見出し画像

半導体について 〜設計から製造までのプロセス〜 ⑥ウェハー加工 3工程編

どうも、おらうです!
今回は半導体 
①エッチング
②ドーピング(イオン注入)
③メタライゼーション

についてまとめました。

*本記事は全て無料でお読みいただけますので、ご安心ください☺️

本作はシリーズ物となり、以下は前回分となります。
半導体への理解が進むかと思いますので、こちらもご活用ください😄



①エッチング

概要

エッチングは、半導体ウェハー上の特定の部分を選択的に除去するプロセスです。
これにより、トランジスタや配線などの微細な構造を形成することができます。

前工程の光リソグラフィによってフォトレジストに回路のパターンが形成された後、エッチングを使用し、不要な部分を除去する事で、その回路をウェハー上に浮かび上がらせます。

富士山と桜(回路のパターン)、黒色(エッチングで除去した部分)

エッチングを『切り絵』で例えると分かりやすいですね。
欲しい絵(画像:富士山と桜)を浮かび上がらせるために、余分な所をエッチングで切り取る(画像:黒色部分)イメージですね🤔


エッチングの種類

エッチングには主に2種類あります。

①ウェットエッチング:
特徴:

化学薬品を使用して材料を溶かし、除去する方法。
設備投資が少なく、プロセスが比較的シンプル。大量生産に適している場合が多い。
コスト面では、化学薬品は比較的安価であり、装置自体もドライエッチングに比べてシンプルで安価。
消耗品としての薬品コストが主な費用。

②ドライエッチング:
特徴:

プラズマを使用して材料を物理的に削除する方法。
非常に高い精度と解像度を実現可能。
細かいパターンや深いアスペクト比のエッチングに適している。
コスト面では、高価な真空装置やプラズマ生成装置が必要で、設備投資が大きくなる。
プロセス制御は複雑で、操作や保守にも高度な技術が求められる。

前回でも触れたEUVリソグラフィでは、ドライエッチングが適していると言えますね😊


重要性

①パターン形成:
光リソグラフィによってウェハー上に形成されたパターンをエッチングにより余計な部分を取り除く事で、実際の物理的構造に変換することが出来ます。

②微細加工:
エッチングにより、非常に細かい構造を半導体ウェハー上に形成することができます。
これは、トランジスタやその他の電子デバイスの製造に不可欠です。

③精度の向上:
ドライエッチングは特に、高い精度での加工を可能にし、微細化が進む現代の半導体デバイス製造に不可欠です。

エッチングが無いと、半導体ウェハー上に微細な回路パターンを形成することが出来なくなってしまいます。
これにより、トランジスタやコンデンサなどの基本構成要素を正確に配置・製造することが不可能となり、デバイスの性能低下や集積度の低下を招いてしまいます🤔


加工手順

今回はドライエッチングのプラズマでの例を挙げさせていただきます☺️

①チャンバーの準備
シリコンウェハは真空チャンバー内に配置され、エッチングプロセス中、一定の真空状態に保たれます。

②ガスの導入
エッチングに必要な特定のガスがチャンバーに導入され、プラズマ状態にするために、高周波の電力でイオン化されます。

③プラズマの生成
ガス分子がイオンと自由電子に分離し、高エネルギーのプラズマ状態が形成されます。

④エッチング反応
プラズマ中のイオンがウェハ表面に加速され、フォトレジストで保護されていないシリコンの部分に衝突します。
これにより、不必要なシリコンが化学的に反応してガス状の副産物として除去されます。
プラズマのイオンは非常に正確に制御されるため、非常に微細な構造のエッチングが可能です。

⑤副産物の排出
反応で生成されたガス状の副産物は真空ポンプを通じてチャンバーから排出されます。


市場規模

市場規模2023年のグローバルエッチング市場の規模は約90億ドル(約1兆3500億円)で、2030年までには約145億ドル(約2兆1750億円)に達すると予測されています。
年平均成長率(CAGR)5.7%で成長する見込みとなります。
PCやスマートフォン関連、自動車などの産業の電子化進展により、今後も安定した成長が見込まれます。
また、この市場の拡大は、特にアジア太平洋地域の半導体製造能力の増強と密接に関連しています。

技術動向としてはドライエッチング技術、特にプラズマエッチングが主流を占めています。
さらに、原子層エッチング(ALE)が精密な材料除去が求められる最新のアプリケーションに適用され始めています。
(Global Etching Market Report 2023 by Grand View Research)


代表企業

①Applied Materials(AMAT)
アメリカに本社を置く、世界最大の半導体装置メーカーの一つです。
同社のエッチングシステムはAI組み込みプロセス制御技術により、ナノスケールの精度で半導体デバイス製造を可能にします。
高い柔軟性とアップグレード能力も同社の特徴です。

②Lam Research(LRCX)
アメリカに本社を置く企業で、エッチングと薄膜沈着装置の供給において業界をリードしています。
同社の技術は、高い選択性と低ダメージレベルで知られ、特に3Dトランジスタ製造に不可欠です。

③東京エレクトロン(8035)
日本に本社を置く半導体装置メーカーで、プラズマエッチング装置市場において高いシェアを誇ります。
T同社の装置は、高精度とプロセスユニフォーミティが強みで、顧客の厳しい製造要求に応える技術を提供しています。

エッチング装置のはこの3社で約90%のシェアを占めると言われています🧐



次、形成された回路パターンに電気特性を与えるためのドーピング(イオン注入)について解説させていただきます☺️

②ドーピング(イオン注入)

概要

ドーピングとは、半導体材料にわずかな不純物を添加することで材料の電気的性質を変化させる技術です。
イオン注入はその方法の一つで、高エネルギーのイオンビームを半導体ウェハーに照射し、特定の不純物(ドーパント)を半導体の格子内に埋め込む技術です。
これにより、半導体の導電性を付加することができます。

🤯

ドーピング(イオン注入)によって、半導体ウェハーに電気が流れるような特性(導電性)を持たせると言うことですね🤔

そもそも、この工程前の半導体ウェハーには電気が流れにくいんですね。
知らなんだ🤯

重要性

ドーピングにより、半導体デバイスの基本的な特性を決定します。
これにより、デバイスのオン(導電)/オフ(絶縁)の状態を制御することが可能になるため、デジタル回路やアナログ回路の構築が可能になります。
また、ドーピングレベル(不純物の濃度)を変えることで、半導体デバイスの動作速度や効率を最適化できます。

ドーピングの工程が無いと、そもそも電気が流せなくて、半導体自体が機能しないという事ですね🤔

加工手順

①前処理
ウェハーの表面を洗浄し、不純物を除去します。

②イオン注入
特定のエネルギーと用量でイオンビームをウェハーに照射します。
使用されるイオンビームは加速器で生成されます。

③アニーリング(焼き戻し)
イオンが注入された後、半導体の結晶組織が欠陥が生じてしまいます。
そこで、高温でウェハーを加熱する事で、イオン注入によるダメージの修復を行います。

④後処理
再び洗浄して表面を清潔にし、必要に応じて化学的または物理的な研磨を行い、ウェハーの品質を保ちます。


市場規模

半導体製造工程のドーピング(イオン注入)市場は、2023年時点で約18億ドル(約2700億円)とされており、2030年までの期間に年平均成長率(CAGR)6.57%で成長し、約28億1000万ドル(約4兆2151億円)に成長していると予測されています。

この市場拡大は、特に中国、韓国、台湾などアジア太平洋地域が主導しており、技術の進歩や電子機器への需要の増加が原動力となっています。
この地域は、スキルを持つ労働力や先進的な製造施設が豊富であり、半導体や電子部品の生産拡大につながっています。

市場の成長を後押しする産業として、自動車やIoT(モノのインターネット)、消費者向け電子機器などがあります。
これらの分野では、より高性能でエネルギー効率の良い半導体が求められており、イオン注入技術の精度が重要な役割を果たしています。
(Cognitive Market Research)


代表企業

①Applied Materials(AMAT)
アメリカに本社を置く、世界最大の半導体装置メーカーの一つです。
高電流、中電流、高エネルギーのイオン注入機やプラズマドーピング技術を利用したシステムを通じて、半導体チップの製造における複雑な要求に対応しています。

②Axcelis Technologies(ACLS)
アメリカに本社を置く、半導体製造装置の設計、製造、およびサービスを提供する企業です。
イオン注入技術の分野で知られ、特にそのPurionシリーズのイオン注入装置が市場で高い評価を受けています。

③ULVAC(6728)
ULVACは日本に本社を置く、真空技術製品の製造におけるリーダーであり、半導体製造にも必要な様々な装置やシステムを提供しています。



最後は、メタライゼーションになります。
ドーピング(イオン注入)で電気が流れるようになった半導体ウェハーに、実際に電気を通すための金属配線を形成していきます。
それがメタライゼーションになります。

もう少しお付き合い下さい☺️

③メタライゼーション

概要

メタライゼーションは、半導体ウェハー上に金属層を形成するプロセスです。
この金属層は電気的接続を提供し、ウェハー上の個々のデバイスを外部の回路と電気的に接続することで、回路全体が機能するようにします。

その他にもメタライゼーションにより、
デバイス間での信号の伝送を可能にしたり、デバイスから発生する熱を効果的に分散させることができます。

通常、このプロセスにはアルミニウムや銅が使用されますが、時にはタングステンやチタンなどの他の金属も使用されることがあります。

メタライゼーションを『道路』で例えると、
街に設計された道路(ドーピングされた領域)を、大きな高速道路(外部の電子回路)に接続する役割を持っています。
メタライゼーションによって金属層が形成され、これが大きな高速道路への入り口や出口のように機能します。
この金属層がなければ、小さな道路がどれだけうまく設計されていても、人々は大きな都市(外部の電子機器)へと効率的に移動することができません。

重要性

①電気的接続の提供:チップ上の部品を外部回路に接続し、デバイス全体の機能を可能にします。
信号の整合性と速度の向上:安定して高速な信号伝送を確保し、効率的なデータ処理を支えます。
熱管理:デバイスからの熱を効果的に分散させ、過熱による損傷のリスクを減少させます。

そもそも論、もしメタライゼーションが無くなってしまうと、以下のことが起きてしまいます。
①機能不全:電子部品が外部と電気的に接続されず、デバイスが動作しなくなります。
信号の問題:信号が不安定になり、データエラーや通信の遅延が頻発します。
過熱問題:熱が適切に処理されず、デバイスが過熱しやすくなり、故障する可能性が高まります。

加工手順

バリア層の形成
メタライゼーションの前に、バリア層がウェハー表面に蒸着またはスパッタリングされることがあります。
この層は、後に施される金属層とシリコン基板との間の反応を防ぐために重要です。

②金属層の蒸着またはスパッタリング
ウェハーの表面に金属を蒸着する主要な手法には、物理的蒸着(PVD)、化学蒸着(CVD)、電気めっきなどがあります。
アルミニウムや銅が一般的に使用される金属で、このステップでは、ウェハー表面に一定の厚さの金属層が形成されます。

③フォトリソグラフィ
金属層の上にフォトレジスト(感光性材料)を塗布し、紫外線を使って特定のパターンを露光します。
露光されたエリアは、後のエッチングプロセスで除去されるため、希望の配線パターンを形成します。

④エッチング
露光されたフォトレジストを通じて金属層をエッチングします。
このプロセスにより、不要な金属部分が除去され、必要な配線パターンだけが残ります。

⑤フォトレジストの除去
エッチング後、フォトレジストを除去します。これにより、最終的な金属配線パターンが明らかになります。

⑥最終検査
ウェハー全体が最終的なクリーニングプロセスを経て、品質検査と機能テストが行われます。
この検査は、製造プロセスの各ステップで想定される基準を満たしていることを確認するために重要です。


市場規模

半導体メタライゼーション市場は、現在及び将来にわたって成長が見込まれる分野です。
2024年から2031年の間に、この市場はさらなる拡大が予測されています。
主な推進力は、自動車、医療、産業、消費者電子機器などの分野からの需要増です。
これらの分野では技術革新が進んでおり、新しいアプリケーションへの半導体メタライゼーション技術の統合が進展しています。

また、市場の成長を後押しする産業としては、自動車産業が特に注目されています。
自動車の電子化が進む中、半導体の需要が高まり、それに伴いメタライゼーションの必要性も増しています。
また、消費者電子機器分野でも、スマートフォンやパソコンなどの製品において高性能化が進むことで、高度なメタライゼーション技術が求められています。

地域については、2024年の市場規模は過去のデータと比較して増加が見込まれており、その後も成長が続くと予測されています。
特に、アジア太平洋地域が市場の重要な地域として位置付けられており、中国、日本、韓国、インドが市場成長の主要な推進力となっています。
(Cognitive Market Research / Global Market Vision)


代表企業

①Applied Materials(AMAT)
アメリカに本社を置、、PVD、CVD、電気めっきを含む半導体パッケージング技術の最大の供給業者であり、シンガポールにある先進パッケージング開発センターで幅広い技術を提供しています。
同社は、ダイとウェハのハイブリッドボンディング技術の開発を加速するための革新的なソリューションを導入し、業界の技術進歩をリードしています

②Lam Research(LRCX)
アメリカに本社を置く企業で、特にエッチング、物理気相成長(PVD)、化学気相成長(CVD)などのプロセス技術において業界をリードしています。
製造プロセスの革新を通じて半導体業界の効率向上と技術進歩を支えています。
その高度な技術と広範なアプリケーションを提供することで、半導体デバイスの性能向上に貢献しており、特に複雑な半導体デバイスの製造における要求に応えるための技術を開発しています。


以上となります!
如何でしたでしょうか?
また次回お会いしましょう☺️


お読みいただきありがとうございました!
良いね
と思ったら、好きまたはフォロー、をしていただけると凄く励みになります☺️

また、「面白かった」「ためになった」「次回も期待してる」と思っていただけたら、ご支援いただけますと、
非常に嬉しいです😄

ここから先は

0字

¥ 100

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?