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「時空犯」を読んで          (異質へのアプローチが面白い)

チュンソフトのサウンドノベルやスパイク・チュンソフトの極限脱出シリーズを思い出した。このようなアドベンチャーゲームを彷彿させる小説であった。

時空が歪んでいるという条件のなか、探偵が論理的に謎を解くことは、
もちろん読み応えあるが、それよりも、異質なものを理解するためのアプローチの説明が一番印象に残った。謎解きよりも読む価値があったと思っている。

自分と異なるものを理解するためには、自分が変わり、異なるものに近づく必要がある。ただ、変わることが受け入れられないのであれば、理解を諦めるしかない。変化を拒むなら異質なものとは断絶することが共生の道である。「他を変えれば良いのでは」と思うかもしれないが、異質なものを自分と同質なものに変えれば、それは、もう異質なものではない。異質を理解したことにはならない。浪費家の知り合いを倹約家に変えても、浪費家の気持ちは理解できない。倹約家である自分が浪費家になる必要がある。

この本は、「時空が歪んでいるという特殊条件での謎解き」と「異質を理解する試み」に興味のあるかたにお薦めである。

出版社:講談社 作者:塩谷 験 タイトル:時空犯 
令和4年6月24日 読了