サイコパス 秘められた能力
ケヴィン・ダットン=著 小林由香利=訳
NHK出版
「サイコパス診断クイズ」の嘘
最近よく「サイコパス診断」というものを見かける。大体次のような感じだ。
ある女が母親の葬儀で見知らぬ男と会う。女はなぜかその男に惹かれる。この男が自分の運命の人だと確信し、たちまち恋に落ちる。しかし電話番号は尋ねずじまいで、葬儀が終わった後は探しようがない。数日後、女は自分の妹を殺す。
さて、一体なぜ?
(↑ネットから拾ってきました)
言いなりになって答える前に、一瞬考えてみよう。どうやら、この簡単なクイズであなたがサイコパス的な思考の持ち主かどうかがわかるらしい。
女が妹の命を奪う動機はなんだろう? 嫉妬?
あなたがサイコパス的思考の持ち主なら、次のように答えるはずだ。
「妹が死ねば、葬儀に男が再び現れるかもしれないから」
という感じ。もし、あなたの頭に浮かんだのが同じだったとしたら......
確かに女のやり口は一見サイコパス的で、その点については異論ない。ただし、一つ問題がある。標準的な臨床プロセスを踏んで適切に診断された正真正銘のサイコパス--レイプ犯、殺人鬼、小児性愛者、武装強盗--に同じクイズをやらせてみたら、どんな結果がでたかわかるだろうか。
「妹が死ねばもう一度葬儀ができるから」と答えた人間は1人もいなかった。ほとんど全員が「恋愛関係のもつれ」が動機だと答えた。
この結果からわかることはたった一つ。
たった数回のゲームで秘密を明かすには、人格はあまりに複雑にできている。
安易にレッテルを貼ってはならないと言ったばかりだが、上記Twitterのように、自分がサイコパスかもと周囲に得意げに言いふらす人がいたら、それはダークトライアドの一つ、ナルシズム的傾向が高い中二病かもしれない......
狂気を数値化する
チキン・ラン(アクセル全開で、互いにぶつかるコースを走り、先に逃げた方が負け)の度胸試しでシュミレート。アンドリュー・コールマン
とる戦略は、
1、アクセルを踏み続ける「サイコパス的」戦略
2、急ハンドルをきって衝突を避ける「非サイコパス的」戦略
の「協調か競争か」のゲーム理論シナリオの構成要素2つ。個人の行動ではなく、相互作用が結果を左右する状況において、最も適した意思決定プロセスを定量化しようというもの。
A、B両者が賢明な選択をして衝突を避ければ、結果は引き分けになり、最高の4点に次ぐ、3点を獲得する。一方、2人ともサイコパス的な選択をしてそのまま突っ走れば、どちらも死ぬか、重症で最悪の1点。
しかし、コールマンによれば、どちらか一方、例えばAが危険を避け、もう一方Bが「いかれた」行動をとる場合、途端に差が生じる。
A--臆病者=2点
B--最高の4点
この結果、相手が正気の場合、「非理性的」に振舞うことが実際は理性的だという場合があることがわかった。(元々はどうしてサイコパス的な遺伝子が今も存続できているのかをシュミレートする実験。得た利得をダーウィン適応度に変換する)
ダーウィン適応度=個体の適応の度合いを数値で表したもの。生殖年齢に達する子供をどれだけ残したかで示す)
さらに2010年の名古屋大学の「最後通牒ゲーム」の実験結果=サイコパスは普通の人間に比べて、その場の不快感を避けることや自尊心を守ることよりも、単純な経済効用の方を好んで、不公平な提案を受け入れることにより意欲を示す。それだけでなく、不公平さに遥かに無頓着でもある。皮膚電位でストレス度を測っていると、不公平な提案をされた場合、サイコパスは遥かに動じなかった。
嘘をつく才能
マイクロエクスプレッションを一般人以上に、自在に再現できる。
人生で成功するヒント
機能的サイコパス
サイコパシーは極端に高水準でも、低水準でもなく、中間レベルが最も適応性がある。犯罪者として成功するには、サイコパシー度が適度であること。
→企業では時として、サイコパスの中心的な特性が影響力のあるリーダーに特有のスター性に変容する可能性がある。
機能的サイコパス = サイコパス - まずい決定 ÷ 状況
集団思考に毒されない
ウィリアム・H・ホワイトの「集団思考」
密接に結びついた集団が外部の影響から切り離され、規範的に「正しい」立場に急速に収斂し、集団全体が批判に対して鈍感になる仕組み。反対意見に無関心で、自信満々になる。
ヴラダス・クリスケヴィシアスのSNSのフィルターバブル現象。脅威を感じると「くっつく」。
しかしサイコパスはグループの意見に左右されない。
SOS気質の7つの決定的勝因
S=Strive 追求
O=Overcome 克服
S=Succeed 成功
につながる勝因
1、非情さ
2、魅力
3、一点集中力
4、精神の強靭さ
5、恐怖心の欠如
6、マインドフルネス
7、行動力
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