― 「ところかまわずナスかじり」第百八十九話 寝室えてぃけっとぉ ―
女性が寝室で絶対に言ってはいけない言葉はいくつかあるが、次の二つは特に「厳禁」の域に入る。
・「おつかれさま」
・「いまのうちだよ、やる」
どれも俺が実際に言われたことがあり、こうして書いているとその日の怒りと悲しみが思い出され、ペン先が震える。
まず、「お疲れさま!」である。
いや、これに関して何も言うことはあるまい。言われた俺が、そして、そんなことを言う女と寝室をともにした俺が悪いと言えばそれまでである。
― お疲れ様 ―
日常的にこの言葉を耳にする場所はやはり職場であろう。
仕事を先に終えて帰る同僚にかける、残業中の彼の(彼女の)部下へのねぎらいの言葉である。
与えられた仕事に対して、本人の全力が尽くされたと思われたときにかけられる上司からのねぎらいの言葉である。
寝室で聞く言葉ではあるまい。
まして、その「お疲れ」の対象は俺である。
そう、「おつかれさま」と言われた瞬間、俺は彼女の部下だったことを知ったのである。
ラブホテルでのオナニーが俺の仕返しであった・・・
― いまのうちだよ、やる ―
「今のうちだよ。やる?」と言った彼女は数日後に子宮内腫瘍の手術を控えていた。
わかる。彼女がそう言った訳はよく分かっている。
彼女は男の習性をよく知っている。特に俺のように性欲の旺盛な男を好きになった女の取れる少ない選択肢の一つが、自分の体を差し出すこと、であろう。
俺は、「今のうちだよ。やる?」と言われてすぐに彼女と別れた。
俺は「やる」ことを与えられるような人間ではないからだ。「やる」のは俺が「やりたい」からやるのだ。
相手が近日手術だろうが、死にかけてようが、死んでようが、男だろうが、動物だろうが一緒だ。
実にわがままなチンコを持っている俺様なのである。
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