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つくり手の情熱を、使い手に届ける。

1993年に設立されたフランスのオーガニックチョコレートメーカー、KAOKA。その創業者であるアンドレ・ドゥベール氏は、環境と生産者に配慮したチョコレートづくりに情熱を掲げる現場主義者で、農薬・化学肥料不使用、土壌を回復させながらカカオを栽培する森林農法を用い、いかなる非常時にもカカオを買い支え、カカオ生産者から絶大なる信頼を置かれていた。

しかし農家に寄り添うあまり、その情熱は商売には注がれず、当初KAOKAが扱っていたのは小売用チョコレートのみであった。

そんな彼らのチョコレートづくりへの情熱に魅せられた日本の商社、サンエイト貿易の創業者は、KAOKAに業務用チョコレートの製造を提案。KAOKAはそのオファーを受け入れ、コインタイプの製造及びオーガニック認証の充填工場を探索し、2008年に日本で販売を開始した。

だが、発売当初の売れ行きは決して順調ではなかったという。

特に日本の市場においてチョコレートは滑らかさ、口溶けの良さを求められる。カカオバターの追油が少なく、頑なにカカオの味を生かす製法を採るKAOKAのチョコレートはテクスチャーが物足りないという声もあった。さらに“オーガニック=高くておいしくない”というイメージも根強く、またプロのパティシエたちにとってフェアトレードがどのような価値となり得るのか、当時の市場は理解も薄かった。

そこでサンエイト貿易では、KAOKAを選ぶことの真の価値を目に見える形で伝える活動に着手する。企画したのはパティシエたちのエクアドルのカカオ農園ツアー。当時としては画期的な試みだった。

1番右がKAOKA2代目社長、ギー・ドゥベールさん。右から3番目が小川さん。
KAOKAのチョコレートで作った自分のお菓子を農園の生産者に手渡すパティシエ。

ツアーは2006年からほぼ毎年継続し、延べ62名のシェフが参加。なかには、農園で出会った「将来はカカオの生産者になりたい」という少年の思いに感銘を受け、彼の成長をできるだけ長く支えられるようにとKAOKAのチョコレートを仕入れ始めたシェフもいた。そのチョコレートは店の定番商品に採用され、今日まで継続的に使われている。

安全性や味は前提で、そこから先が問われる時代。サンエイト貿易は、つくり手と使い手との間を行き来し、これからも製菓材料選びの新たな視点を提唱し続ける。