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【全史】第18章 2年連続2位も独走許す/1985(昭和60)年

(1)落合ノースイングと復活期す村田

 前年に引き続き、今シーズンも首位と2位が5ゲーム差以内ならばプレーオフを実施するというペナントレースとなる。

 2月1日からスタートした鹿児島キャンプでは落合に異変が起きていた。バットを全く振らない調整を行っていた。キャンプ前、落合は醍醐コーチに「下半身が出来るまで、バットを振らない」と申し出た。当然、醍醐コーチは反対。稲尾監督に報告したが、稲尾監督の「好きにやらせよう」という判断で落合流の調整にGОサインを出した。有藤も「『振らない』と我を通したことも、反面、絶対に成績を残さなきゃならない責任が伴う。相当な覚悟を持ってキャンプに入ったと思う」と話した。落合がバッティング練習を始めたのは、キャンプも中盤に入ってからだった。
 その有藤にもキャンプでは注目が集まった。区切りの2000本安打まで、あと「38本」。その他にもオリオンズ史上初となる1000打点に「あと3点」、2000試合出場に「あと38試合」と迫り、記録づくめのシーズンになりそうだった。
 有藤を含めた外野陣には一抹の不安があった。有藤は前年.244/11本塁打と今一つだったことに加え、今シーズンは39歳と力の衰えは隠せない。高沢も2ヶ月半の入院生活を得て、キャンプには参加しているものの別メニューで調整していた。庄司は久しぶりに113試合に出場し.256/11本だったが持病も完治した訳ではなく不安を抱えていた。ベテランの域に入ってきた芦岡(.243/7本)、ルーキーながら55試合に出場した高橋(.280/2本)、昨ドラフトで4位指名で入団したルーキー横田らの奮起に期待せざるを得なかった。

 投手陣は15勝コンビの深沢、石川、13勝の仁科に続く投手が課題。シャーリーに代わる外国人選手として台湾から加わった荘の他、右田、梅沢、井辺ら若手の台頭が不可欠だった。連日ブルペンでの投げ込みに佐藤コーチは様々な工夫を凝らしたメニューを考案し、消化していった。
 そして、一番の明るい話題だったのは、一昨年、右ヒジにメスを入れた村田だった。前年は一軍復帰を果たしたものの、完全復活には至っていない。「メスを入れたら選手生命は終わる」とのジンクスに敢然と挑む今シーズン。村田はキャンプ終盤の紅白戦のマウンドに上がった。
 予定の2回を打者7人ノーヒット。さらに1回を追加して2点を失ったが3回を投げた。村田は「それまでなんともなかった内転筋が張ってきた。生きた打者に投げるのは、それだけ体の神経が緊張しているんです。結果だけで見ないでください。内容で見てください」と笑顔を見せた。確かな手応えをつかんでいた。稲尾監督も「オープン戦では巨人戦に投げさせたい。全国に兆治は見事に蘇りましたよ、と報告したいんだ」と手放しで喜んだ。

 ところが、キャンプからオープン戦にかけて離脱者が出る。まず、先発陣の柱として期待された石川が右肩痛でキャンプ終盤に離脱、2年目の高橋がオープン戦で右肩を脱臼して離脱(開幕には再合流)と期待の投打の主力がケガに見舞われた。このチームのピンチにオープン戦で頭角を現したのがルーキーのドラ2小川投手とドラ4の横田外野手だった。横田は高橋に代わり開幕スタメンに起用され、小川は開幕3戦目のマウンドを託された。

 開幕は4月6日、日本ハム戦(川崎)。先発マウンドには初の開幕投手となった深沢が上がった。深沢は期待に応えて6回まで1点に封じ、リーの一発と落合のタイムリーで上げた2点を守ったが、7回に捕まり3点を奪われ逆転を許す。リリーフの梅沢、大洋から移籍したベテラン佐藤政が9回に追加点を許し、2-6の黒星発進となった。
 7日は村田が復活のマウンドに上がった。しかし、途中で雨が強くなりが中止となった。
 9日からは阪急3連戦(西宮)。9日にようやく仁科が先発し打線が爆発。山本功が4安打、リーと落合が3安打と中軸が起点となり、8番袴田が3打点、9番芦岡が4打点と打線がつながり13-4で大勝。仁科も完投勝利で今シーズン初勝利を挙げた。10日の2回戦は、ルーキー小川が先発も5回4失点KО。3-6で敗れた。

(2)サンデー兆治と新助っ投荘が3連勝

村田(右)の復活勝利に笑顔で握手を交わす内野陣

 4月13日、14日は西武との2連戦(川崎)。注目の2人の投手に注目が集まった。
 13日の1回戦は深沢が先発。深沢は3回までに4点を失い降板。3回途中から土屋がマウンドに上がる。その土屋が西武打線を封じると、2-4から9回裏に同点に追いつき延長へ。10回表からは台湾からの助っ投、荘が登板。10回、11回と西武打線を封じると、11回裏に途中から守備に入っていた芦岡がセンター前にサヨナラタイムリー。リリーフとして2試合目の荘に来日初勝利がついた。

 翌14日は日曜日。村田が先発マウンドに上がる。ジョーブ博士からは「君の右ヒジはまだベイビーだ。もしもあと1球でパーフェクトゲームを達成できる場面でも球数が100球を超えたらマウンドを降りなさい」と100球という制限をかけられてのマウンドだった。

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