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私を見つける② 【愛情の器】


~人材募集~

面接官:この面接は受けたことありますか?

応募者:いいえ

面接官:では、まずは仕事の内容からお伝えします。これは簡単な仕事ではありません、とても重要な仕事です。役職は現場総監督です。でも実際はこの役にとどまりません。仕事上の責任はとても広範囲です。あなたが任される役職はとても流動的です。さらにほぼ全ての時間、立って作業します。立ち仕事と屈んだ姿勢で作業し、とても体力を必要とします。

応募者:はい・・・大変そうですね。何時間くらいですか?

面接官:週に135時間かそれ以上、基本的に週7日24時間に近いです。休憩時間はほとんどありません。

応募者:それは合法ですか!?

面接官:もちろんです。

応募者:ランチは取れますか?

面接官:ランチは全ての同僚が食べ終わった後です。

応募者:いや、それはちょっとひどいのでは?

面接官:この職位は交渉力と交際力が求められます。そして私たちが必要としているのは医学と金融学と営養学に通じている人です。複数の役職を兼任することが求められます。常に周りに注意を払い、時には同僚と徹夜ということも。本当に大変な仕事なのであなたの私的な時間はほぼ取れないでしょう。クリスマスやお正月などは通常業務以上に忙しくなります。とてもやりがいのある仕事です。

応募者:笑えない冗談のような話ですね・・・そんなの認められないし、おかしいです!!

面接官:これは本当に価値ある仕事です。ですが、あなたが作る人間関係や同僚のためにとしたことはお金に換算されません。あなたがこの役職で得られる給料は0です。

応募者:今、なんて?ただ働きってこと!?

面接官:ボランティアのような感じで完全無給です。

応募者:そんなの、ありえない!!

面接官:ではもし現実に、この職に今もまさに就いている人がいると言ったら?数十億人くらい。

応募者:まさか、誰ですか?

面接官:・・・お母さんです。


私はこの面接を受けずに気づいたらこの職に就いていました。

まさに現場総監督。責任はとても広範囲で流動的。交渉力も交際力も多大に必要です。

出産後は仕事を辞めて専業主婦になった私は、まだ小さくて手のかかる我が子に身も心も翻弄され、やらなくてはならないことも、やりたいことも何もできずに一日が終わっていく空しさ、仕事もしていない自分が社会からも遠く、お金を生み出すことなくただただ生産性のない日々が過ぎていくような感覚がありました。

それでも、長男が生まれてからの数年は可愛いだけで悩みもなく毎日を自分のペースで楽しんでいました。

それが弟の誕生を機に長男が豹変。

赤ちゃん返りもひどく、2人をベビーバスでお風呂に入れ、自分でできていた着替えや食事も全部やってと泣き叫ぶ。

幼稚園の担任の先生とも何度も面談していただき、「愛情の器の大きさはその子によって違う。おちょこでもいっぱいな子もいれば、どんぶりでも足りない子もいる」と言われ、着替えや食事も赤ちゃんのようにお世話し、長男と2人の時間、オイルマッサージなど私なりにできる限り努力したものの、それでもそれでもな長男に悩み、次男が動き始める月齢になると突きとばす、叩く、噛みつく、ひっかくなど弟への暴力的な行動が増し、トイレに行くのも気が気ではないくらい。

叱ってばかりの自分、長男の怒り声と次男の泣き声に正直ウンザリし、叱っても優しく言い聞かせてもどうにも手に負えない長男の口から「弟なんかお空に帰れ!!」「弟なんか生まれてこなければよかった!!」と言われたときには涙がボロボロとこぼれました。


そんな中、次男の生後半年で夫は転勤になり単身で神戸へ。

いっぱいいっぱいの毎日で、久しぶりに帰省する夫にも自分が怒った顔しか見せていない気がして、夫が赴任先へもどった夜には自己嫌悪の涙を流し、昼間はただただ怒涛の毎日が過ぎていきました。

この子の器の底には穴が開いているのか?

それとも私が注いでいると思っているポットからは何も出ていないのか?

いずれにせよ、未だ満たされることのない長男の器。

そして私も長女ゆえ、どこかにある妹への羨望感は上の子の宿命だろうか。


つづく・・・次回もまだまだ続く子育て暗黒期を書いていきます。

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