2023.07.21「ジャニーズ問題から考える」(5) ビジネスと人権の観点から 蔵元左近・日本国弁護士、米国ニューヨーク州弁護士
・国連「ビジネスと人権」指導原則 →2011年国連人権理事会での全会一致による支持(日本含む各国がこれを元に法律やガイドラインを作成、これに反対する政府や企業は常識はずれ)
・人権方針の策定
→企業は自分達のビジネスの中で人権を保護する方針を打ち立てる必要あり。役員社員だけでなく、ビジネスの関係者皆の人権を守る。 →なんらかの問題があれば、自社の体制を整備せよ。
・人権デュー・ディリジェンス
→ビジネスの中で人権上の問題が発生しているか監査 →企業の内部だけに関わらずサービスに直接関係する人権上のリスクを監査、また継続的に監査 →第三者の行為が直接の原因であっても「影響力の行使」をする →対策として取引関係の停止は「最後の手段」
被害者の人権保護を考えると関係を断ち切ることで企業を守るのでなく、被害者にとって何が大事か考えて動くことが優先。取引停止しては影響力を行使できなくなる。
・救済(苦情処理)メカニズム
→ステークホルダー全般が対象、独立した専門家が関与し問題の実効的解決
ジャニーズの問題について、テレビ局など取引先はどういう責任を負っていてどういう対応をすべきか。また、どういう被害を受けているのか、どう救済されるべきかについて、自社が引き起こしていないにしろ、適切に影響力を行使していく必要がある。
Q.ジャニーズ事務所が再発防止特別チームを設置、ただし独立性はない。チームの結論を出したらそれに従えばいいのか?
A.適切な対策を出し、実行する可能性もあるが、個人的には独立性・中立性が十分でない。人権侵害の甚だしい問題なので、忖度のない&社会的に信頼を含めて厳しいことを言うか不安。
Q.テレビ局とスポンサー等取引先企業はどう動くべきか?
A.適正な影響力を行使して、人権侵害問題を改善されるように、体制の整備の意味でも厳しく要請する必要がある。特にテレビ局は不十分。
『子供が稼ぐ=大人が子供に対して抑圧的になりやすい、ハラスメントが発生しやすいビジネスモデル』
契約期間が満了になったから更新しない(従来のリスクマネジメントの観点であり昔ながら)→被害者については影響力の行使ではない、働く場所がなくなってしまう。むしろ不適切な行為となる。
短期的でなく、長期的な視点ではテレビ局がジャニーズ事務所を本当のビジネスパートナーと思っているなら、厳しいことを言ってあげるべき(これは個人的な心情論でもあるが…)
Q.今後被害の訴えが特定されたとき、救済措置は課題になるが、テレビ局等にもアプローチは必要か?
A.各社の経営判断だが、一般論では被害人数も多く、性被害は年数が経っているからと言ってすぐに解消される問題ではないので、相応の救済は必要。対応策としては、被害者のための基金創設。
ジャニーズ事務所のタレントに何らかのサポートが必要と考えるのなら、各社の判断であり法的な責任はないが、あり得ると思う。
Q.人権方針を掲げているジャニーズCMを取り扱う企業が行うべきこととは?
A.プライバシーを守った上での徹底的調査、第三者委員会ガイドラインに則った独立性の高い委員会を設置すべき。ビジネスモデルとして、子供の被害が発生しやすい。二度と発生しないよう、通報体制など整備を要請すべき。
Q.国連人権理事会の調査について
A.本件は歴史的、各国同様事件と比較しても重大な人権侵害である。十分な対策をしないと納得が得られない。なんとなくやり過ごせばいい問題とは思えない。海外視点を無視しては日本企業は成り立たない。
Q.契約解消はしないことはかえって今の状態を許してしまうのでは?
A.確かにだが、ビジネス上の関係があるからジャニーズ事務所へ厳しいことを苦しいながらもプレッシャーをかけつつ申し入れする。1社でなく、複数のグループで共同ステートメントを発信することで、受け入れる可能性が高まる。例えば、契約期間は満了しそうだが、1度は更新する。ただし、改善条件を提示して改善させていく。
Q.日本全体の国際批判を尊重しない傾向について
A.日本政府がビジネスと人権に関する法規制をすれば良いが、政府内で議論している最中。あえて言うなら、企業自身が自発的にコンセプトに則って行動することが求められる。個人としては消費者として購買している企業に声を届ける必要がある。
Q.ハリウッドやブロードウェイ等での子供の芸能活動ではどのような対策が取られているのか?
A.日本だけが問題ある社会ではないが、米欧州の方が問題について解決策を取る傾向にある。子供への性的加害が起きないように、ホットラインの整備がされている、強力なNGOが批判をする等