文構造は宗教
高校で英語を教えていると、やたらと「文構造」と言われます。読解の時は「文構造」をしっかり教えないと読解力がつかない、とか。生徒はわからない文があると「文構造がわからない」と言います(ずっと文構造を教わってるからね)。
でも、英語を読む、高校の場合は特に入試の読解問題を読むときに文構造の理解が必要かずっと疑問に思ってます。
今教えている教科書にこんな文がありました。
In Japanese cooking, it has been a tradition to use ingredients with five flavors and five colors, and prepare them by using five methods.
で、生徒にこんな問題を出してみました。「上の文の訳として正しいものは?」
A. 日本料理では、五味五色の食材を使い,5つの方法を使うことで調理するのが伝統である。
B. 弁当に五味五色の食材を使い,5つの方法を使うことで調理するのは、それが伝統だからである。
98%の生徒がAと答えました。まぁそうなるよう誘導してるわけですが、いずれにせよ、この文の意味はわかっている(わかった)わけです。
で、こういう問題をその後に聞きました。
it has been a traditionのitは何を指すか?
A) Japanese cooking B) the bento C) the tradition
D) to use ingredients with five flavors and five colors, and prepare them by using five methods.
すると正解のD)を選んだ生徒は15%しかいなかった。
先生は「文構造がわからないと文の意味が正確にとれない」と言います。でも、この結果を見ると「文の意味が正確にとれても、文構造がわからない」ということになります。
文の意味が正確に取れれば、大学入試の長文読解は大丈夫(なはず)なので、文構造なんていらねくね?
と思うわけさ。もう1つ、同じレッスンにこんな文がありました。
A bento generally contains rice plus several other items with various seasonings, and they are all packed into a box. It’s a colorful, well-balanced meal that follows the traditions of washoku.
太字にした文のitは当然、a bentoなんですけど、これ意味を考える前に「文構造」を分析すると、「強調構文」にもなりますよね。
これは学校採用定番の文法参考書ですが、これに従えば、
A colorful, well-balanced meal follows the traditions of washoku.
の a colorful, well-balanced meal を強調するために、it とthatを入れて強調構文にしたものが上の文ってことですよね。
でも、強調構文の意味(「和食の伝統に従っているのは色彩豊かで栄養バランスのいい食事である」)にとると文章を読んでいておかしいことになる。あ、「この場合は不定冠詞がついているから強調構文にとるのはおかしい」といかいう突込みはなしですよ。それは「意味」に属する問題だから。言いたいのは「強調構文という文構造だとわかるのは意味がわかるからであって、強調構文という文構造がわかるから意味がわかるということではない」ってこと。
つまり読解(=つまり意味をとる)するために文構造の分析は「それほど」必要ではないのではないか、と思ってるわけ。
なので、生徒に「文構造がわからないと文章が読めるようにはならない」というのは害のが大きいと思いますけどね。
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