＃55　浪速の号砲

白球が千葉の夜空に高々と舞い上がった時、様々な感情がこみ上げてくるのが理解できた。
負けられない首位攻防戦。
打順の巡りや相手投手の力量を考えれば、ホームラン以外での勝ち筋が見つからない場面だった。
「T-岡田が打てば勝てる」毎年のようにファンが口を揃えて言っていたことが現実になり始めている。

T-岡田の逆転3ランホームラン。
何度も見たような字面だが、やはり最初に思い出すのは2014年10月12日だろう。
クライマックスステージ1stラウンドのvs日本ハム。負ければシーズン終了のゲームで彼が描いた放物線。
この瞬間から時が止まっている人も少なくないはずだ。
奇しくも今シーズンを占う首位攻防のロッテ3連戦は2021年10月12日からである。

「WE ARE CHALLENGER」
あと1勝が足りずに逃したクライマックスシリーズ。あと1勝が足りずに逃したリーグ優勝。
あと1勝が足りずに逃したファイナルステージ。
現オリックスの選手で全ての試合でグラウンドに立った野手はT-岡田のみである。
1勝の重みを誰よりも知るベテランが、チームに最後の1勝をもたらす時、25年振りの「叶うべき夢の先」へ行けるだろう。