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それぞれの障害や受けている障害福祉について

“パラクライマー”大沼和彦【日曜日のインスタライブ】22年11/6

隻腕クライマー・大沼和彦選手が主催する、パラクライマーたちによるインスタライブ。日曜日の夜に不定期でゆる~く開催。悪ふざけだったり、パラクライミングへの熱い思いだったりが繰り広げられています。

今晩のお相手は…

大谷武彦 選手(AU1)
高野正 選手(RP3)
片岡雅志 選手(AL1)

大沼:パラクライミングのクラス分けって、視覚障害と身体障害に分けられていて、その中でまた細分化されて、重症だったり軽症だったりっていう感じですよね。この中で、自分と大谷さんは同じ身体障害のカテゴリーで、上肢障害クラスの「AU1」というクラスで、片岡さんは下肢障害クラスの「AL1」、高野さんは<関節可動域および筋力、その他の機能障害>の「RP3」っていうクラス。

大沼:きょうは障害や福利厚生、受けている障害福祉についてお話ししていけたらなと思っています。



■バイクで自爆 気が付いたら右手が動かなかった【神経引き抜き損傷】

大沼:自分はもともとは両手両足、健常に使えてたんですけど、約6年前ですかね。バイクでツーリング中に転んでしまって、右手が使えなくなってしまった。自爆ですけど、何の変哲もない平坦な緩やかなカーブで転んじゃったみたいなんですけど。記憶がなくて。気がついたら丸1日経っていて、病院のベッドで目が覚めた。最初は全然何が起きたかわかんなくて、起き上がろうとしたら右手が動かなくて。看護師さんに「きのうバイクで事故って、運ばれてきたんですよ」って言われて。そこでちょっと状況が分かった。

高野:どこまで覚えてんの?

大沼:転ぶ10分か15分ぐらい前に、セブンイレブンで休憩したんですよ。それでセブンイレブンを出発して、2~3分のとこまで覚えてるんですけど、そこからは全く。フラッシュバックみたいなものも全然ない。逆に記憶がなくて良かったなって感じですかね。

大沼:右腕が使えなくなって、神経を移行する手術をして、最初は全くヒジから先を動かすことができなかったんですけど、いろいろ神経を移植したり、移行したりという手術を繰り返してやっとヒジがここまで曲がるようになった。でも、クライミングでは全く使えない。パラクライミングの競技に出るときは、上肢障害の重いクラス、AU1で出てます。

大沼:この間、結城周平さん(AL2)のインスタの登りを見ていて、試しに片足でやってみたんですよ。片手と片足で簡単な壁も登れなかった。

高野:無理でしょ。


■生まれつき指が動かないので、そもそも動くという感覚が分からない【神経引き抜き損傷】

大谷:大沼さんと同じでカテゴリで右手が悪いんですけれども、僕は生まれつき。神経の引き抜き損傷。指が動かない。小指の感覚はなくて、親指だけ少し感覚があるっていう感じですね。生まれつきなんで、そもそも感覚は全然わかんない。手術も何もなくて。大沼さんよりは、ちょっと動く。指相撲できますよ。親指は動かすことができるので。

大沼:障害福祉的なサービスは?

大谷:東京都に住んでるんですけど都バスはタダ。あとは車は持っていないんですけど高速道路は半額。特にそれ以外はないかな。僕の場合、4級なんで、そんなに障害は重い方ではない。

大沼:自分は2級です。同じ感じだけど、だいぶ変わっちゃうんですね。

大谷:医者によっても違うんですかね。僕が見てもらったのは小さいころなんでね。


■「切断するか残すか自分で決めていいよ」と言われた【ユーイング肉腫】

高野:自分は、左足の機能障害。元々は使えてたんですけど、後天的なもので、左足に、ユーイング肉腫っていう悪性腫瘍ができて、それが筋肉、神経、血管、いろんなものを取り巻いてできちゃった 状態。本来であれば、切断って言われてたんだけど、医者に「自分で決めていいよ。切断か残すか」って言われて、選ばせてもらって、残した。

高野:神経をいじったり、左足の筋肉をほとんど取ってしまったりして、くっついてるだけ。ヒザは90度くらいしか曲がらない。足が完全に硬直しちゃってるから、足首だと10度とか20度とかくらい。左足の指は、力が一切入らない。足の細さ的には、自分の腕より細いんじゃないのかな。あと立ったときに、片足が5センチくらい浮いちゃう。左右差がある。


高野:足の神経をいじってるせいか、足の裏が敏感で、小さい粒でも、踏むとめちゃくちゃ痛い。だから底が薄い靴も履けない。痛くて。砂利道も歩けない。極力歩きたくない。外岩に行くときはアプローチが大変で、ストックを使う。


大沼:アプローチが核心ですね。

高野:底の厚い靴を履く。

大沼:地元の茨城県笠間市に「石器人スラブ」ってあるんですけど、1ミリも出てないような粒に乗り込むっていう課題なんですけど。


高野:スラブは苦手。乗り込めない。やらないよね、まずやらない。クライミングのときは、いつも、必ず右足から落ちるっていうことだけ考えてる。

大沼:インスタの投稿で、左足でヒールやってましたけど?

高野:効いてないの、ヒールは。あれはもう置いてるだけ。使いすぎちゃうと、組織が弱いのか、血が溜まってきちゃって、血を抜かないと腫れちゃう。

大沼:高野さんは障害福祉的サービスは?

高野:俺は4級。高速代が半額。あとは自動車税が全額免除。どんだけ大きい車乗っても税金がかからない

大沼:車によっては年間4~5万かかりますもんね。


■生まれた時に背骨が…【二分脊椎】

片岡:僕は、主な障害が二分脊椎。先天性の脊髄の病気。人間って背骨が先に形成される らしいんですけど、僕の場合、胸椎と腰椎の間の骨が2個、閉じない、開いた状態で生まれてきた。その2個を取ってしまわないと命の危険もあったというので、2個取ったことによって、下肢障害に。腰から下は一切動かへん。

片岡:二分脊椎の人って、水頭症を併発するんですけど、水頭症も当時はあって、頭にポンプみたいなものを埋める手術と、そのポンプと管を、お腹の中に埋める手術をして、髄液が脳室が圧迫しないように、上に上がってきた髄液を下に送り込むっていう手術を受けた。中学生のときにその管は抜けて、まあ 治ったというか消滅した感じ。

片岡:汚い話にはなりますけど、尿意と便意が一切分からない排出障害も備わってますね。それで生まれたときからずっと車いす。クライミング に関しては AL1という形でやってます。

大沼:足の感覚は全くないんですか?

片岡:厳密な話をすると、足の付け根の左と右で感覚が異なっていて、左は付け根のあたりに、感覚のあるところとないところがある。右に関してはないですね。

大沼:くすぐられても 全く分かんない?

片岡:右に関し ては。左に関しては付け根を触られると感覚があるところもあって、かゆいときは、ちょっとイラっとする。

■遊園地のアトラクションはことごとくNG

大沼:障害福祉的なサービスは受けられてる?

片岡:障害者手帳は1級で、身体障害の手帳の中で一番重い。それこそ尿意と便意が分からないんで、おむつ、福祉業界でいうリハビリパンツを公的サービスという形で支給してもらったり、電車とかバスの運賃が半額になったりとか、兵庫県宝塚市に住んでるんですけど、宝塚市はタクシーチケットっていうのがあるんですけど、それが初乗り運賃は免除されたり。電車に関しては、単独で移動する場合は、営業距離が100キロ超えないと半額にならないんですよ。

大沼:1級でもそうなんでしたっけ?

片岡:1級でもそうです。これが介助者が同伴だと、営業距離が100km未満でも割引。2人で1人の料金。バスに関しては100円引きなんですけど。

大沼:車は運転されるんでしたっけ?

片岡:たまにします。背骨が左に曲がってるんで、左にハンドルを切ったときに遠心力で体持ってかれるので激しい運転はできない。ドリフトとか絶対できない。

大沼:車は改造している?

片岡:車は、改造してます。両手で運転するように。

大沼:それも補助金が?

片岡:ちょびっとですけど。

大沼:遊園地の乗り物には乗れる?

片岡:遊園地は昔、ことごとくアトラクションに乗れなかったことがありました。身長足りないよねっていう。遊園地側としても、何かあったときの責任は取れないっていうので。

■感覚がなかったり、過敏すぎたりすること

大沼:褥瘡は大丈夫ですか?

片岡:もう大丈夫。ただ、いつ褥瘡になるかわかんないから怖いんですけどね。冬になると乾燥するんで。背骨が出っ張ってるところが当たって褥瘡になる。背骨を2個取った空間の、骨が出っ張ってるところを筋肉で抑え込んでるんですよ。肉と皮膚が薄くてすぐ褥瘡になっちゃう。

片岡:保湿は今の時期欠かせないです。本来、感覚があれば自分で痛いって思うから庇うじゃないですか。でも感覚がないから庇う動きをしない。それでどんどんどんどん悪くなっていく。感覚がないからこそ怖いところ。

大沼:自分も腕に感覚ないから、以前、中指のところにでっかい水ぶくれができてたんですよ。熱湯を触って火傷していた。全然熱くもないし痛くもないから、怖いなって思いました。蚊に刺された時は何も感じないからいくらでも刺してくれって感じなんです。

大沼:高野さんの場合は、熱いとか冷たいとかっていう感覚はあるんですか?

高野:過敏すぎる。冷たいものにはすごく敏感。骨も脆くなっちゃってるから。

大沼:こういう話って、聞くまで本当にわからなかったです。

大沼:でも高野さんの登りを見てると、障害を感じさせない。いつも鯉のぼりもやったりするし。

高野:知らない人から見たら、健常者にしか見えないと思う。その分、上半身を鍛えないと。

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