何も言えなくて...真冬 #キナリ杯

何も言えなくて...真冬 
未成年が内緒で同棲してたら相手の親に凸された話

ぎんぎらぎんにさりげなくぅ~さりげなくぅ~それがお~れのやり方あぁ♪
ぎんぎらぎんにさりげなくぅ、さりげなくぅ~生きるだけさあ〜♪

ぼ~っと何時間もテレビを観ていた。サザエさん、クイズ番組、ビルマの竪琴なる映画が終わり、昭和の名曲を素人がアレンジする番組が始まった。

「ギンギラギンにさりげなく」近藤真彦さん。
当時の大ヒット曲だ。

最近は滅多に聴くこともなくなった曲、そんな曲にまつわる、ギンギラギンにさりげなく生きれなかったお話を今日は1つ。

19歳の時に1個下の子と同棲してた、親に内緒で。

同じ大学(千葉県)の1、2年生でお互い1人暮らしだったので、彼女の家にすっかり住んでた俺。
一緒にアメリカンショートヘア(ネコね)も飼ってた。
アメショーは頭いいし、かわいい。
彼女よりもネコに惚れてた笑。

ある冬の朝、
向こうの母親が突然来訪!

前の晩、実家(彼女は雪国出身)に変な℡が来たとかで、翌朝、新幹線に乗って東北からお母さま、現る!!
なんて勘の良さ!そして、なんて行動力!!

寝てる俺ら。大学生の朝は遅い。

ぴんぽ~ん♪
「....?」
誰だ、こんな朝っぱらから。
ぴんぽ~ん♪
「...誰やねん」
ぴぴぴぴ!ぴんぽ~ん!(連打、殺意入ってる)

がちゃがちゃ...(ドアを開ける音)

俺「誰!?ドア開けようとしてんだけど!!!」
彼女「まさか...ああ!お母さんだ!はうあ!(青冷めた顔)」
血の気一気に引く&目、完全に覚める俺。

母様「開けなさい!開けなさい、OO子!(怒)」
ドアをガンガンやられる冬のAM6時!

「にゃ~」
ネコ鳴く。
にゃーじゃねえ、泣きたいのはこっち、俺と代わってくれ!
ネコになりたかった、真冬の朝!

俺、裸。彼女、裸。笑

しゃれにならん!

裸のまま、部屋の中を走り回る俺ら!
回る回る!
マンガみたいだが、マジでぐるぐる走りまわった。
パニックになると本当にマンガみたいな事が起こる。

唯一助かったのは、合鍵で開けられても、
ドアロック(チェーンみたいなやつね)は内側からしか外せなかったこと。
ドア5センチぐらいだけ開いてロック。
そこから怒号!

パンツ探す俺。必死!(超笑える、他人なら)
心臓ばくばく!当たり前だっての!

ドアからの声
「...1時間したら戻ります。それまでに身なりを整えていなさい。(すんげえ冷たい声)」

「ひぃ~!」
いや言ってない。声にならない声をあげる。

学生の本分は勉強ですから!
俺の単位と彼女の出席日数の関係で、速攻、大学に逃げる。

光速(光を一瞬越えたかも)で走る。寒さ感じない。先輩待って!と言う彼女の声もガン無視して走る。鬼畜だ。学校が田舎の方なので、スクールバスに乗る。

最早半分意識ありません。

無事(?)学校着いて授業を受ける俺ら。
勿論、頭になんも入らん。

心理学の授業だったかな?
死にかけてる俺の心理を研究してくれ!
(授業中はず~っと俺と彼女の生きる道を探してました)

そんな道あるかあ!

無事(?)授業が終わり、彼女と俺と後輩の女の子で帰る。帰りのバスの中で、後輩のコと話す俺。

「OO子(彼女)に聞きましたよ~オレ先輩やばくないですか?」
(明らかに面白がってる女)
「もう覚悟してるけどねえ、(してない、虚勢です)」
「あとで、メールするよ、結果をね...つうか、一緒に来てよ!」
「いやですよ!余計、話ややこしくなりますよ!」
「そりゃあそうだ。(うらめしい顔で)じゃあ、生きてたらメールするよ」
「御願いします!」(超嬉しそう)

俺は携帯だったけど、高校出たての彼女はまだピッチだった(PHSね、懐かしいね)学校は圏外。
駅に近づくと、彼女のピッチのアンテナが立つ。

すかさず...
着メロ「ギンギラギンにさりげなくぅ~♪」
いやウソ、こんな着メロした18歳いるわけねえ。

すかさず...
ピリリリィ~♪

「はい、もしもし。うん、うん、わかった、は~い」
やけにアカルイ口調なので、他の人からか?と甘い期待。
「誰?おかあさんだよね?なんだって?」

「うん、隣の男に『逃げるなよ』って伝えなさいって」

「あ、そう、あはは^ ^」
笑うしかない。ビター通り越して最早辛い。
血の気がひく俺、しかしこのスリルを楽しみ始めた俺。
この辺で「生きる道」を完全に見失う。

彼女と家に向かう。心臓ばくばくパート2。
「いつもより余計に回っております~♪」
今日は心臓を酷使しております。
いっそ、今殺してくれ!

玄関前で、とりあえず踊ってみる。
どうしていいかわからん場合はとりあえず踊る
足がくがくパート1。

「先輩何してんの?」
「いや、...ラストダンスをね」

ぴんぽ~ん♪

「ただいまあ~(アカルイ彼女)」
「た、ただい....お邪魔します(暗黒面入りかけな俺)」
一瞬ただいまと言いそうになり戒める。

ここは戦場!ここはアウェイ!
生きて日本に帰るんだ!
頑張れニッポン!
(注 千葉県は日本です)

とりあえず日本を背負ったところで視線感じる先を見る。

長めの廊下の突きあたり、引き戸は完全に開かれそこに炬燵がありネコがくつろいでいる。
そして、背筋をビッと正し、正座してこっちを見ているお母さま。

眼光するどい。

靴を脱ぎ、ふと横を見る。

半透明のゴミ袋(特大)が置かれてる。
さりげなく..ではなく、思いっきり置かれてる。

中身は俺の服や茶碗などぎっしり。
洗濯途中の濡れたパンツとかも。

中見える、半透明ゆえに(笑)

「あなたの荷物を全てまとめておきました」
「...どうも」
とりあえず、お礼を言う俺。なんでやねん!

心の声「わああ~嬉しい~荷物まとまってるうぅ~あはは、、
なわけあるかあ!!」
心理分析。恐らく正気を保とうとしています。
もしくは逃避です。

部屋に入る俺と彼女。
正座を崩さないお母様。

そして、お母様がいきなり...

「カツオ!」

またまた宿題を忘れてしまった磯野カツオは姉であるサザエによって「痛いよねえさん耳が三枚に卸されちゃうよ」の刑にされる。
見兼ねたサザエの夫マスオは、何とかカツオを助け出そうとある疑問を投げかける。
それは「わかめの髪型は絶対おかしい、後頭部が気になって夜も眠れない」だった。

それを受けたサザエは「いや、おかしいのは『ちゃ~ん』ってセリフだけで、ギャラが発生してること」と、ある役柄の声優を告訴すると言い出す。

「どうせなら、主演女優である私のギャラをあげろ!好きでおサカナ咥えたドラネコ裸足で追っかけたり、蟹みたいな頭してる訳じゃない」と
所属事務所に向かうサザエであった。

はい、長い!逃避終了。すみません。
では改めて、

心の声「わああ~嬉しい~荷物まとまってるうぅ~あはは、、 
なわけあるかあ!!」
心理分析。ループにより正気を保とうとしています。もしくは逃避です。

半透明だし、エコロジーだよね!
地球に優しいよ!
でも可笑しいよね!?
俺の心には全然優しくないよ!

部屋に入る彼女と俺。
正座を崩さないおおおお、おか、お母様。
今更震える俺の手。キー、ちゃんと打てん。

いきなりお母様が、一言。
「2人ともそこに座りなさい(冷たい声、重圧レベル2)」
勿論、正座で座る。
スイッチの入ってる炬燵だが、なぜか寒い。
心拍数は上昇中。
目の前のお方の眼光や声が冷たいからか?!

炬燵に座ってほんのちょっと、少しだけ、落ち着いた俺の目に、炬燵の上に置かれた2つのものが目に入る。(毛細血管死滅)

瞬間、『終わった』と思った。

有り難う、みんな!
俺はみんながいたからここまで来れた!
みんなのこと忘れないよ。
いやここまでって言うか、炬燵まで来ただけ。
ただいまの記録、玄関より5メートル。
立派だよね!

危うく気を失いそうになった。
俺のスイッチ切れる。それぐらいの衝撃。

炬燵の上に載ってたものは2つ。
ひとつは『黒のメモ帳』

もうひとつは、

『コン○ーム』
近藤さんとやばせて戴きます、さりげなくね笑

しかも中身入ってない..つまり使用した後の外の四角い銀のビニールのみ。...
目が釘付けとはこのこと、絶句。しばらく近藤さんを見つめてた。

なぜ君はそこにいるんだい?そこは君の場所じゃないよ!こっちへおいで!一緒に日本に帰ろう!

ちっっくしょ~!!!
全然さりげなくねえよ!
超ぎんぎらぎんだよ!

死んだ。
なんでそんなもんが?
ゴミ箱の中もチェックされたのか...?
偶然か?
見つかるなよ!
自己主張が強すぎるよ近藤さん!

息ほぼ止まる俺。
俺が唖然としていると、お母様が、
ツイーっと、机の上のメモ帳をおしだす。
そして、

「実家の住所、電話番号、あなたと両親のお名前を書きなさい!」

こえ~!冗談じゃないぜ!
お助けマンいないのかよ!
これはないよね?みんな!

...人生、肝心な時はいつも独りさ。
そのマッチの..いやピンチの中でどう最後まで足掻けるか、それで次が決まる!

俺のスイッチが、入った。

「どういったことでしょうか?書く理由がわかりません!」
ツイー!とメモを押し返す。
「あなたがどこの誰なのか聞いてるんです!怒」
ツィー!すぐ戻ってくる手帳。
「答えるのは構いませんが、口で説明できます!」
「あなたの実家に電話してどうこうしょうってんじゃないの!あなたが何者か聞いてるんです!怒」

「ツィー!」
ツイーは言わなくていいんだよ?先輩。
あ、そっか、ごめん笑

ちょっと落ち着いて同じセリフを言う。
「...書いても構いませんが、口で説明出来ます。」
本当は構う!大いに構う!当たり前だ!

「じゃあ説明してみなさい」
「はい」

ではここで洗濯、いや選択問題です。
俺はなんと言ったでしょう。

①「娘さんとは、プラトニックラブです(テヘペロッ)」
②「娘さんとは、たまたま偶然一緒に(裸で)ここにいただけです。いやあ偶然て恐ろしいですね」
③「娘さんとは一年生のサークルの新歓で出会いました」

選択肢①を選んだ方、多分殺されますね。近藤さんの存在を忘れないで下さい。
選択肢②を選んだ方、絶対殺されますね。近藤さんの存在を忘れないで下さい。めちゃめちゃ存在感あります。だって芸能人ですから。

勿論、③です、おいら。命惜しいもん。

「自分は同じ大学の2年のオレと言います。スノーボード&オールラウンドサークルの部長やってます。娘さんはうちに入って下さって、それで知り合いました」敢えて柔らかめの敬語。
敬意を払いつつ警戒を解く手段を選択。

俺のスイッチが入ってるからか、お母様落ち着き始める。

モード、好青年だ。

今朝、裸足どころか裸で走り回ってた俺は好青年モードへと変わった。まさにスイッチ!
因みに、さっきまでは全力少年、その前は脱力少年だ。
そんなスキマスイッチはただいま絶賛点灯中!

「あんた、スノーボードなんて出来るの?体育の成績イマイチだったじゃないの」
「大丈夫だよ~頑張るもん」
「俺、教えますから^^」

つかの間の休息。
しかし、近藤さんの存在がこれをかき消す。
なんでまだそこにいるねん、おまえ!
水島!(誰?)この野郎!
どさくさにまぎれてゴミ箱へ帰れ!
ゴムに話かける19歳、真冬、何もかも不毛だ。

「ところであなた、おうちはあるの?」
「はい、あります。隣の駅で一人暮らししてます」
ちょい落ち着いたのもつかの間、今度は家なき子呼ばわりだ。

全力少年はひとつ間違えると家なき子になるらしい。

説明を続ける、モード好青年。
「実は、将来は塾講師になろうと思ってます。もしくは教師に」
お母様の顔の変化を見逃さない俺。

「なので、学校が終わったら、勉強のためにアルバイトで二つの塾に行ってまして、そのあと、彼女に会うもので、僕の家は遠いので、塾帰りに寄っていたのが、だんだん泊まっていくようになって、、こういう状況に、、すみません」

嘘ではないのだが、ちょっと心が痛んだ。

お母様微笑む。

しかし、ヤツの存在は消えない。
芸能人の輝きは未知数。まるで星のよう。
ぎんぎらぎんに輝く、近藤さん。泣。

お母様キレだす。
「でも、こういうことをするのは、早いと思うの!」
「こういうのは本当の恋愛じゃないって私は思います!」
付き合ったコのお母様に泣かれたのはこの時だけ。

確かに「それは古い」とか「アオクサイ」とかちょっと思ったよ。
でも、気持ち解らなくもない。
言葉に詰まる。

その後、
近日中に家に戻るってことで、解決。
大変だった。
親父さんは退学させろと言ってたって話だし。

この後のやりとりは省略します。
生きる道を発見したしさ。

落ち着いたところで、俺はトイレへ。
そのちょい前くらいで、隣に住んでるコが帰ってきたようで、コンポの音がかすかに聞こえる。スピッツ、ミスチル、大事manブラザーズバンド、J-WALK、、

トイレに入って、ここである大事なことに気づく。隣の部屋からは、大事manブラザーズバンドの「それが大事」が流れてる。
「それが~いちばんだいじぃ~♪」

朝、焦ってたからねえ。

...パンツ裏返し!!笑

「それがあ~いちばんだいじぃ~♪」
パンツ確かに大事だけど、てか、こちとら大惨事だったわ。

その後、「ロビンソン」「Tomorrow NeverKnows」「なにも言えなくて 夏」と名曲はつづく。

「大きな力で空に浮かべたら、ううらあ~宇宙の風にのる~♪」

さっきまで(お母様の)大きな力で宇宙の風どころか塵になるところだった俺。
そして確かにトゥモロウ~はネバーノーズだ。 

ナイスな選曲だよ、お隣りコンポ!

そわそわが完全には消えないが、俺は長いトイレを出た。

ふざけた感じで書いてるけど、本当に死ぬかと思ったあの冬の日。
もう日本に帰れないかと思ったあの日。(いやずっと日本)
古い思い出。

その後、彼女とは、卒業後1年もせずに別れちゃったし、会ってもいないけど、今でも幸せを願ってる。

お母様も。

以上です。

そして、この話を近藤さんに(さりげなく)捧ぐ!
ツィー!



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