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あなたはオリエンテーリングの楽しみ方をまだ知らないのかもしれない


あるところに一人の大学生オリエンティアがいました。一見どこにでもいる、インカレに情熱を燃やしトレーニングに励む少年。彼がオリエンテーリングを頑張る理由は他の何でもない「嫉妬」でした。

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 こんばんは。入間市OLC所属、東大OLKOB2年目の佐藤遼平と申します。advent calendarは表の方で2019年に一度記事を書かせていただきました。たくさんの反応をいただきとても嬉しかったです。この場を借りてお礼申し上げます。

 さて、今回の記事ですが...なんか前の記事と似ている気がします。ホントは意味わかんない滅茶苦茶ふざけた記事書きたかった。まじめな記事に見せかけた自分語り記事が嫌な人は読まないことをおすすめします。それでもいいという方はありがとうございます。耳掃除でもしながらお読みください。

1、オリエンテーリングの大会に行く理由、頑張る理由は何ですか?

 何をいきなり、って感じですよね。そりゃオリエンテーリング好きだし...とか、友達がいるから行くの楽しいに決まってるじゃん!とかそりゃそうだ。新しい地図が見たい、旅行を兼ねる、なんて理由もありそう。でもね、それだけでみんな行くはずがないんですよ。

 かったいシートの普通電車に3、4時間も座り続けて「ここどこ...?」「まだ山梨」って会話を10回ぐらい繰り返したり、どう考えても7人乗るべきじゃない激狭レンタカーに荷物詰め込んで「後ろが見えねえ!」とか言いながら移動するのはどう考えても苦痛に値する行為です。

 それでも定期的に長時間移動をして休日をつぶしてまで大会に行く人々には、自分では意識していないかもしれない何らかの理由があるはず。今楽しい人はともかく、思うように成長できなかったり、何が楽しいかわからなくなってしまっているような、今もがいている人に新たな楽しみを発見してもらうためにぜひ読んでほしいです。

 その最初の話として私の自分語りから始めます。まじめな話が続くので定期的にオリエンティアあるあるを挟みます。

あるある① 荷物のパッキングがめっちゃ上手くなる。ただし帰るときはなぜか荷物が全部カバンに入らない。

2、嫉妬に狂ったオリエンティア

 私佐藤は2015年度入学、巷では黄金世代と呼ばれている世代です。大学3年生時点で、すでに世界で活躍しているKOLCの上島、稲森、伊藤選手や、インカレで入賞実績のある大田、宮本選手、一つ下の学年の種市選手、他にもたくさんの世界を知る、またはインカレで活躍する選手に囲まれていました。

 かたや私は3年生まででインカレ最高順位は18位。海外大会はお情けで出してもらったアジア選手権のジュニア部門だけ。

 これが単に実力が劣るのであれば悔しい、頑張ろうというだけなのですが、私は活躍する選手に劣らないだろう実力を持っていました。しかし、セレクションのボーダー直下を取ったり、インカレに弱かったり。JWOCセレクション落ちした日の自分のコーチからの一言は「慰めたいけれど、俺はセレクションで落ちたことないからどう慰めていいのかわからない」でした。今でも忘れない。

 とにかく結果が欲しかった。結果を出している選手が妬ましくてしょうがなく、自分は実力はあるのになんでこんな思いをしなければいけないんだと思っていました。この頃の私は気負って行った大きな大会で失敗して、誰も話しかけるなオーラを発しながら会場の隅っこで三角座りしていました。遠くの楽しそうな大会も結局失敗レースしたらずっとカリカリしていた。今思えばなんてもったいないんだろうか。優勝候補であった大会ではこの頃絶対勝てなかった。

 当時の大会選びの基準は、大きな大会と近場である練習会、とにかく予算の範囲内で行きやすい大会すべてでした。一年に二ツ塚峠(東京都青梅市)に12回入った年もあります。オリエンテーリングの何の良さも知らず、ただがむしゃらに大会に行って、速くなるためにもがきつづけていた。結局は自分が死ぬ気で速くなってレースに勝って嫉妬を克服するほかに、自分がオリエンを真に楽しむ方法はないと思っていました。

オリエンあるある② 関東オリエンティア、親の顔より矢板ICをよく見る

3、なんかこの大会楽しい気がするぞ...?

 土日の夕方以降は大抵悔しいばかりで、Eカードを落として落選した3年のロングセレあたりからだんだんと限界を感じ始めてしまいました。何を楽しみにオリエンテーリングを頑張っているのかわからなくなってきた自分は、なぜか関東外の大会に足を延ばし始めるようになります。

 そんな私が大会を楽しめるようになるキッカケの一つ目が、2017年度の東北大大会。公園テレインでのリレーと、新規テレインでのロングという質の高い大会であったのはもちろんなのですが、テレイン近場の秋保温泉で合宿宿でない←ここが重要 温泉宿に宿泊。サイコーの晩飯を堪能し、浴衣で同行者と大会前にも関わらず地酒でプチ飲み会。今でも忘れない良い遠征でした。しかしこの時は大会結果が良かったのもあり、結局レース結果が良かったから楽しかったのだろうと自分の中で結論付けてしまいました。

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この時訪れたワイン農園だった...かな?この頃から遠征の写真が一気に増えていく、そんな写真もいっぱい紹介したい...

 他のキッカケの一つが関東パークOツアーの大会でした。正直競技の質が高い大会とは言えないものも多く、それまで敬遠しがちでした。しかし実際行ってみると...あれ?なんか楽しいぞ...?表彰なんかがない分、気負わず頑張れる。公園を不快感なく走って、終わった後に友達と冷えたからだにラーメンでも注入して帰って昼寝。理想の休日やん。レース自体は頑張るんだけど気負わなくていい感じがとても自分は好きなのでは?

オリエンあるある③ Eカードでフィニッシュユニットが2つあるとき、自分の狙ったほうのユニットは絶対はめたい方向と逆を向いてる

 最後に気づきの決め手となったのは、BOCという関西の大学の部長が主催する練習会への遠征です。「霊山」というテレインで、レース中に旧図O、トレイルO、ミドルを全部やる色物...じゃなかったエンターテインメントレースでした。普段の自分なら絶対行かない大会でしたが、後輩に誘われていってしまいました。ただこの後輩との遠征が本当に良かった。というのも同行者が全員なかなかのオリエンバカ揃いだったのです。

 車の中でバカみたいなオリエントークをして、名物料理をワイワイ食って、スーパー銭湯で仮眠取りつつボドゲして、レースは何だこれ!って言いながら一生懸命走って、またまじめな話もバカ話もしながら東京へ帰る。

 こんな何でもないような遠征が本当に自分の心をほぐしてくれたような気がします。これ以降、こういう遠征ばっかり行くようになってしまいました。またこの時のメンバーで遠征に行きたい...。

 実は、自分が本当にオリエンテーリングを楽しむ大会の参加の仕方は、オリエンが大好きな人とたくさん話をしながら行く遠征で、結果をあまり気にしないつつも、一方でレースは一生懸命頑張るようにするというものだということに気づき始めました。ここまでに3年かかった...。

「経験」としてのオリエンテーリング大会という価値。そこに行くまでの過程、大会を楽しみ尽くし、余韻に浸る帰り道...人とのつながり。帰っても写真を見返してその経験を思い返したり。一方で、遠方の大会に参加してまで速くなるために頑張る自分を肯定することができた。

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 少しずつ健全化していくオリエンテーリングとの接し方。しかしまだ問題がありました。私の中に渦巻いた嫉妬心は、結果なしでは到底解決しないものでした。インカレでいい成績を残したい...全日本で目立ちたい...みんなに速いって認めてほしい...。でもこの気持ちも、この大会への参加スタンスがきっかけで解消していくことになるのです。

オリエンあるある④ 一年生に畳んでもらったフラッグを次使うとき堅結びになっててほどけなくてイラつく

4、人は勝つためだけにオリエンテーリングをやってるんじゃないんだなって

 この遠征に頻繁に行くスタイルが生み出したのは、オリエンテーリングを好きな人々と向き合って話す機会でした。

 助手席-運転席での会話や、宿でのご飯、コンビニでの休憩なんかも。これらの時間で私が色んな人のオリエンテーリング観を知り、また彼らを大好きになるのに十分な時間でした。オリエンテーリングの遠征で一番好きなのは、こんな意外と何でもない、一見大会とは直接関係ない時間なのかもしれない。もう真っ暗な時間、中央道の長い渋滞で並ぶ車のテールランプを眺めながら、「今日のレースお互いダメダメだったなあ...笑」「そうだねえ...」なんて語る時間がいつまでも忘れられないもんなんです。

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オリエンあるある⑥ 木の皮の向けたところとか、光を反射したところとかがフラッグに見える

 そんなかけがえのない時間の中でいろいろな人の考え方を知りました。その中で私のオリエンテーリング観に多大な影響を与えた人を匿名で紹介します。

Aさん…彼が頑張る理由は大会での活躍でありながらも、一番の芯は世界のトップオリエンティアからはオリエン中どんな世界が見えているのかを知りたいというものでした。探究心の強さに感動しつつ、自分の数字にこだわっている部分に疑問を投げかけられました。

Bさん…レース前やレース後の会話で、取り組み方やレースの内容を新鮮にほかの選手と共有できるのが好きでしょうがないという方でした。確かにこれは楽しい。いつも自分の結果で余裕のない私が他者とかかわる足掛けとなってくれました。これに近い意見を最近後輩の学生トップ選手からも聞きました。

 多くの人たちと深く話をできたことで、レース時の他の選手への敵対心がなくなり他の選手をリスペクト出来るように、数字にこだわらず自分なりのペースで高みを目指せるようになりました。その結果、だんたんと大きな大会でも結果が残せるようになりましたが、まだ全日本クラスの大会で結果を残すには、相変わらず邪魔な「嫉妬心」が残っていました。

オリエンあるある⑤ 他の大学のインカレでの応援の真似をやりたくてしょうがない


6、勝つにふさわしい選手という考え方

 私の「嫉妬心」には「自分は~という大会で勝つにはふさわしくない」という考え方がありました。あの選手は世界の舞台で戦っているから、あの選手の練習量は自分よりすごいから、といって自分に負い目を感じ、その結果満足できないレースをして負けた自分を至極当然のものとして冷めてみていたように感じています。それがない大会では、例えばインカレの選手権リレーはチームメイトの力量を信じることで、なんとかなっていました。だからこそ、全日本やインカレでは取り組みで自分に勝る選手に勝てる気がせず、いつも弱気になっていた。

 その一方で、自分に近しいある選手は、どんなときでも、例え月50㎞しか走っていなくても、「まあ勝てるんじゃないですか?」「〇〇選手に勝って優勝したいですね」と疑いもないかのように言い放っていました。正直私はそんなことは軽く言えんわと思っていました。なのにその選手は口先だけでなく成長し、大きな大会でしっかり結果を残すようになっていった。それが彼の楽しみ方であるかのように。

 近頃になってその選手と大会に参加したり、一緒に行動する機会が増えていきました。二人でしっかりと話す機会は増え、そのおかげで自分さえも前向きに勝負と向き合えるようになりました。自分の積み上げてきたものを信じられるようになったと思う。

こういう人の繋がりがさらに私の考え方を変えていきました。

オリエンが大好きな人とたくさん話をしながら行く遠征で、結果をあまり気にしないつつも、レースは頑張る

であったスタンスが

オリエンが大好きな人とたくさん話をして、大会を楽しみながらに、自分に成長を生み出していくという感じに。

わかりづらいですが、大会を楽しむことと気負わずに結果を出しにいくことの両立、楽しみながら成長することができるようになっていったという感じです。

 その成果はだんだん大きい大会の結果へ繋がっていき、今年は東大OLK大会で優勝、全日本M21Eで3位入賞を達成できました。遠征好きになってからかかわった、全国各地の選手たちにはとても感謝しています。

オリエンあるある⑦ Eカードとコンパスを入れたビニール袋を昼ごはんのごみと一緒にコンビニのゴミ箱に捨てる

7、出来上がっていく自分の競技の楽しみ方と向き合い方

 そうやって、様々な大会の経験から自分の楽しみ方は広がり、様々な人とのつながりから自分の競技との向き合い方は変わっていきました。

 正直まだ世界で戦う選手への嫉妬心は消えていない(=全日本で勝てるとは胸を張って言えない)けれど、それを克服する日も近いと思います。最近はまたオリエンテーリングが大好きな後輩たちを誘って地方の大会に遠征に向かってばかりいます。最近は「遠征バカ」なんて言われがちですが、これもまた自分ならではのオリエンテーリングの楽しみ方です。

そして遠征で得る新しい人の繋がりから、新たな楽しみを知っていくサイクル。大会の結果までついてくるとまた新たな世界も見えてくる。8年のオリエンテーリング人生で今が一番楽しいかもしれません。

 そしてまだまだ自分の楽しみ方には可能性を感じています。所属するクラブである「入間市OLC」は老若男女がいて、出自も学生オリエンティア、トレイルランナーからテニス、アドベンチャーレースまでさまざまで、そういう人たちの百人十色の意見から、自分の楽しみ方をもっと進化させていきたいですね!

 とりあえず次は全日本スプリント。「遠征」から手に入れたものたちと共に、自分がまだ知らない更なる高みを見に行ってみたいと思います。自分の憧れの選手たちを、昔と違って純粋な気持ちで倒しに行ってみたい。目標は稲毛選手と背中合わせで金メダルもって写真を撮ることです。

オリエンあるある⑧ オリエンティア、なんか知らんけどみんな球技がヘタ

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 今年もどんどん増えていく遠征の「経験」の数々。スマホの「遠征」フォルダの写真が増えていくごとに、自分は強くなっているような気がする?


8、あなたはどういう大会が好きで、どういう瞬間が好きですか?

 自分語りはここで終わり。相変わらず自分について語るのが好きだな、老人か?笑

 あなたはどうオリエンテーリングを楽しみたいですか??二日酔いで無理になってテレイン内のピークで座って休憩することですか?いばらの中走って腕中傷だらけになることですか?そういう人がいてもいいし、そういう人の楽しみ方も知ってみたいと思う。

 ここまでのようにいろんな人の意見で成長してきたからこそ、もっと私は人の楽しみ方を知りたいと感じました。その結果はじめたのがオリエンテーリングマガジン「FORSTA」です。スウェーデン語でファシュタ、と読みます。あの一斉スタートのファシュタです。ここからはこれまでFORSTAの編集長であるRisaとして書きます笑。

 OK-infoさんやadvent calendarさんは大好きですが、もっとフランクに、自分の好きや楽しみを語れる気軽な共有ブログのようなものが作りたかった。そこから、人それぞれがオリエンテーリングをさらに楽しめるようになっていけばいいなと思って作成しました。

速い選手たちも好きなことはいろいろ違っていて、大会選びの仕方だって個性的です。自分なりの楽しみ方を見つけることは、競技的な成長にも繋がっていくと思います。このマガジンにもいろんな選手のオリエンテーリングとの接し方があって

こんなのとか、こんなのとかいいじゃないですか。ホントはもっと軽い内容でもいいんですけど笑。女の子追っかけるために大会会場行ってます、みたいな内容でも全然いいんです。それが誰かがオリエンテーリングを楽しむキッカケになるかもだから。

オリエンあるある⑨ サムコンパスに変えて、ピン付きシューズを履くと一人前になった気がする(気がするだけ)

オリエンあるある⑩ レースの最後が下り基調なだけでどんなにつらいコースもいいコースだったように感じてしまう

9、もっともっと共有したい、そういう思い

それ以外にもこうしたらもっと自分はオリエンテーリングを楽しめるって意見有りますよね。

・遊園地でオリエンテーリングをしたい・全日本にも選手紹介動画とかほしい・土曜日の大会増えろ・10位まで表彰する大会やれ・キャンプとオリエン合体させたくない?・会場でビール飲みてえ・無所属でも交通の足をくれ

こんなTwitterに雑に呟かれることもどんどん実現していってほしいし、

こんな人がオリエンを楽しんでいる姿もどんどん共有してほしい!(勝手にリンク貼ってすいません)

 こんな考え方に賛同してくださる方、オリエン界に思いを垂れ流したい人はぜひFORSTAのライターを一回きりでもいいので気軽にやってほしいです!ぜひTwitter、noteのコメント、なんでもいいのでご連絡ください。

 はあ頑張って書いた、7000字。修論やばいのに。まあ修論完成しなかったらこれ教授に提出します。教授は涙ながらに「ぜひ来年もウチにいてほしい!」って引き留めてくれるでしょうし、インド人留学生が「サトウさんこれあげるヨ」って言いながらドリアンとコーヒーを混ぜたような味がする飴をくれることでしょう。

↓FORSTAのツイッターリンク

以上、長文失礼しました~。



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