信用創造⑫ ―銀行振込の虚構の物語―
前回、大仰に「真実は偽物・事実は別にある」言いましたが、それは
「現象を引き起こした『事実』は違うけれど、説明をするときに『真実味のある虚構の物語で現象を『信用させる』」
ということです。
それを理解していただくために、例として、銀行口座間で送金を行う「銀行振込」の「虚構の物語」を説明します。
実は日銀のサイトに良い図がありますので、そちらを引用します。
この図解を少し編集します。
例えば「イさん」が「ハさん」に100万円送金しようとしたとしましょう。
これが銀行振込における
「虚構の物語」
です。
とても真実味がある物語です。
全く嘘だと思えません。
この物語の特徴の一つは
「②、④で『銀行預金』と『日銀当座預金』に変換して「日銀当座預金が持つ『三点監視』によって成立した『貨幣の信用』」を銀行預金にも付与しているところです。
図4のむらさき枠と赤枠が重なっているところ、がここになります。
もう一つの特徴は
「データであるはずの貨幣」がまるで「物質が確実に移動している」かのように表現されている、ということです。
デジタルデータ化されてしまった現代、多少実感し難い事かもしれませんが、データ化してしまったとしても「AからBにデータが移動する」ということは、超スピードではあるのですが、それは「物質的に移動している」と言えます。
A銀行からB銀行にデータの貨幣が物質的に移動しているということは、
A銀行からB銀行に「現金輸送車が現金を輸送している」ということ、
或いは
金本位制度時代に「メディチ銀行からパッツィ銀行に現金輸送の荷馬車が銀貨や砂糖、香辛料を積み込んで輸送していること」と、スピード以外の点では全く変わらないのです。
自在に信用創造ができる現在、
「物質的移動という真実味のある物語」
は事実ではありません。
次回は「銀行振込の事実」に迫ります。
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