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『十二国記』山田章博原画展 肉筆原画の迫力

今年3月15日に発売された『「十二国記」アニメ設定画集』刊行を記念した、設定画とアニメ関連商品のためのカラーイラストの肉筆原画展が、去る7月10日にいよいよ名古屋にやって来ました。

ちょうど名古屋に来るという友人と見に行くことにしました。

丸善名古屋本店6階のコンパクトなギャラリーの、壁には額装されたカラー原画(Blu-ray & DVDやCDの装画)と、その下に並べられたケースの中に2段に納められた設定原画の数々。
カラー原画は普段目にする印刷物と比べて大きく細かい部分の描き込みまでハッキリ見えますし、色の滲み具合も美しかったです。
設定画はほとんど修正の跡が見られないことに先ず驚きました。
入りや払いの線の強弱濃淡に、確かにこれは山田先生の手で書かれた本物なのだという説得力がありました。

展示は陽子から。流石主役、たくさんの設定画ががありました。
日本での陽子と、達姐と分かれたあとの着物姿の陽子、その後の男装で旅をする陽子の3枚の陽子。
それぞれの時期の見た目の違いについてのコメントが添えられていて、こんなことまで考えてデザインされていたのだと感動しました。
彼女の制服や私服のデザインの横にも、お父さんの影響についての考察が書かれていてなるほどと頷かされました。
(展示の後ろの方に陽子の両親の設定画もありましたが、そちらにも激しく頷きたくなるコメントが添えられていました)

獣形の楽俊のデザインも2枚ありました。
1枚目には、楽俊の置かれた環境を考えたら小説版よりも痩せているはずだとのコメントが添えられた、結構リアルで痩せたねずみがいました。
それから数日後の日付の書かれた2枚目、リテークの楽俊は私たちの知る楽俊でした。
楽俊の表情集には「表情集…ひょ?」と書かれていて、確かに獣形だとそんなに喜怒哀楽が表情に出ないよねとくすっとさせられました。

同じように顔が緩んでしまったのは、偉い人たちの設定画に何度も繰り返し、アニメで動かしやすいように線や柄を整理しました、現場でもっと省略してくださいといったことが書かれていたことです。
身分の高さをたっぷりの布地とたくさんの装飾品で表す世界なので、偉い人になるほど作画コストが上がりますもんね。
そうやってアニメ化に寄り添いつつも、碧霞玄君の横には一番偉い人だから「頑張って」と書いてあって、かなり口角が上がってしまいました。
ちび泰麒や更夜、夕暉といった少年キャラの書き分けや、黄姑や遠甫といった高齢の矍鑠とした様子についての書き込みも興味深かったです。

全体的に、アニメは小説の挿絵よりも等身が下がってるのかなと感じました。
そのせいか、桓魋や虎嘯の全身像にはかすかな違和感がありました。
NHKで見て以来、随分長い間、アニメを見ていないせいかもしれません。


ギャラリー中央の空間には様々なグッズが並べられていました。
他の会場ではグッズ売り場は別に設営されていて撮影可のところもありましたが、名古屋は作品と同一空間にあり撮影不可だったのが残念でした。
美麗なグッズの数々に、山田先生の画力とともに作品世界を形にする企画力を見せつけられた思いです。

中でも見応えがあったのがブローチです。
まるで古代中国の遺跡から掘り出されたような雰囲気のある佇まいに射抜かれました。

ブローチの中でも饕餮が好き。


3月22日に丸善丸の内本店で始まった原画展は、名古屋は7月22日まで。
そのあと岡山シンフォニービル店で7月31日〜8月12日、仙台アエル店8月17日〜27日と続きます。


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この記事に出てきた『十二国記』登場人物のよみ

【陽子】ようこ ようし (【達姐】たっき)
【楽俊】らくしゅん
【碧霞玄君】へきか げんくん
【泰麒】たいき
【更夜】こうや
【夕暉】せっき
【黄姑】こうこ
【遠甫】えんほ
【桓魋】かんたい
【虎嘯】こしょう
【饕餮】とうてつ …登場人物かな?


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