記事に「#ネタバレ」タグがついています
記事の中で映画、ゲーム、漫画などのネタバレが含まれているかもしれません。気になるかたは注意してお読みください。
見出し画像

迷惑だと思ってる? お互い様って思うなら辞めないで ~『テレビ報道記者』面白かった~

月曜、子どもが食後に『テレビ報道記者』にチャンネルを合わせた。
番組表を見て、ニュース好きな父さんが喜ぶかな~と思ったのだろう。
残念ながらフィクション性が強くて父さんのお気には召さなかったようだが、母子で楽しく見た。

 81年入社 曽根昭子 (仲間由紀恵)
 95年入社 平尾成美 (木村佳乃)
 03年入社 真野二葉 (江口のりこ)
 19年入社 和 泉令 (芳根京子)
4人の女性記者を軸に時代を行きつ戻りつしながら、先輩後輩として影響し合い、それぞれに事件を追いかける姿を通してテレビ報道記者の仕事や思いが描かれていたと思う。

オウム真理教事件や東日本大震災、コロナ禍といった日本を覆う大事件において、どの情報を優先して視聴者に伝えるべきか悩み考える姿に報道の醍醐味を感じた。
ある種ユーモラスな教団の活動を報道し、その怖さを伝えなかった。
身近なお台場の火災を伝えるより、津波から逃げてと言うべきだった。
感染者の数だけではなく、感染したらどうなるのかという視点を届けたい…
数字に振り回されそうになって、それでも数字に潜む一人一人の声を疎かにしたくないという思いに共感した。
と同時に、報道に誘導されないようにしないといけないなと自戒した。


それにしてもサブタイトルが「ニュースをつないだ女たち」。
今ドラマを作るとどうしてもこうなってしまうのだろうかと感じた。
道を切り開いてきた女性たちがいたことは事実なのだけど、男性だって当たり前のこととして頑張っていただろう。
なのに女性にスポットを当ててしまうのが今の時代なのだ。
性同一障害の記者も出てきたが、取ってつけたようだなと感じてしまった。

それでも過去の世界に今の感覚を持ち込んで時代考証って何?って悩ませるような作品よりは、時代の感覚を比較していくこの作品の方が素直に多様性について考えることができたように感じた。


このドラマで一番好きなのは、終盤でガン治療のために辞職しようとする御厨みくりや(平原テツ)を、社会部長になった平尾が引き留めるシーンだ。
治療のせいで仕事に専念できなくなる、迷惑をかけたくないから辞めるという御厨に向かって、介護や育児と同じく治療のために休暇や時短勤務を選んでも良いじゃないか。どっちも迷惑なんかじゃないと説得する平尾に、問題なのはジェンダーだけじゃないよねと同意した。

日本人は、『他人ひとに迷惑をかけてはいけない』という気持ちが強すぎるように感じる。
裏返せば『迷惑をかける他人を厭う』ということだ。
結婚出産育児介護といったライフステージのごとの個人的な問題で迷惑をかけてはいけない、迷惑をかけられたくない。
特に、自分がそのステージにない、ステージを経験したことがない、経験するつもりもない場合に負担をかけられたくない思いが顕著になると感じる。

しかし、そこに健康や災害のようないつ誰の身の上に起きるか分からない問題も並べたらどうだろう。
迷惑をかけられる家族がいない人だって、自分自身が治療に優先する必要に迫られる可能性は十分にあり得る。どれだけ健康に気を遣っていたとしても、事故をもらえば一発でアウトだ。
今回の能登半島地震、私は被害のない地域に住んでいるが、知り合いは身内が被災したので毎週末のように通っていると聞いた。
職場だけでなく、PTAや地域に対しても申し訳ないと言っていた。

誰だって、いつ、何が降りかかってくるか分からないのだから、困ったときはお互いさまで分担していく社会が出来たら良いなと夢想した。

直後、バツイチで身軽だからって簡単に辞めると言うなという平尾に、それは何らかのハラスメントです!と突っ込む御厨。
おっさんがコンプラ違反を指摘される図ばかり見てきたので、おばさんがおじさんから指摘されるのはちょっと新鮮だった。


最後のエピソードは和泉が追いかける声優の卵による乳児遺棄事件だ。
この事件自体はドラマの早い段階で、和泉の研修中の出来事として登場する。
報道する際に、卒業アルバムの制服姿の写真を使うのか、社会人になってからのコスプレ姿で盛り上がる写真を使うのかによって遺棄した女性の印象が変わること、後者の写真を使うことで特殊な職業の女性による事件と矮小化されてしまうのではないかということに悩んでいた。
その後、次々と起きる大事件を取材、報道する日々の隙間を縫うようにして地道な取材を続けて実現した、遺棄された乳児の父親のインタビューを含む特集が始まるところでドラマは幕を下ろす。
だから具体的にどのように纏められた特集だったのかは分からない。
しかし、特殊な1人の女性が起こした不幸な事件ではなく、男性にも関わりがあること、自分や自分の子どもたちにも起こりうる事件なのだと伝えられたのだろうと思う。

おかしな言い方になるが、他人事ひとごとではなく、お互い様なのだ。


***
それにしても、最近見るドラマは時間軸を行ったり来たりするものが多かった。
伏線を貼ったり回収したりしつつ時間が一定方向に進むのではなく、実はあの時こんなことが起きていた! これがこの先こんなことになってしまう!と直ぐに見せてくれる。
ので、覚えてなくていいわー。って違うわ! いつの話だか分からなくなって混乱するわ!


*** ***
冒頭、女子高生がワイドショーをザッピングしながら「なかなか麻原が出てこなくてさー」って言ってるのを見た子どもが、「お父さんやお母さんもテレビで見てた?」って聞いてきた。
『今日から俺は』の福田雄一監督が、ヤンキー昭和ネタは親子の会話のきっかけになると言っていたのがここでもハマっているなと思った。

スマホやタブレットで好きな動画を見るのも良いけど、テレビという大きな画面で、誰かが見てるものをなんとなく一緒に見るというのも良いものだと思う。

この記事が参加している募集

テレビドラマ感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?