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消費者と価値観を共有する。

今や世界中どこにいても簡単に情報にアクセスできる時代。しかし暮らす国や周囲の環境によって、得られる情報の質や量には結局のところ差が生じるという現実も否めない。

たとえばフランスと日本のパティシエでは、カカオに関する情報量ひとつとってもかなりの違いがあるという。世界各国の世界材料を取り扱い、つくり手と使い手との間を行き来する第二走者としてひた走る商社、サンエイト貿易商品管理本部長の小川裕一郎さんはこう話す。

「良いカカオはどうしてもヨーロッパへ回り、手にできる知識にも雲泥の差がある。サステナブルを謳う商品でも、それを選ぶことがどんな未来につながるのか、そのような認識にも大きな差があると思います」

企業単位ではフードロスやSDGsへの取り組みは進んでいるが、個人店で取り組んでいるところはまだごく僅か。

「その差を埋めるのが、我々の使命です。昨年(2020年)からマーケティング課を開設しました。味だけではない。その味がどういう動きで実現されているのか。背景を伝えられたら」

そんな彼らが目下挑むのは、消費者からの共感、という価値提案だ。

「私たちは13年前にフランスのオーガニックフェアトレードチョコレート、KAOKAを初めてプロに販路開拓し、原種の保護や途上国との格差是正など、製菓材料選びの新しい視点を提唱してきました。
そうしてKAOKAの思想をシェフたちに伝えることで、次にシェフがつくるお菓子を通じて、サステナブルな食の在り方に関心の高い消費者へKAOKAに対する共感を促す。共感した消費者は、それを材料に使うパティスリーをさらに支持する。そんな循環をつくれれば、KAOKAを使う意義をシェフたちにもっと感じてもらえると考えています」

そのために、サンエイト貿易ではパティスリーに並べるKAOKAのリーフレットの製作や、KAOKAの紹介サイトに誘導するQRコード付きタブレットチョコレートを商品化。シェフたちをサポートしながら、KAOKAを“伝える手段”を多様化させている。

土壌を守る、ロスを減らす、輸送コストや保管のエネルギー効率を下げる、消費者と価値観を共有する・・・おいしさのその先に、使い手が目を向けるべき価値はまだたくさんある。それがサンエイト貿易の考え方だ。

彼らは決して製菓材料だけを供給しているのではない。未来につながる大切な価値を、シェフたちに提供し続けているのだ。