豆知識② 「壱・弐・参」という漢数字と「借用証書」の重要性
作造「お庄屋さん、お庄屋さん。」
悪い庄屋「おや、作造さんじゃないかね?どうしたんだね?」
作造「お庄屋さん。お借りした金子だけど、お返しできる塩梅になったでよ。それで訪ねてきたわけなんだね。」
悪い庄屋「おお、それはよくおいでなすった。ささ、お上がんなさい。」
作造「それじゃあ、お返しさせていただきますよ。ああ!これで借金が返し終えたかと思うと、いっそ清々するってやつでさぁ!」
悪い庄屋「さて、それでは証文を改めようじゃないか。」
バサリ
悪い庄屋「おや?・・・これ、作造。おぬし、一両しか持ってきてないのかね?」
作造「へ?おらがお返ししようとしているのは一両です。間違げぇねぇですよ?」
悪い庄屋「ふぅ、困ったねぇ・・・。作造、これ、この証文をよくご覧。
証文には間違いなく『≪十両≫を決められた期日刻限までに返済すべし』
と書かれているよ?」
バサリ
作造「えええっ!そ、そんな!そったらことあるはずがねぇよ!お庄屋さんよ!」
悪い庄屋「と、言われてもねぇ。この証文にはそう書かれているのだよ。残り九両、刻限までに返して貰わないと利子の上乗せになってしまうよ?」
作造「そ、そんなはず・・・そんなはずはねぇ・・・。」
悪い庄屋「そうだね、どうしても払うことができないというのなら、・・・そうだ!お前、確か年頃の娘がいただろう?その娘をお代官様のところにご奉公にお出ししてはどうかね?それで借金を帳消しにしてやろうじゃないか。」
作造「お、おミヨを?そ、そんなことは、そんなことはできねぇだ。・・・おら・・・んっ?お、お庄屋さん、あんた汚ねぇな!」
グシャリ
悪い庄屋「なんだね?作造、藪から棒に失礼な。」
作造「おめぇ、『一』の数字に縦棒一本『|』を書き加えて、『十』に書き換えやがったな?!」
悪い庄屋「なっ!何を言うのだね、作造よ!言いがかりも甚だしい!・・・だとして、証拠はあるのかい?証拠は?!」
作造「しょ、証拠はねぇけど、その証文には確かに『一』って書いていたはずなんだ!それをっ!」
悪い庄屋「何と言われようと、証拠が無ければ言いがかりだね!」
パパン!パン!パン!(襖が開け放たれる音)
日銀黄門「控えおろう!控えおろう!」
作造「あ、あんたは、確か日銀問屋のご隠居様!」
日銀黄門「この紋所が目に入らぬかぁ!」
デュェーン♪デデデーン♪デッデーンデレレレーン♪ポンポンポポポポポポ・・・♪
作造「あ、あれは!なんか目玉みたいなマーク!」
悪い庄屋「に、日銀の行章!まさか、日銀のご老公様!」
作造・悪い庄屋「はは~~~っ!」
というわけで「日銀のご老公」という監視者により、「一(いち)」を「十(じゅう)」と改竄された借用証書が見抜かれ、悪い庄屋さんは「追って藩公より厳しい沙汰があるものと、覚悟致せぃ!」ということで裁かれたわけです。
しかし、日銀のご老公が常に監視者として見張っているわけにもいきません。
そこで、「一、二、三」という漢数字は、昔は簡単に改竄されないように「壱、弐、参」という数字で書かれていたわけです。
正式には「壱、弐、参、肆、伍、陸、漆、捌、玖、拾」と百は「佰」、千は「阡」とあります(諸説あり)。
これを「大字」と言い、今でも公式文書、正式な文章を手書きで書く場合、後は装飾的に時々利用されていたりします。
「よかった。よかったのぅ。はっはっはっは・・・っ!」
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