奥さまのマスクの中はどんな顔?

最近、マスクを付けた生活になったことで、無意識に歯を食いしばってしまうひとが増えているらしい。

くいしばりの主な原因はストレス。歯を食いしばる癖があると、歯が割れて知覚過敏になったり、炎症を起こして歯周病になったり歯がぐらつくこともある。しかも、肩こりや顎関節症を引き起こすなど、身体にも大きな影響があるそうだ。

先日、初めての歯科医院で定期検査を受けてきた。いままでお願いしていた歯科医院がいつの間にか閉院していたのだ。

検査の結果は、とくに虫歯もなく治療は不要とのこと。しかしながら、衛生士さんには思うところがあったのだろう。クリーニングを終えて帰り支度をしているわたしにこう言った。

「おりちゃさんは、歯ぎしりはしていないように見えますが、歯を食いしばっていませんか。」

えっ?

一瞬面食らったものの、ふりかえれば、思い当たる節があった。

もともと自転車競技をしていて、体に負荷がかかる場面や踏ん張りどころで「むむむ」と食いしばっていた気もする。いや、かなりしていた。

それに、2年ほど前に親知らずを4本抜いた。それからというもの、なんとなく口の中の構造というか、噛み合わせや舌の収まり具合がいまいちしっくりこない。

そしてやっぱり、あれだ。

ウイルスが蔓延してから、我が家の生活が微妙に変わった。

我が家はふたり暮らしで、自営業。緊急事態宣言も数回あって、それほど業務に支障は出なかったものの、いつも事務所内はピリピリとしていた。

何より県外に住む父母や義父母に会えない。なんでも話せる友もいない。根は寂しがりの主人との時間が増える。楽しいこともうれしいことも、もちろんある。だけど、世界がどんどん狭くなって、窮屈さを感じていた。

仕事でも、生活でも、うまくいかないと拳をぎゅっと握りしめて、下を向いて、歯を食いしばって。

だから肩こりも頭痛も頻繁に起きる。ある時鏡を見たら、ファンデーションがよれて眉間のしわに溜まっていた。


わたしは素直に「ああ…はい。くいしばってます…。」と答えた。すると優しい笑顔で

「そうでしたか。実はね、わたしも1年前まで同じだったの。少し気にしているだけで、全然変わりますから。マスクを付けている時も、口をほんの少し開けて、上下の歯を付けないように過ごしてくださいね。」

「はい。」


口を少し開ける、か…。

ストレスの原因は、シャボン玉のようにパチンと割れてすぐには消えてなくならない。ただ、それからというもの歯というか口周りを気にするようになった。

ある日のこと。

パソコンに向かい明日までの仕事をしていると、隣り合わせで座っている主人から次から次へと指示が飛んでくる。

すぐに返事をできればいいのだが、今日はなんだかいっぱいいっぱいだ。

ぐぐ(食いしばってる)

おっと、いけない。歯科衛生士さんの優しい顔が頭に浮かぶ。わたしは軽く深呼吸して「はい。」

席に着いて、マスクの中で口をすこーし開く。うむ、これでいいんだ。


カタカタとキーボードを鳴らしながら、ぼんやりと思う。

ああ、今マスクを外したら、ぽかーんと口を半開きにした、気の抜けたおばさんの顔になっているのだろうな。

主人が見たら、きっと「なんて顔してんだよ。」と笑うに違いない。


ふふふ。そうだ。

なんなら変顔ならぬ変口をしちゃおうか。鼻をでへへと伸ばしたり、顎をしゃくってみたり。

そう。マスクの中は、誰にも見えないんだもの。

そんなことを考えていたらなんだか楽しくなって、もやっとした気持ちがふわりと浮かんで消えていった。


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最後までお読みいただきありがとうございます(о´∀`о)

くいしばりについて調べたら、お顔のマッサージもいいようですよ。むにむに。

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画像は一般財団法人日本口腔保健協会公式サイトより引用しましたhttps://jfohp.or.jp/info/2020/5829



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