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閻魔堂沙羅の推理奇譚6、7を読んで(テンポの良い推理小説が読みたい人にお勧め)

 このシリーズは、1話完結の短編または中編小説である。死んだ人に対して天国か地獄かを判断する閻魔大王代理の閻魔堂沙羅と死んで復活する各話毎の主人公を中心とする物語である。起承転結もパターン化している。

 起:主人公の悩みや人間関係が描かれる。
 承:主人公が何者かに殺される。
 転:沙羅が主人公に、生き返りたかったら自分が死んだ謎を解きなさいと
   提案し、主人公が推理する。
 結:主人公の推理が成功し、主人公が生き返り、今までと違う生き方が始   まる。

 推理に失敗するエピソードもあるが、だいたいこの流れである。作中で推理する時間は10分以内と制限されており、ページ数にしても20から30ページと謎解きパートも軽快に読むことができる。答えもすぐに教えてくれるうえに、難しいトリックなんてほとんどなく、非常にテンポ良く読みやすい。各話のタイトルも良い。「新山律子41歳デザイナー死因刺殺」というように、主人公の名前、年齢、職業、死因がただ記載される。

 今回読んだシリーズ6冊目と7冊目は、両方ともに親子関係をテーマにした内容であった。どちらの物語も、楽して金を得ることしか考えず努力しない親が登場する。6冊目は、そんな親の娘が主人公で、7冊目は、そんな親が主人公だった。どちらの主人公も死んで推理することで、家族の気持ちに気づく。そして、少し生まれ変わって生き返る。
 ネタバレになるので、あまり内容に触れないが、7冊目の沙羅が放つ言葉が非常に印象的だった。
 「人間なんてもともとの脳の性能が良くない、IQ180も120もどんぐりの背比くらべで、私から見たらどっちもバカです。人間は日々努力するかどうかで人生が決まる(抜粋)」 
 
 僕は、選択した行動により物語が変化するゲームが好きである。特に、選択肢によって死者数や犯人が変化するミステリーゲームが好きである。こっちを選択したら「どうなるのかなあ」とかを考えながら物語を進めていくことが好きである。この小説も一回死ぬけど生き返って行動を改めることで、そのあとの人生が変化する。このゲーム的な感覚が好きである。だから、このシリーズは、結構好きである。しかし、残念ながら2020年9月発売の7冊目が現時点の最新となっている。ぜひ続刊も期待したいところである。
 
 なんにせよ。手軽で面白い小説なので、ちょっとした時間にライトなミステリーを楽しみたい人におすすめです。