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決算数値から見る清水エスパルスの足取り(その6) -2016~2019年度-

今回は、2016年度~2019年度に焦点を当てます。この期間は、左伴前社長の時代です。その改革の足取りを追ってみます。

1 2016~2019年度の出来事

前回で触れたとおり、2016年度でJ1昇格を果たしました。
2017年は、小林監督続投でJ1を戦いますが、最終節で残留を確定するという厳しいシーズンとなり、小林監督は退任することになってしまいました。

2018年は、久米一正氏がGMとしてエスパルスに復帰。ヨンソン氏を監督に招聘しての船出となりました。夏の移籍期間で久米GMの強い意向でドウグラスを獲得。そのドウグラスが北川の能力を覚醒させ、リーグ屈指のツートップとして無双する活躍で、近年では最高位の8位となりました。
一方で、悲しいことにも久米GMが11月に逝去されました。

2016~2019年度 成績推移

2019年は、ヨンソン監督が続投。前年の好成績を受けての期待のスタートとなるばすでした。しかし、ドウグラスの病気療養での出遅れなどにより5月12日時点で17位という低迷でクラブは監督交代に動き、篠田コーチを監督に昇格させてのリスタートとなりました。
天皇杯ではベスト4まで勝ち進みましたが、リーグ戦は苦戦を強いられ、最終節での勝利で12位となったものの、大混戦の残留争いの中で薄氷の残留ではありました。
このオフ、左伴前社長が電撃退任となってしまいました。

2 注目すべき決算数値

(1)営業収益、スポンサー収入等の更なる伸長

2015年に就任しした左伴前社長の経営改革で収益を伸ばしましたが、目標としていた40億円台に遂に到達し、2019年には約43億円まで伸長します。
左伴前社長就任前の2014年が約32億円ですから、約11億円も積上げたことになります。これだけでも凄い営業努力が成されたかが分かります。

2016~2019年度 営業収益、スポンサー収入推移

この伸長を支えたのはスポンサー収入であるのは言うまでもありません。2019年には20億円の手前まで伸ばしています。2014年対比では約4億円増となっています。
もう一つ見ておきたいデータがあります。下図はサポーターズミーティングで示されたパートナー(スポンサー)社数です。

2014~2018年度 パートナー社数推移

パートナー社数が2014年の226社から「483社」と倍増。新規契約数も2015年以後で述べ「300社」近くです。驚異的な数字ではないでしょうか。
左伴前社長が「大営業本部」と組織改称してまで注力していた成果とクラブの努力の跡がはっきりと伺えます。

パートナー社数を増やすことは、他の狙いがあると聞いたことがあります。
鈴与グルーブに大きく依存していたものを、裾野を広げてより多くのパートナーに支えられる構図にしたかった。万一、大黒柱の鈴与の業績が悪化したとしても、その影響を小さく抑えるという危機管理を狙ったものと。

また、パートナー企業の業種の多様性が進めば、異業種交流などで新たなビジネスチャンスの創出が期待でき、パートナーであることの付加価値が高まる。エスパルスがそのハブの役割を担うという狙いもあったとも聞いています。

(2)入場料、物販収入

入場料収入も伸長を見せています。2019年は約7億円に到達しています。
物販は約4億円。この表には記載していませんが2015年が2億円台でしたので倍近くの伸長です。

2016~2019年度 入場料収入ほか推移

実は、左伴前社長とお話しをさせていただいた機会があり、この辺りのことを次のように語っていました。
「入場料や物販が伸びているというのは、単に(観戦して楽しむ)観客としてではなく、クラブのことを「自分事」として捉える人が増えている証ですね。特にユニフォーム販売が伸びるということは正にその現れと思います。」

我々が「お布施」と称して、シーズンシートチケットやユニフォームを買うのは、正にこのことでしょう。
この数値の伸長の裏には、降格という経験を経て、クラブを我々サポーターが支えるんだという意識が更に強くなったかなと私は思います。

(3)トップチーム人件費

トップチーム人件費は、J2時代の2016年の減少を除くと、ほぼ順調に伸ばして約17~18億円に達しています。2014年と対比すると約4億円も伸ばしています。
ただし、注目する点として、2018年で当期純利益がマイナス256百万円を計上しています。これは、ドウグラスを赤字覚悟で獲得したことの現れのようです。
この辺りのことは、サポーターズミーティングで左伴前社長が語っていましたが、久米GMの強いリクエストだったとも。久米GMの置き土産が開花した2018年でした。

2016~2019年度 トップチーム人件費等推移

いずれにしても、お金を稼いで、トップチーム人件費に注ぎ込むという構図をしっかり描いていたことが伺えますし、過去の経営から脱却して今のエスパルスの基礎、基盤となるものを築いていたと思います。

しかし、戦果として確実に現れたのは、2018年のリーグ8位と、2019年の天皇杯ベスト4という結果でした。
J1のトップチーム人件費平均値が25億円であるように、左伴前社長らクラブが弛まぬ営業努力を続けたものの、強豪クラブと水を開けられてしまっていたのかもしれません。
その点で、2014年以前の負のスパイラルが無ければと悔まれてなりません。

3 まとめ

▶左伴前社長の指揮で進めた経営改革で収益が大幅に向上
▶パートナー企業の数も大幅に増やし、収益の柱となるスポンサー料が大きく伸長
▶収益増を背景にトップチーム人件費も伸長
▶一方で戦果は、トップ5入を狙ったクラブとしての期待値よりも低い結果となってしまった

4 雑感 

この期間での戦果は期待よりも低かったのは残念ではありました。
しかし、左伴前社長が清水に来なかったら、エスパルスはJ2の漂流民になっていたかもしれない。いや、今の大宮のようにJ3まで落ちた可能性もあったかもしれないと。左伴前社長の貢献度は非常に大きかったと私は思います。

また、せっかく復帰した久米GMが生きておられたのなら、もう少し違っていたのかもと思えてなりません。
「経営の左伴、強化の久米」という強い両翼で羽ばたくエスバルスの姿を見たかったものです。

次回は、2020年度から2022年度の山室社長の時代をフォーカスします。



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