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一挙両得2の2 織末彬義【創作BL小説・18禁】

 第十六章
 
「あらやだ」
 丈のママズ三人が一様に凍り付く。
 お風呂に入れたり、家でうろうろしている限りはまったく気にしていなかった。

 これから丈は初めてプールに出かける直前。
 一歳半の丈に水着を着せた。
 これだけ兄弟の数が多いと、海やプールに着いてから着替えだとどうしてもばたつくので、子供達に服の下に水着を着せることにしていた。
 そうしてないと水着を家に忘れてくる子が必ずいる。
 バタつく心配は無いし、服を脱げば、プールに向かえて便利だ。

 丈は男の子なんだからパンツ一枚で良いのだが。
 ミルク色の肌と、淡い胸のアクセントがなんとも人の目を奪う。
 丈の顔立ちは絶対的にに女の子と見紛みまがわれる。
 そこが人が多い場のネックになる。
 出発直前の今となっては買い物にも行けない。
「あ、華の小さい頃のビキニの上があるわ」
 佐波が手を打つ。
「私も何かありそう」
 雪子も立ち上がる。
 丈は着替えに時間がかかるのに慣れている。
 飽きさせないようにつけられている画面をじっと観ていた。
「ママ達、ととがまだか、もう出かけるぞって」
 渉が車で待つ父の伝令で来た。
「すぐ行くから、もうちょっと待っててと言って」
「わかった」
 渉はそれを父に伝えるのに走り去る。
 
 雪子か、佐波が持ってくるものは向こうで着せればいいだろう。
すみれママが丈に水着の上から洋服を着せた。
 ようよう立ちはしたが、丈は手を引かれてもまだ歩みが覚束ない。
数歩歩ませ、すみれママは丈を抱き上げた。
「華ちゃん、その」
最後まで言うまでもなく、華はママバックを手にすると先に歩き出す。
 すみれママはバックを取って貰おうとしただけなのに、華は当たり前のようにバックを運ぶ。
「ありがとう華ちゃん、重くない?」
「大丈夫、私、もっと持てるよ」
 華はにっこり笑う。
 抱き上げられた丈はすみれママの胸にコテンと頭を預けている。
早朝だから、指しゃぶりし、まだまだ眠たそうだ。
 半眼の瞳でぼんやりと人の動きを追う。
 長くカールした睫毛が瞳に美しい翳をさしていた。
 玄関を出ると、父親が仁王立ちで家族全員が揃うの
を待ち兼ねている。
 家族の人数が多いから点呼に忙しい。
 漆黒の艶やかな睫毛越しに丈は父親を流しる。
父親は自然な動きで、すみれから末っ子の丈を受け取る。
 すみれは、雪子と佐波が丈の着替えの追加が必要になり、急いで探していることを告げる。
 それを聞き、納得した父親は頷く。
 それなら、もうしばらく待てば来るだろう。
 すみれは娘のうららが乗っている車に同乗した。
仁は子供達用のサルーンバスに乗っていた。
 バスには護役が乗っているだけで、親達がいない。
 危ないことをしない限り、バスの中は自由だ。
 ママ二人待ちの一行は、予想通り間もなく出発の運びとなった。
 旅行に行くなら小学生の子供達から流れるプールか、波のあるプールに行きたいと希望される。
 子供のリクエストを聴き、行き先を考え始める。
 今年は、大きなプールがある施設の候補はいくつもあり、今回は宿泊施設が併設されたプールにした。
 子供が七人、子はかすがいで仲が良い母親が三人揃う。家族だけでも人数が多い。
 遊園地で、絶対に子供を迷子にしないは難しい。
 勝手にどこかへ行かないよう親についているよう叱ってばかりいたら、結局はどちらもストレスになる。
 宿の部屋や、何かしらの集合場所を用意するようにすると親側の心配が、かなり減る。
 ホテルがあるプールに二泊予定だ。
 
 職業柄、護衛もつく大所帯の車列はゆったりと動き始める。
 早朝である。
 家族の騒がしさに起きはしたが‥。
 丈は普段ならいつも寝ている時間だ。
 父親と雪子の乗るリムジーンで父親の膝に抱かれ、
ぼんやりしている丈に哺乳瓶の白湯を飲ませる。
やはり眠かったらしく、乳首を吸うチュクチュク音がすぐに間遠になる。安心しきった寝顔だ。
 シートに特別製ガードをつけ、丈を寝かせつける。
 枕とタオルケットをかけ、楽な体勢にした。
 車列は適宜、休憩をとりつつ予約したプール付きホテルに到着する。
 ホテルにチェックインする。
 スムーズにする為にアーリーチェックインにしてあった。
 支配人自らの案内で部屋に通された。
 ロイヤルスィートルームと隣接する数部屋をコネクトしていた。
先にチェックインすれば、部屋に荷物が置ける。
 子供達は次々と着ていた服を脱ぎ捨て水着になり、身軽になった。
 車内でずっと寝ていた丈はぱっちりお目々を輝かせ起きていた。
 何もかも物珍しそうに観ている。
「なんで」
 悟と渉が不審そうに丈を観る。
「雪子ママ、丈は男の子だよ」
 男兄弟は丈の気持ちを代弁する。
 まだ本人はその機微が分からない年頃だ。
 丈は着ていた服を脱がされ、おむつはスイム用の上にレースフリルのついたかぼちゃパンツ。
 その上にイチゴのアップリケのついたビキニの上を着せられていた。
 性別の意識などない丈は着せられるままだ。
「そうなんだけどね」
 仁と傑は着せられる寸前を観て、黙っていた。
「丈がもっと大きくなったら、着てくれなくなるんだろうけど」
 丈の服を着せつけている雪子と佐波が応える。
 やはりビキニの上を着せた方が全体に落ち着く。
 ママズは満足そうに頷き合う。
 少し離れたところで、下の兄弟達の不満な様子を観ていた仁が近づいてきた。
 華の写真で見覚えがあるビキニの上をひょいと上へずらす。
 それを見た悟が、そっともとに戻す。
「‥‥そうか」
 ママ達がしたことに納得する。
 一歳児の丈はされるがままだ。
 仁に抱っこされ、丈はプールに向かう。
 宿泊すれば、荷物は最小限にできる。
 それでも人数からするとタオルやおやつに着替えとかですぐに大荷物になる。
 護衛として一緒に来ている丹原達が、集合場所候補をいくつか確保している。
そこを一巡して家族の長である父親が、家族の集まる場所を決めた。

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