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農家とお茶屋の距離

日本有数のお茶処として知られる、福岡県八女市星野村の「星野製茶園」で専務取締役を務める山口真也さんと、元部下であり現在は福岡市を拠点にお茶の魅力発信を行っている田代亮平さんが語る「星野製茶園」のお茶づくり。インタビュー後編では、お茶づくりからお茶屋と農家の関係づくりにまで話が広がった。(聞き手:田代亮平/語り手:山口真也)

▼インタビュー前編はこちら▼

ー勤めていた頃、星野製茶園は農家さんとの関係性がすごく良いなと感じていました。以前からずっとそうなのでしょうか?

星野製茶園は元々お茶農家で、周りの農家さんからお茶を集めて徐々に茶商へと移行した経緯があります。だけど始めたばかりの頃はなかなか思うようにお茶が集められなくて、一軒ずつ農家さんを訪ねてはお茶を分けてもらっていた時代もあった。その時から皆さんすごく力を貸してくれてるし、今の若い世代にも思いは引き継がれてるんじゃないかな。

ー普段のコミュニケーションもそうですし、定期的に村全体でお茶の勉強会を開いたり、とても良いネットワークができてるなと感じていました。

「農家とお茶屋の壁は厚い」っていうのは昔から通説として言われ続けてきて、実際各々が個人プレーに徹してしまってる地域もあると聞きます。だけど良いお茶づくりをする上でそこの関係ってすごく大事なこと。

そもそも、市場の声を拾い上げて農家さんにフィードバックし、その後の栽培に活かすのがお茶屋の基本的な役目でしょう。たとえば新しい品種が手に入ったとして、それをすぐに農家さんへ回すと、もしあまりよくない品種だった場合そこから何十年とその品種をつくり続けないといけなくなる。彼らを苦しませることになってしまいます。

だからこそ星野製茶園では自社内に畑を持って事前にテストを行います。テストをして、良いと思えたものだけを農家さんに託すことでみんな安心して仕事ができるようになるんですよ。
年によっては茶葉の出来が良くないこともあります。だけど農家さんが一年かけて大切に育ててくれた努力は認めないといけない。認めた上で、どこがどう悪かったかをきちんと説明して納得してもらえるような力量がお茶屋には必要なんです。村全体でうまくバトンを受け渡しながら、産地を守っていけたらな…と。

農家さんと協力した上で、作り手としての私たちが考えているのは常に「凡事徹底」。いいものをちゃんとした形で安定的に提供することがまず第一で、その上で新しい品種の開発も進めて産地の魅力を伝えていきたい。そうして産地を守っていきたいと思っています。