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チョコレートの過去と現在。どうする未来。

カカオ生産者はチョコレートの味を知らない、と言われることがあります。カカオがチョコレートになるまでには多くの工程と人が関わり、出来上がる頃には生産者の遥か遠くに行ってしまうことが、その理由のひとつです。

西アフリカや東南アジア、中南米を主な原産国とするカカオは、収穫し発酵と乾燥を行った後に、欧州はじめ世界中の製造工場へと送られます。

半年以上にも及ぶ長い船旅を終え工場に着いたカカオは、ロースト、ブレンド、コンチングなど様々な工程を経てチョコレートとなり、シェフや製菓メーカーの手で加工されます。しかしこうして完成したチョコレート製品を、生産者が口にすることは現状ほぼありません。

チョコレートを食べた経験のない生産者たちがカカオに求めるのは美味しさではなく、たくさん実をつける病気に強い種であること。それはつまり、お金になるカカオを育てたいということです。

カカオ生産量世界第1位のコートジボワールで2018年に実施された調査によると、同国で不自由なく生活できる収入を得ている生産者はたったの7%で、その他58%は極度の貧困状態にあるといいます。親の代から貧困が続き、カカオ生産の知識や技術指導の機会にも恵まれないこれらの農園では、カカオの収穫量が十分に得られず、家族全員の生活を支えるだけの収入も得られません。この状況は、コートジボワールに続く第2位の生産量を誇る隣国ガーナでもほとんど変わらないといいます。

また、世界のカカオ生産のうち90%は小規模農園によるもの。貧困状態にある農園では、自らの子どもを労働力として動員せざるを得ません。彼らの細い腕に課せられる仕事にはリスクを伴うものが多く、たとえば刃渡りの大きな鉈(なた)を使った開墾や草刈り、収穫物の頭上運搬などがその代表として挙げられます。特に子どもの力だけでは持ち上げることのできない重い荷物を頭の上に乗せて運ぶ行為は、健全な成長を妨げにもつながる危険なものです。

さらに、学習環境の不整備により基礎的な学習スキルを身につけることができず、生涯にわたって人生の選択肢を狭められてしまう子どもたちは今なお数多く存在します。2020年にシカゴ大学が発表したレポートによると、18歳未満の児童労働者はコートジボワールとガーナだけでも156万人に上ります。
しかしこれらはほんの一部、氷山の一角にしか過ぎず、カカオの生産をめぐって各国では依然として厳しい状況が続いています。

チョコレートの現状に目を向けてほしい、そう声を挙げるつくり手が増えてきました。
生産者、メーカー、問屋、シェフ、消費者。大勢の人が関わって成り立つものだからこそ、今やもう誰かひとりの力でどうにかなるものではないのだと、彼らは言います。
知ることは、この世界に刻まれた食のシステムを変えるアクションの第一歩となるはずです。
美味しいチョコレートとは何か。一人一人が関心を持ち、想像することで、未来は少しずつ豊かになっていくのではないでしょうか。


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