やってみらんと分からん 第1話

あんたもったいなか

地元大学の工学部を卒業して、地場のオフィス家具メーカーK社に就職した。

もっと先の話をすれば、その会社も1年で辞めた。兄弟3人の末っ子をなんとか大学に送り出した親からすれば怒りを通り越して草生える気持ちだったのは想像にたやすい。

大学時代は朝からパチンコ屋に並び、とにかく1日1日をコインに全集中していた私に与えられた就職先は地場企業1社だけだった。
就職活動をしたくなかった私にはそれでもありがたかった。

K社に入ってすぐ工場勤務に就いた。その日も、私は与えられた作業着と鉄板の入った冷たい作業靴に着替えて朝7時50分からの社員全員参加のラジオ体操に参加していた。

ラジオ体操の歌にまぎれて、パートのおばちゃんから「あんたもったなかね」といきなり声をかけられた。私に工場の仕事を教えてくれていたおばちゃんである。

確かに一日中、鉄板を機械に突っ込んで曲げる作業や部品を手で数えるだけの仕事はツラかった。

工場勤務していた人たちは、みんな優しい人たちばかりだったけれど会社には不満を持っていた。
工場でリフトを動かすのが上手なおじさんも「社員の俺の給料アップいくらか教えてやろうか? 1年で1000円ばい!」と私の少ないやる気をキレイに削いでくれた。

工場勤務半年、営業半年、合わせて1年で誰の役に立つこともなくK社をあとにした。




あ、ちょうどよかった。ちょっとそこのハートマークを押してくれるかな。 ん?画面下のハートだ。赤くなった? おぉありがとう。 神のご加護があらんことを。