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ルイーズ・グリュック「バイカウツギ」試訳

ルイーズ・グリュック

バイカウツギ

月の光じゃない、教えてあげる。
その花々が
庭で輝いているだけ。

花なんて大嫌い。
バイカウツギなんて大嫌い、わたしが性(セックス)を、
その人間(おとこ)の口が
わたしの口を塞ぐ、その人間(おとこ)の
カチコチになった身体(あそこ)を嫌いなように――

いつも届かない叫び、
低調で、辱めるような
結合の前戯――

精神(こころ)のうちで、今宵、
問いが投げかけられ、答えを追い求め
それが一つの音色に溶け合わされて
のしかかり、またのしかかり、それから
古びた「わたしたち」と、くたびれはてた敵意へと
バラバラに引き裂く。わかる?
わたしたちは馬鹿にされていた。
次いでオレンジまがいの匂いが
窓から流れ込んでくる。

どうやって安らげばいいの?
どうやって満足すればいいの
いまだその匂いが
世界に充満している只中で?

※タイトルにも採られているバイカウツギの英名は、「Mock Orange(オレンジまがい)」である。

Louise Glück, ‘Mock Orange’, first published in 1968. 
Translated as non-profit, fair use, by Akira OKAWADA.

非営利の学術研究目的としての試訳。
本作は、Mark Strand and Eavan Boland ed., The Making of a Poem: A Norton Anthology of Poetic Forms, Norton, 2000.等にも採録されており、同書にて、本作は「Pastral(牧歌、田園詩)」に分類されている。
また、詩篇の原文はオンライン上でも公開されている

試訳:岡和田晃

※写真はKENPEI • CC-BY-SA-3.0

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