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『彼女の行方』【第6話】

「蓮の好きな場所」

「有栖川、行方不明らしい・・・知ってた?」

と連絡してきた佐藤は警察官だった。

4月に東京で会う約束をしていた奈緒の友人から
行方不明になっていることを聞いて

もしかしたら蓮のところに現れるのではないか
と思って連絡してくれたようだった。

蓮は奈緒と別れてから一部の女友達から
距離を置かれていたため状況を知らなかった。

大阪から戻ってすぐ佐藤に話をした。

写真を預かっていた女性と会ったこと
パズルのピースを受け取ったこと
奈緒を探そうと思っているということを伝えた。

気を落とすなよ。
必要があれば協力するから
と言ってくれた。

心強い言葉だった。

3枚目の写真の場所に到着した。

平日のせいか水族館はさほど混んではいない。

入場口で遺失物について尋ねて調べてもらったが、パズルはなかった。

ここはどちらかと言うと俺がお気に入りの場所で
魚が泳いでいたりくらげが浮いている様子を
ボンヤリと眺めるのが好きだった。

最近は仕事が忙しすぎて
のんびり出かけることもなくなっていた。

「見てみて〜」

ペンギンの島を見つけて走り出す。
こちらを振り返って両腕をぴったりそろえてパタパタと動かしている。
どうやらペンギンのまねのつもりらしい。

クスッと笑うと、

「何がおかしいの~?」

「いや、その動きおかしいだろ」

「似てると思ったんだけどなぁ」

「まぁ、似てると言えば似てるか・・・」

「もう、どっちなの~」

「ん、かわいいかわいい」

「似てるかどうか聞いてるのに~」

ちょうどエサをやる時間だったらしく
飼育員のところに集まり始めていた。

「奈緒も行ってくれば?似てるからもらえるかもよ」

「もう、いじわる!」

そう言いながら笑っている。

ひとしきりペンギンを観察してから
イルカショーの会場に移動した。

輪をくぐったり踊っているイルカを
奈緒は楽しそうに見ていた。

会場の周り一帯にイルカの像が飾られている。
少しずつ表情の違う像を見ながら慎重に歩く。

今の手がかりは写真に写っているイルカの像だけだった。

3分の2ほど周ったところで、該当のイルカを見つけた。
正直どれも似たようなものなのだが、ひとつだけ片目を細めている像があって、奈緒がウインクしてるみたいだ。
と気に入っていた。

銅像の周りをひと回りしてみる。

「あっ」

イルカのお腹のあたりにパズルの入った袋が貼り付けてあった。
そっと剥がして袋からパズルを取り出す。

パズルが4ピース。

まるで彼女の残像を追いかけているみたいだった。