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【不思議な話】旅行先で道に迷った話

本日は久しぶりに『不思議な話』を語りたいと思います。

まだインターネットも携帯電話もなかった時代、私は創作のサークルに参加していました。
そして、10年ぐらいの間、そのサークルでは年に2回ぐらいみんなで集まって旅行するのが流行っていました。
これは、そんな中での体験です。

旅行に行ったのは5月のゴールデンウィークだったと思います。
場所は関東のそれなりに有名な観光地でした。
ただ、私たちの場合、観光することそのものが目的ではなくて、日本各地にいるサークルメンバーと会って話すことの方が目的で、いわば現在のオフ会のような感じでした。
なので、時によったらほとんど観光することなく映画を撮ったり、お互いの作品の品評会をしたりして終わり、というようなこともありました。
ただ、この時はちゃんと観光のできるスケジュールが組まれていました。
といっても、宿泊場所は他の時と同じく、貸別荘です。
その時借りたのは、山の中腹に位置するちょっと都市からは離れた場所にある貸別荘でした。

私たちはレンタカーを2台借りて、二組に分かれて観光に出かけました。
その帰り道に、迷ってしまったのです。

麓の都市から貸別荘への道は、いわゆる峠道で山の中をグルグル回りながら登って行く感じになっていたんだと思います。
道は、基本的には一本道だったように記憶していますが、当然、途中には細い脇道なんかもあった気がします。
運転はメンバーの一人がしていて、私は後部座席の窓際に座っていました。
峠を登り始めたころにはすでに、霧が出始めていました。
夕方で、時間的にはさほど遅い時間ではなかったと思いますが、霧のせいで視界が悪かったように記憶しています。

霧の中、どれだけ進んでも車は貸別荘にたどり着く気配がありません。
この時代にはまだカーナビもスマホもないので、私たちは一旦麓に戻ることにしました。
戻るのは案外簡単に戻れたのですが、そこから何回再スタートしても、どうにも正しい道がみつからないのです。
で、車がひたすら登ったり戻ったりを繰り返す間、私はボーっと窓の外を見ていました。
が、そのうち、ちょっと気持ち悪くなってしまったのです。
というのも、窓の外に何度もお地蔵さんと墓地が見えて来るのです。
いや、ちょっとこれ、やばいんじゃない? と思いました。

それを他の人たちも見ていたのかどうかは、わかりません。
が、何度目かにスタート地点に戻った時に、メンバーの一人が貸別荘に電話して、誰かに迎えに来てもらおうと言い出しました。
ちょうど戻った場所の道の脇に、公衆電話があったのです。
それに、私たちが貸別荘に戻ろうとし始めて、すでに1時間以上は経過していました。
もともと、もう一組の方が先に都市部を出発したこともあり、とっくに貸別荘に戻っているに違いない、と皆の意見がまとまったのでした。
そこで、一人が公衆電話から貸別荘に電話しました。

ほどなく貸別荘からもう一台の車で仲間たちが迎えに来てくれ、私たちの乗った車を先導して走ってくれました。
そしたらなんと、ものの30分程度で貸別荘に到着したのです。
この時にお地蔵さんや墓地を見たかどうかは記憶していません。
ただ、あとで聞いたところ、本当は脇道を入らないといけないところを、霧のせいで気づかず通り過ぎていたらしい……とのことでした。

今こうして書くために思い出してみると、単純に霧のせいで道に迷っただけだったということなんだろう……とは思いました。
今のようなカーナビもなく、運転手も同乗者も土地勘がない上に、山道なんだから、霧が出て視界が悪くちゃ迷ってあたりまえ、とも思います。
ただ、霧の中に何度も現れては消えて行く、いくつか並んだお地蔵さんの群れと墓地の風景を思い出すと、やっぱりぞっとせずにはいられない私なのでした。

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