― 第十六話 社長室にて ―

(ガチャッ)

男「うわー、広いなぁ!」

不動産屋「そうでしょうとも、そうでしょうとも。だってあなた、社長室ですよ。」

男「そうですよねぇ!いやー、さすが社長室だよなぁ!あ!あれは、なんですか?」

不動産屋「ん?あぁ、あれは先日アマゾンから取り寄せたモノでございますよ。まだ学会にも発表されてない鳥でございましてね。つい先日、現地で発見されたばかりのヤツでございます。」

男「へえぇぇ!さすが社長室だなぁ!」

不動産屋「当然ですが、不法に輸入したものでございますよ。ほっほっほっ。」

男「すげぇ!・・・んん?こ、この長机の足はもしかして!」

不動産屋「お客様、さすが、お目が高い!よくお気づきになられましたね。この足、100%、象牙でございます。鼻につく言い方で私は好きではないのですが、そうですねぇ、時価にして三億円は下らないと思いますよ。まぁ、こちらも当然、見つかればお縄を頂戴するお品物でございますが。」

男「へぇぇ!すげぇ!」

(バタンッ!)

女「イラッシャーイ!!シャチョーサン!!チチモムカ?」


男「うわっ!ビックリした!な、なんですか、この女性は?!

不動産屋「ははぁ、お客様。失礼ですが、夜のお活動はあまりなさらないのですかな?」

男「いやぁ、まぁ、キャバクラくらいは・・・。」

不動産屋「キャバクラ?・・・フフ。まぁ、そうですねぇ、世の社長さんのなかでもご奇特なお方であればキャバクラ通いをなさるお方もいらっしゃると聞いてはおりますが、9割9分の社長様はふぃりぃぴんぱぶでございましょうね。」

男「ふ、ふぃりぃぴんぱぶ?はぁ・・・。そんなものですかね。」

不動産屋「そうでございますとも。それも、東京のふぃりぃぴんぱぶなんか、妙に垢抜けしちゃっておりますので、今の人気は山形の過疎地『小国町』産のふぃりぃぴんぱぶが一番でございます。彼女はそのなかでも、土臭さナンバーワン、ドロシーでございます。」

男「ド、ドロシー・・・」

不動産屋「そうでございます。『ドロシー』でございますよ、お客様!白菜の香がほんのり漂ってくるような気がしますでしょ?ほーっほっほっほ。」

男「あぁ、はぁ。・・・ん、ちょっと僕、トイレに行きたくなったんですけど。」

不動産「あぁ、お手洗いでございましたら、この建物を出て、すぐ前の大通りを右手に曲がっていただいて、10分ほど、歩いたところにあるファミリーマートにございます。」

男「え?!ウソでしょう?!」

不動産屋「いえいえ、決して嘘ではございません。私もいつもそちらを利用させてもらっておりますよ。あの、ウォシュレットと言うんですか、あれが私は大好きでございましてね。お客様もきっとお気に召されると思いますよ。」

男「あのー、念のためお聞きしますが・・・」

不動産屋「はい、はい。何でもお尋ねくださいませ。」

男「あのぉ、お、お風呂は・・・」

不動産屋「お風呂?!まあ!お~っほっほっほ!お客様もご冗談がお上手でございますね。おーほっほっほ!社長なだけに『フロー(苦労)する』ということでございますね。これは金五郎、一本取られました!ほぉっほほほ!」

男「は、ははは・・・。そーですよね!あ、あるわけないですよね。」

不動産屋「ああ、お腹が痛い。・・・それではお客様、こちらがご契約書でございます。今回はちょうどキャンペーン期間中でございますので、ドロシーの十日間の貸し出しが無料でございます。」

男「えっ?と、10日もですか?」

不動産屋「はい、左様でございます。」

ドロシー「オイ、マタサワルカ!」

不動産屋「いやー、お客様はお若いですし、将来ご有望。会社もさぞご発展なさることでございましょうな!」

男「いやー、そ、そんなことないっすよ。それよりも、と、10日かぁ・・・。ははは。」

ドロシー「シャチョー、シャネルデネルカ!」

不動産屋「いやー、お若いのにお客様はお目が高い。社長室にぴったりでございますよ。ほーほっほっほ。」

ドロシー「カマズニノムカ!シャチョー!」

不動産屋「ほぉっほっほっほ。」

ドロシー「ニツケニツケルカ!シャチョー!!」

不動産屋「ほぉっほっほっほぉ~!」

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