だった。
日曜日は特に予定もなく、自宅でゆっくりするつもりだった。
天気も良さそうだし、流行に乗って購入した焚き火台を使って公園でBBQでもするかな、なんて思っていた。
24時間後に歴史的瞬間に立ち会うことになるなど、夢にも思っていなかった。

ふと明日の予告先発を見ると、佐々木朗希vs宮城大弥の同期対決。
チケットサイトにアクセスすると、レフト側応援席にはまだまだ空席があった。
導かれるように、私はZOZOマリンに行くことを決めた。

駐車場のおじさん

外環道(三郷~高谷)の延伸によって、埼玉の自宅からZOZOマリンまで、わずか1時間。
高速を走らせながら、今日の試合展開を予想する。投手戦になることは間違いない。

当時の佐々木朗希は、ロッテの長期的な育成計画のもと、登板間隔を置きながらの登板で、少しずつそのベールを脱ぎ始めたところだった。
一方の宮城は、一年間ローテーションを守り、オリックス25年ぶりのリーグ優勝に大きく貢献した大黒柱だ。
高校日本代表として共に戦った仲良し同期二人の対決を、楽しみにしていた。

高速を降り、ZOZOマリンへ車を走らせる。
海浜幕張駅周辺は既に「Team26」で賑わっている。
この日は黒ユニフォームということで、スタジアム周辺は真っ黒だった。

ZOZOマリンの周辺には幕張メッセやイオンもあり、駐車場には困らない。
しかし、この日は予想よりも車が多く、球場近くの駐車場は既に満車だった。
少し苛立つ私に、迂回をうながす駐車場のおじさんが嬉しそうに語りかけてくる。

「昨日は停めれたんですけどね~。佐々木朗希ってのが先発の日は、混むんですよね~。」

おじさんの笑顔が、今もなぜか心に残っている。

13連続奪三振

美しかった。

レフトスタンドからでも、その凄さがわかった。
160㎞を超えるストレートで追い込み、最後はフォークで空振り三振。
フォークでカウントを稼ぎ、最後はズバッとストレート見逃し。
大物ルーキー、松川虎生とのバッテリーが、次々に三振を奪った。

初回、吉田正尚の三球三振以降、まったくボールが前に飛ばない。
気づいたら、あっという間に、9人連続の三振を奪っていた。
既に球場はざわついている。

打席には、「日本一三振をしない男」吉田正尚。
「あと1人で新記録だ」
そんなドキドキ感をじっくり味わう暇もなく、緩いカーブを2球続けて追い込むと、最後はフォークを投げ込み、吉田のバットはあっさりと空を切った。

その後もオリックス打線はZOZOマリンの風を味方につけた佐々木朗希の球を打ち崩すことなく、連続奪三振記録は「13」まで伸びた。

球団側も想定外の出来事だったのだろう。
バックスクリーンに「祝・13連続奪三振日本新記録」の電光掲示板が表示されたのは、記録達成から随分と時間が経過した後だった。

完全試合達成

気づいたら宮城は打ち込まれ、味方の拙守もあり、ゲームは一方的な展開に。
13連続奪三振が途切れたあたりから、既に観客は次の大記録を期待していた。
いや、それは「期待」というより、「確信」に近かった。

9回表。27人目のバッター宜保に、代打杉本がコールされた。
前年のホームラン王は、開幕から「2年目のジンクス」ともいえる不調で、この日はスタメンを外れていた。
「かわいそうだな・・・」と思った。
状態の悪い杉本が、無双状態の佐々木朗希との初打席でどうやってバットに当てろというのか。
しかし、この先何十年と流される映像だから、宜保には申し訳ないが、杉本の方が絵になるのかもしれない。

レフトスタンドのオリックス応援席も、多くの人がスマホを片手に、大記録の達成を待ち望んでいる。
完全試合達成の瞬間、バックスクリーンには、待ってましたとばかりに、
「PERFECT 完全試合達成!!」の文字が躍った。

オリックスが負けたのに、こんなに気持ちよく帰れたのは、人生初だった。

2023年4月15日 佐々木朗希 vs 山本由伸

あの歴史的瞬間から一年後。
佐々木朗希が初めて山本由伸と投げ合うことになった。
激動のWBCを経て、世界を代表するピッチャーとなった二人の投げ合いを楽しみに、この日のZOZOマリンのチケットは完売。
一年前はまだ余裕があったレフトスタンドの応援席も、この日はびっしりと埋め尽くされていた。

5回までのピッチングは、あの日の再現のようだった。
若月のヒットで、なんとかあの悲劇を繰り返すことはなかったが、佐々木朗希は初回から全開の投球でオリックス打線をねじ伏せ、山本由伸に投げ勝った。

あの駐車場のおじさんは、元気だろうか。
きっとこの日も忙しかったに違いない。

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