おりべ

日本古代史を専攻しており、主に歴史を巡るコラムを掲載しています。

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諸行無常と対峙する

増上寺の夕暮れです。 夕日が沈むにつれて増上寺の姿がおぼろげになり、交代するかのように東京タワーが煌々と浮かび上がる景色は、江戸から東京へと移ろう時の流れにも似た風情があります。

    • 秀吉が豊臣姓に込めた野心

       「源平藤橘」に続く第五の“氏”を打ち立てる――。日本一の出世人である秀吉の野心によって突如、「豊臣」という新たな氏姓が誕生した。1585年のことだ。  武家は元来、秀吉ほどは氏姓に執着してこなかった。鎌倉幕府の執権北条氏は平氏、室町幕府の将軍家たる足利氏は偽りなき源氏の名門、江戸に幕府を開いた徳川家康も真偽はさておき源氏を名乗った。わざわざ新しい氏姓を創始しようとした形跡はない。  秀吉は違う。初期の『公卿補任』には、織田信長に倣って平氏を称していたことが分かっている。

      • 移りゆく国と雅の姿

        平安の風情を体現する人物に藤原公任がいる。 一条天皇治世を支えた「四納言」の一人で、和歌、漢詩、管弦のすべてに秀でた当世随一の文化人だ。藤原道長を前にして己の風雅を誇示した「三舟の才」のエピソードからは、音楽と学問への造詣が単なる教養や文化的名声にとどまる類のものではなかった風潮を今に伝えている。 政治と音楽は不可分という儒教の教え 日本に儒教が伝来して後、朝廷は政治と音楽を不可分と捉えてきた。これは誇張でもメタファーでもない。『礼記』には、「楽至則無怨。礼至則不争。損譲

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