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ふたつの“森永”を背負って

日本における西洋菓子のパイオニアとして、1918年に国内で初めてカカオ豆から一貫製造によるチョコレートの製造を開始した森永製菓。その傘下にある森永商事は、1973年の創立以来、森永製菓の経験と技術を活かし、高品質で使いやすいプロのためのチョコレート原料づくりに尽力してきた。

原料メーカーとして、そして日本を代表するお菓子ブランドの看板を背負うグループの一員として。森永商事が背負う“ふたつの使命”について、代表取締役を務める吉川洋一社長に話を聞いた。

「まず第一に、私たちは原料メーカーです。ですから、そのまま食べて美味しいだけでは通用しません。例えばケーキの場合、つくるものにもよりますが、チョコレートの使用量は全体の一割程度になることが殆ど。他の素材と合わせるので存在感は当然薄まります。それは、原料である以上絶対に忘れてはいけない大前提です。
その上でいかに周りと調和し、いかに個性を発揮できるか。一歩間違えば過度な主張で他の素材を邪魔してしまったり、あるいは存在感を消してしまうことだってあり得ます。ですが、それでは選んでもらえないんですよ。これを踏まえて私たちは、“一番食べてほしいところだけを表現する”ということを念頭に置いた製品開発を行なっています」

余計な香りや雑味を削ぎ取り、伝えたい味のコアをストレートに表現する。それが、森永商事の“軸”なのだという。一方、森永製菓というバッググラウンドについてはどのように考えているのだろうか。

「森永という社名は、老若男女問わず認知いただいている国民的ブランドであり、無形の資産でもあります。それは1年や2年で構築できるものではなく、創業から120年かけて諸先輩方が築いてこられた大切な価値です。
そして今ここにいる私たちには、彼らからバトンを受け取った者としてその価値を次の世代につなぐというミッションがあります。ですからブランドに傷をつけるようなことがあってはならないんですよ。コーポレートだろうがプロダクトだろうが、つくるのは大変ですが壊すのは一瞬です。その辺りの重みはすごく感じますね。

…と言ってもやはり私たち自身は原料メーカーですから、名前が生活者に伝わることはそう多くありません。パティスリーのケーキにチョコレートの名前が明記されるケースは多くありませんし、そこまで意識して食べる生活者はまだごく一部のはずです。そういう意味では、生活者が直接口にする最終製品をつくる森永製菓とはやはり多少なり視点は違うと思います」

その前提を踏まえた上で、ふたつの”森永”を背負うグループの一員として肝に銘じていることがあるという。

「『森永なら美味しい』『森永なら安心』。その信頼だけは、裏切れないですね」

森永製菓 鶴見工場内に設置された創業者・森永太一郎像


森永商事
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