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韓国ドラマ「ヴィンチェンツォ」が好きすぎて、どのようにこのような人物が出来上がったのか…

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韓国ドラマ「ヴィンチェンツォ」が好きすぎて、どのようにこのような人物が出来上がったのか考察してまとめたら二次創作になっていました。続きの需要があればまたアップします。

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  • ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察

    二次創作です。

最近の記事

ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~22(最終回)

暗がりの中、俺はその男のべとついただらしない黒い頭と、恐怖に怯える茶色い目を見てとった。 胸の真ん中をどついて、出てこようとした部屋の中にころげ倒す。ところどころ破れたところのあるカーテンの隙間から夕方の日差しが漏れこんでいた。家の中には手入れのされていないぐしゃぐしゃの汚いベッドと、粗末なテーブルセット、男の荷物らしい大き目のダッフルバッグだけがあった。 立ち上がろうとするので、もう一度胸を蹴り倒した。男は泡を食ったように床に転がって俺を恐れていた。 どうしてやろうか

    • ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~21

      叔父と書斎のソファで向き合っていた。いつものように香りの良い紅茶が届けられる。  アニタのアパートの前で立ち去りがたくしていたら、スマホが胸ポケットで鳴動した、出ると、いつもの青い目の護衛の男の声だった。「旦那様がお呼びです」すぐにベントレーが迎えに来た。護衛?いや監視されていたんだな。  叔父は紅茶を一口だけ飲むと、両手をすり合わせるようにし少しだけ首をかしげて、何かを言うのを遠慮しているように感じられた。 「ヴィンチェンツォ」 「はい」 「お前は、彼女はいないと言っ

      • ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~20

        (読んでくださる方々へ、タイトルの名前はわざと”ツェ”にしてあります。すみません。) ======================= 今日で年内の授業はおしまいだった。 たくさんの課題図書やレポートから解放される、今のところの予定は、家に帰って両親とクリスマスを過ごすだけだけど、ほっとしながらアニタはカーキ色のコートに腕を通した。クリスマスは兄さんもいるのかしら?あの後2度週末のフードバンクがあったけれど、兄さんは忙しいと言って来ていない。ヴィンチェンツォは楽しそうにクリス

        • ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~19

          賑やかなクリスマスツリーの飾りつけの途中で俺はフードバンクを抜け出し、寒い中相変らず路地に立っていた男たち二人を誘って、バールに行った。 最初は青い目の男に軽く顎をふられて断られた。曰く「俺たちは君の護衛をすることが任務で、そのためには近しくなることは良くないと思う」ということだった。笑い顔の男も笑い顔そのままに眉間に皺を寄せて言った「お茶するだなんて、聞いてないぞ?」 「パオロ・カサノについて?」 青い目の男がちょっと怖い顔をした。 笑顔の男から笑顔がなくなる。 「従兄

        ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~22(最終回)

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        • ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察
          22本

        記事

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~18

          粗末なフードバンクのカラカラと鳴るガラスの引き戸のこちら側と、あちら側から、それぞれ狭い道路の反対側にある路地の入口が見えていた。 アニタはトラックが到着するまでの間、こちら側とあちら側を往復しながら、そこにいる黒いスーツを着た男たちを観察した。同じ黒スーツでも身なりの良さを感じさせるし、さりげなく立っている様子も落ち着いて、チンピラのようには見えない。それでも、黒いスーツの男たちが不気味なのは変わらなかった。 携帯を取り出して、ドメニコ兄にショートメッセージを送った。

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~18

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~17

          父さんの書斎に思い切って電気を付けた。一瞬目が眩しい。   アニタを家まで送った後、駐車場から徒歩で家まで歩いて帰ったので、もう時計は0時ををまわっていた。0時25分、今も正確に時を刻み続ける父さんの時計。 帰りの車の中ではアニタがしきりに様子を心配してくれた。クラブ通いと授業の課題で寝てないんじゃないか、ちゃんと食事はとっているのか、こんなにお金を使ってしまって大丈夫なのか。俺は彼女に好きなようにしゃべらせながら、時々不必要にアクセルを踏んでは韓国語で悪態をついていた

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~17

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~16

          「ブルネットの長い髪の女性がいたら、合図を出すから何でもいいから打ち解けてくれ」 とヴィンチェンツォに頼まれた。それは、何でもないお安い御用だった。ヴィンツェンツォの合図は明確だった、長いブルネットの髪に驚くようなハイヒールを履いた女性を見つけると軽く口笛を吹いた。チャラい感じに少しイラっと来るが飲み込んだ。 彼女が化粧室に立ってから、同じように化粧室に立った。化粧台で隣に立つ彼女の鏡の中に目を移してから、軽く笑って言った。「なんだかちょっと暑いわね」。見知らぬ誰かと会話

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~16

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~15

          俺の運の確率はいまのところ三分の一なのだろうか? アニタの手をとって3日目、暗がりであまり顔が見えなかったあの男が現れた、この間と同じくブルネットの髪のナディーンという派手な女を連れて。女が目印だった。 アジア人の金持ちと、優雅にブランドを着こなしたアニタの組み合わせは、とてもスムーズに、というよりかなり店側が積極的な姿勢で、クラブXに迎え入れられた。店には入れると思っていた。だがいかにも常連そうなあの男が座るだろう常連御用達のエリアに案内してもらえるかどうかが肝だった。想

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~15

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~14

          これは絶対におかしいわ。アニタはそう思いながら試着室で背中のジッパーを上げた。「社会勉強につきあってほしいだけだよ」ヴィンチェンツォは真顔でそう言っていたけど、ただの社会勉強でフェラガモにドレスを買いに来る必要があるだろうか? 「ちょっと臨時収入があったんだ、この間のお詫びをさせてほしい」 この間ってあのチンピラ事件? 学生には分不相応なミラノの大通りに面した立派な路面店。並みいる服飾系ブランドではなくフェラガモを選んでいるところが、ちょっとヴィンチェンツォらしいといえばらし

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~14

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~13

          薄暗がりからクラブXの入り口と、みすぼらしい橋の両方を視界に入れて立ち尽くして3日目だった。日中の授業がとても眠くて辛い。課題が多すぎてクラブの閉店時間まで見張ることは無理だった、明け方起きて課題をこなすために睡眠時間が4時間以下になってしまっていた。 俺は何をしているのだろう、何が得られると思ってここに来ているのだろう? 心の中にうずまくどす黒い怨念と、明るく平穏に暮らすこと、それこそが亡くなった両親も願っているだろうということのギャップが、肌身に沁みる。 俺は、怨念に突き

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~13

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~12

          アニタを実家まで(やはり怖かったのだろう独りの自宅より実家を選んだ)送り届けると、夜の闇の中、急いで表通りまで駆け戻ってからタクシーを拾った。「コンバンワー」アジア人だから観光客と間違われて日本語の挨拶をされてイラっとし、早口で行き先を告げた。 ポケットから腕時計を取り出す、裏ブタに小さな文字で掘られたChi si contenta gode、心の満たされる人は富にも勝る、時計を父さんに譲る時にお祖父さんが時計屋に言って掘らせたものだ。ベントレーに乗る叔父の顔が浮かんだ。叔父

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~12

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~11

          秋の太陽はあっという間に夕日に傾いていた、昼間の喧騒が嘘のように、もう誰もいなくなった粗末なNGOの事務所を照らしている。ドメニコは目くばせをしてアニタを顎で示してから先に帰っていった。 「アニタ、家まで送るよ。1人でいないほうがいい」 バックパックを背負うと、何事かを思案して窓辺のベンチに1人腰掛けているアニタに手を伸ばした。 濡らしたタオルを殴られた頬に押し当てている。夕日で半分が影になったその様子は、か弱そうで、心をかき乱される。 「大丈夫よ、わたし。1人で帰れるし」

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~11

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~10

          日曜日の朝は、フードバンクの荷下ろしで始まる。 父さんのデロンギでカプチーノのダブルショット淹れて飲み乾してから、毎日曜の朝はフードバンクに通うようになった。 9時ごろ、前の週に集めた食料を小さなトラックが山積みにしてやってくる。荷下ろしをして、荷捌きをして、生の食材は今日のランチで振る舞う料理に、それ以外は持ち帰ってもらう保存食料のパッケージにした。 荷下ろしをしていると、全身黒い服を着た背中の曲がった老女が、パッケージを入れる白い布を手縫いで作った袋をたくさん持って現れる

          ヴィンツェンツォが出来上がるまでの一考察~10

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~9

          “それでね、いい話があるの・・・” 教会からは、すっかり足が遠のいていた。神父様と、手伝いに通っていた韓国人の教会の神父様からも、丁寧な手書きの手紙を受け取っていた。気が向いたらいらっしゃい、両方ともにそう書かれていた。 でも俺は、今イエス様に何を問えばいいのか、わからなかった。こんな事が起こって、それも神の差配によるものだろうか?今教会に行っても頭に浮かぶのは一体なんでなんだ?という疑問と、両親を返してくれ!神は酷い!という叫びでしかない。 ぽっかりと空いた日曜日、アニタに

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~9

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~8

          10月の風は長袖のシャツを着ていても少し涼しく、木々の影も長くなりつつあった。独りで生きていくにあたって、とりあえず俺は節約を心がけた。生活費もロースクールの費用も(一部奨学金が使えたのでそんなにたくさんではないが)、叔父から小切手が届いていたが、切り詰めた分をそのまま自分の口座に残して貯めるようにしていた。何が目的というのではなく、将来への不安がそうさせた感じで、料理家事、勉強、睡眠、間に時々顔を出す道場だけで俺の日常は成り立っていた。 手荒く作ったサンドイッチを校舎前の階

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~8

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~7

          これまで存在を知らなかった親戚が、まさか同じミラノ市内に住んでいたとは、ちょっと驚いた。 「はじめまして。葬儀をお知らせできなくて、すみませんでした」 叔父さんは、いや、いいという風に軽く手を振った。「知っていたよ、教会の近くまでは行ったんだ」「そうなんですか?」 また手が降られた。知り合ったばかりの叔父はあまり話好きの人ではないのかもしれない。 まもなく着いたのは、街はずれの邸宅だった。マッテオの家の3倍くらいはありそうだ。 車寄せに到着すると、あっという間に玄関のドアが開

          ヴィンチェンツォが出来上がるまでの一考察~7