BPSDは心のサイン!?

こんにちは。
今介護業界では、「BPSD」に対しての見直しに
力を入れています。

「BPSD」とは、一昔前は「問題行動」と言われていました。

理由もなくウロウロ歩き回ったり、
何時間もタンスを漁ったり、同じ質問を何度もしたり、
中には排出物を触ったり食べてしまったりなんてこともあります。

「え、それって思いっきり"問題行動"でしょ?」

と思う方、実際に今ご家族でそういう方が居る方に
是非知ってもらいたいこの"BPSD"について、
私の体験談を踏まえて書いていきたいと思います。
少し長くなってしまいましたが、読んで頂けたら幸いです。

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私はグループホーム勤務です。
少し前に勤務している所を移動することになりました。
その移動したての頃の話です。

「今日はいつ頃帰れる?」

不安そうな顔をして、
何度も尋ねて来られる70代の女性がいました。
スタッフに様子を聞いてみると、

「あぁ、Sさんね...。
ここに入居してまだ3ヵ月くらいしか経ってなくて、
慣れない場所で落ち着かないみたいなんです。
トイレに何度も行かれるし、
昼食後以降ずっと帰りたいって言われるんです。
パズルやレクもあまり楽しめないようだし、
どうすればいいのか...。」

様子を見ていると、
確かに何度もトイレに行かれていました。
2分おきに行かれる時もあり、
「Sさん、今行ったばかりですよ?」
と聞いてみても、
「そお?でも行きたいもん。」
と苦笑いをしてお腹をさすりながらトイレに行かれるSさん。
もしかしたら膀胱炎や腸炎かな?と思い、
ご家族の方に話し、検査を受けに行って頂きました。

結果、異常なし。

しかしSさんの頻尿は治らない。
排尿の確認をすると、
「出なかった」ということも多々ありました。

そして昼食が終わると

「私そろそろ帰らなあかんのやけど...」

と、不安そうなSさん。
夕方になるにつれ、不安が高まり
何度も何度も席を立ってはスタッフの元へ来て帰宅の確認。

「Sさん、今日はここに泊まってくださいね。」
「んー、でも娘が心配やもんで...」
「娘さんに頼まれているので大丈夫ですよ。」
「あ、そうなの?それならいいね...。」

というやりとりを1時間に10回くらいしていました。

これではSさんが辛いだけだと思い、
なんとか改善策はないかとまずは情報収集を行いました。

とりあえず、一番身近なご家族からの情報。


家族構成は、娘が二人、息子が一人。
そのうち次女が障がいを持っている。
なので今は長女が次女と生活している状況で、
息子は離れて暮らしている。
旦那は若い頃に事故で亡くなってしまい、
家事と仕事に追われながら暮らしていたとのこと。


ふむふむ。なるほど。
これだけでも少しSさんのことが見えてきました。

翌日からSさんができることや
得意なことを見つけようと、色々試してみました。


「Sさん、もし良ければ一緒に食器洗いをしませんか?」
「はい、いいですよ!」


二つ返事でOKして頂きました。
利用者さんに洗ってもらって私がすすぐ、という流れでやっていくと、大抵洗い残しがあるものですが、
Sさんの場合とっても綺麗に洗ってあります。
洗い方を見てみても、スポンジで細かくゴシゴシゴシゴシ...
こびりついた汚れは親指の爪でガリガリガリ...


「Sさん食器洗うの上手ですね!」
「そう?私いっつもやっとったもん。」

と、笑顔を見せてくれました。

「9人分もあるのでひとりでやるの大変なんですよー、
またお願いしてもいいですか?」
「もちろん!いつでも呼んでよー!」

あんなに不安な顔しか見られなかったSさんから
こんな満面の笑みが見られるなんて大感激!
(こういう時が介護職の楽しいところです)


しかし、次にフロアの掃除機掛けを頼んだところ、

「どこやったらいいね?」
「ここのお部屋を全体的にやってもらって、
向こうの廊下までお願いします。」
「分かりました。」

少しすると、
「えっと、ごめん、どこやったらいいね?」
「今ここやってもらったので、次こっちです」
「あ、はい。」

また少しすると、
「うーん、っと、ごめん、どこやったらいいね?」
「あ、あとここだけです!よろしくお願いします!」
「はい、分かりました。」


短期記憶全然ないやーん!
仕方ない、こういうものだ。仕方ない。

次にモップがけをSさんのお部屋だけやって頂くよう
お願いをして、少し経った頃に覗いてみると、

ベッドに座ってる...。

「Sさーん、終わりました?」
「あ、はい!ここの部屋だけやりましたよ!」
「ありがとうございます!少し休んでてくださいね。」
「本当?ごめんね、また何かあったら言ってね。」

後日、食器洗いをしながら、

「Sさんってもしかして、掃除はあまり得意じゃないですか?」
「そうなのよー。私料理とかこういことの方が好きなの。」
「え!じゃあ今度料理手伝ってくださいよー!」
「いいよー!なんでもやるよ!」

ということで、料理を手伝ってもらいました。
そしたらなんと、
ジャガイモの皮むきは薄く剥けて上手だし、
人参の細切りは細く均等で綺麗だし、
トマトは湯剥きしなくても皮を向いてくれるし、
びっくりするほど上手でした。

あんなに不安な顔でトイレばっかり行って
「帰りたい」と訴えてくるばかりだったSさんが
楽しそうに料理をされてる姿を見たら
とても感動しました。

「Sさん凄いじゃないですか!
私より上手なんですけど...
やっぱりベテラン主婦には勝てないわ~」
なんて私がふざけていたら
「私ずっとやっとったもんでね。
あと姑が厳しくてね~」

なんてニコニコしながら話してくれました。

他のスタッフにも共有して、
台所仕事をなるべく手伝ってもらうようにしました。

そうしたら不思議とトイレの回数も減り、
レクでのしりとりで全く言葉が出てこなかったのが
出てくるようになったり、
「帰りたいと」と言う言葉も1日に1回
あるかないかくらいになりました。


そんな中、久しぶりに面会に来た娘さんが、
「あれ、お母さんなんか顔つきが明るくなったね!」
と言ってくださったり、
訪問看護師にも「Sさん、顔つき良くなりましたね」
と言われて、効果が現れたんだなと実感しました。


このように、"問題行動"だと思われてしまうような
「帰りたい」と何度も訴えて来られていたのには
娘さんへの心配が隠れていました。
その心配が不安となり頻尿に繋がってしまっていたわけです。

どんな行動にも必ず理由があります。
いくら認知症の方といえども、理由があります。
「何この人...」と思わず、「何がしたいんだろう?」
と受容と傾聴を忘れない姿勢を保っていくべきだと思います。

Sさんのことは、今でも完全に大丈夫!とは言えません。
なので1日1日を大切に、
なるべくSさんが笑顔になれることを考えながら
生活をしていくことが、
私たちの仕事でもあり遣り甲斐なので、
これからも試行錯誤しながら、
Sさんの不安を取り除く努力をしていこうと思います。

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長文失礼しました。

読んでくださった方、ありがとうございます。

介護は大変です。
なかなか思うようにいかないことが多いです。
しかし、楽しむことが大切だと思います。
辛いことは抱え込まず専門職の人に相談しましょう!

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