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「日本人がつくった日本人のためのチョコレート」と個人店の仕入れにまつわる視点

茨城県つくば市のパティスリー「ラ リヴィエ ドゥ サーヴル」代表の植﨑義明氏は、現在店で出すケーキの大半に森永商事が手がけるクーベルチュールシリーズ「ショコラマニュファクチュール」を使用している。

かつては同社にチョコレートテクニカルアドバイザーとして在籍し、シリーズ内の2作(「フェルモ」と「セレニティ」)の監修役も務めたという植﨑代表にとって、このチョコレートの魅力とは一体なんだろうか。

ラ・リヴィエ・ドゥ・サーブルの人気商品、その名も「ガトーフェルモ」

「日本人がつくった日本人のためのチョコレート、っていうのは僕がショコラマニュファクチュールを他人に説明する時よく言いますね。フルーツ、ナッツ、コーヒー、紅茶。何にでも寄り添える協調性はすごく日本人的、だけど個々の個性も程よくあって、すごく使いやすいチョコレートだなと思います。

たとえば酸味の個性が強いチョコレートの場合、芋栗カボチャなどデンプン質のものと合わせるのが非常に難しい。なぜなら、デンプン質のものって痛むと酸っぱくなるんですよ。酸味の強いチョコレートと合わせてしまうと、食べた人に腐敗に近い印象を持たれやすいんです。
なので、個性が突出したチョコレートの場合は他の素材と組み合わせたりせず、単一で、できるだけそのままに近い状態で食べるのがベスト。製菓材料としてのチョコレートとは活きるポイントが違うんじゃないか、というのが僕の考えです。

その点、何にでも合わせやすいチョコレートっていうのは文字通り万能で、さらに言えばうちのような個人店にとっては大きな強みになります。たとえば20種類のケーキをつくろうと思った時に、使うチョコレートの個性が強すぎるとケーキごとにチョコレートを何種類も使い分けないといけなくなる。そうするとバックヤードには膨大な量のチョコレートのストックが必要になります。それって実質不可能なんですよね。

「ラ リヴィエ ドゥ サーブル」店舗外観

一方で、酸味を少し足せば柑橘系とあわせやすくなったり、糖分を足せばコーヒーや紅茶とも相性の良いチョコレートってすごく付き合いやすい。それひとつでいろんな方向に枝分かれさせられるチョコレートのほうが、言ってしまえば楽なんです。
それも、『ショコラマニュファクチュール』の場合はちょっと手を加えるだけでまったく違う味わいが何通りもつくれる。それが僕に撮っては一番の魅力ですね」